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婚約破棄され過ぎて心が折れそうです  作者: プラン9


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45/79

45「酒っ、飲まずにはいられないなのです!」

 今宵空は大きな満月、夜風が涼しい……星々は街の明かりのせいで見えないのが難点だけど、確かに月だけはいい景色ね。

 私は今、学園内にあるバルコニーから物憂げに外を眺めながら、テキーラを飲んでいた。

 なんとこの聖アリストテレス学園、時間に関係なく学園内に残っている人も割といたりするのだ。なんでも課題とか、実験とか、特訓とかそういう諸々は寮では出来ないので、こんな時間でも開放されているらしい。

 なので私は今、こうして淑女っぽい遊びが出来る訳である。


「フフフ……」


 今! 今すっごい深窓の令嬢っぽいわ私! いや王族なんだけどね! お姫様なんだけどね!!

 あん? 顔に傷が大量にある姫様とか見たことないって? 仕方ないでしょうに、名誉の負傷よ名誉の。誰に対して私は言い訳にしているのかしら。

 しっかしまあ、こんな夜更けにこんなところで一人酒を飲むなんて、ちょっと似合わないかしらね。普段は冒険者御用達の酒場ばっかだったから……。


「何故か地球と同じ正座だから、私は星の光を見ていたかったんだけどなー」


 ああクソッ、星空なんて全く見えないのに何故か死兆星だけ見えやがる。死ぬってのか私が!?

 というかこの時間帯に見えるのかしら、死兆星って。いや、異世界だから細かいこと気にしたら負けよね。前世の記憶を頼りに北極星を目指して歩いていたら何故か南の街にたどり着いたこともあったし……。


「しかしまあ、こんな時間に起きているなんてお母様は絶対に許さなかったわねー。あー、夜更かし最高」


 草木も眠る丑三つ時、という表現はこの世界にはちっとばかし相応しくないが、元日本人の私としてはこれ以外に最適な表現なんてものは知らない。強いていうならウシミツ・アワーだ。

 まあ、それはいい。重要なことじゃあない。

 さて、何故私がこんな時間まで起きているのかというと……別に、調子乗ってフルコースをあの後二周したせいで、お腹いっぱいすぎて眠れないとかそういうのではない。

 事実私は、酒のつまみにコルピック豆の塩焼きを食べながら酒飲んでいるし。

 コルピック豆とは、ピスタチオによく似た形の豆なんだけど、調理する際に魚の脂を使うとグンバツに美味くなるという特徴があるのよね。

 クーッ、酒が進むわー。いいわこれ、マジ最高。モンテクルズから持ってきてマジ正解。龍の巣穴にしか群生しないってのさえなければ、名産品になれただろうに。あー勿体ない。あー勿体ない。

 ちなみにカロリーは激やば、栄養失調の人に十粒食べさせれば翌日には元気になっているくらいヤバイわよ。


「しかしまあ、食べ過ぎかしらね……」


 フルコースの後にコルピックだものねぇ……。

 アヘンに「妊婦さん……!? いったい、どこの男と!?」と驚かれたりとかしたからここまで来てちょっとふてくされてここに来てやけ食いしているんだけど、太るわねこれ。明後日適当な魔物でも退治しようかしら。

 しっかしアヘンったら、失礼しちゃうわ。子供がこんなに早く大きくなる訳ないでしょーが。とちょっとプンスカ来たけども、どうもこの学園、性教育についてはあまり進んでいないっぽいのよね。事実こんな時間までこの学園開放されているのに、校内不純異性交遊の現場も痕跡も見られないし……。

 まっ、どうでもいっか。そういう純粋そうな女が好きって男は多いだろうし。


「そう思わない?」

「……どうして俺がここにいるって分かったのかとか、その質問はどういう意味なのかとか色々と聞きてえことはあるけどよぉ……」


 柱の陰から現れたのは、お節介焼きのケツァルコルトニー。どういう訳かビートルズの音楽ばっかり演奏してたケツァルコルトニーだ。

 しかしまあ、適当に独り言呟いたつもりだったのに、本当にいたとは……。

 ……ちょっと待てよ。今この状況、今宵は満月とロマンチックで、しかも時間的に人の姿なんて全く無い。そして、ケツァルコルトニーに恋人がいるとか、婚約者がいるとかいう話も聞かない。

 これはひょっとしてひょっとするかも……告白されるかも!!


「……まあ、辺りに人もいないし、ちょうど良いな。バルカ・ド・モンテクルズ、大切な話がある」


 ほらキタキタキタキターー!! 確定ですやん、こんなん確定ですやん!

 やりましたよ海の向こうのお父様お母様! ついに私にも、わたくしにも男が出来ました! 実力は私より下だろうけど、まあそこまで贅沢は言ってられないわ! わたくし、弟とは違い純愛にやっていきます!!

 私が胸に手を当て、ドキドキ早まる脈動を感じながら、ケツァルコルトニーの次の言葉を待つ。思えば、告白されたことはあっても異性に告白されるのは初めてだわ私。何かがおかしい。何かが。

 そして、意を決したようにケツァルコルトニーは頭を下げた。というより、素早く正座し、上半身を下げた。


「頼むっ! あの時見たことは内緒にしててくれェーーーーッ!!!!」

「……へっ?」

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