42「友人とのお買い物なのです」
やはりジャージはいいものだ、うん。高級な羽毛に、最高の手を持った人造エルフ族の技術で作り上げたジャージ。
機能性抜群、下手な鎧より堅いという謎の丈夫さを誇る。ただ欠点としては、やはりダサい事だな。うん。
しっかしまあ、自宅やら宮廷やらでまでオシャレして、一体全体誰に見せるつもりなのかしら。
さて、今私は、聖アリストテレス学園の前にある街、ゴーダシティの時計塔の前で人を待っている。
私の前を通り過ぎていくみんな、全員かなりおシャンティ。その中私はジャージ1丁、上下ともに真っ赤なジャージ、我ながらオシャレさの欠片も無いわ。すんごい場違い感。
つかみんなまだかしら。私のメンタルライフがガリガリ削れていってるんだけど。
……つか、流石に待ち合わせの30分前は早すぎたわ。あれからもう十分も経っているという……ミスったわね。
べっ、別に弟との近親相姦が疑われているせいで寮に居づらいとかそういうのじゃないし! 私全然居づらくないし!!
というかそれ以前から、多分だけど顔の傷のせいで避けられていたのよね……そんなに怖いように見えるかしら私? ……いや、よくよく考えたら、何十もの国を攻め落として大陸一つを完全に侵略して、竜退治にはもう飽きたというくらいドラゴンをハントしていたわ私。それらがこの大陸にも広まっていたとしたら……そういえば本にもなっていたわね、私の人生。
「バルカ様ー!」
あら、我らが女神のご到着ね。白いワンピースに麦わら帽子、田舎で猫かわいがりしたいわぁマジにマジに大マジに。
「ちょっ、ちょっと、お待ちになって!」
そしてそんな天真爛漫アリーシュに手を引かれているのは、アリアンローズ。ふりふりのリボンが付いた赤い服を着ている。うん、THE☆令嬢という感じね。
……これあれね。小説とかだと主人公とヒロインって感じの関係よね。庶民と貴族、天真爛漫と深窓の令嬢。このコンビは売れるぜ。
「ごめんなさい! バルカ様を待たせてしまって」
「いえ、大丈夫よ。私が早く着きすぎたせいだから」
「遅れてしまい申し訳ありません。あの……バルカ王女? そのお召し物はいったい……?」
「……これしか外で使える服がなくてね」
アリアンローズ、なんでそんな、飼い主にダサい服を着させられている犬を見るような、可哀想なものを見るような目で私を見るのよ。やめて、その視線は私に効く。
「アリーシュ、今日は真っ先にバルカ様のお召し物を買いに行きますわよ」
「ええ、それが一番ベストだと思います」
あら、なにをこそこそ話しているのかしらこの子達。そしてなにを決意したのかしらアリーシュ。
まあ、アリーシュが学校に馴染めているようで良かったわ本当。よく見る展開的な感じに虐められたりしたらどうしようかと気が気じゃ無かったのよ内心。
……嘘ですごめんなさい。そんな事より彼氏出来るかどうか気が気じゃ無かったです。んでその不安はど真ん中的中大当たりしました。ふざけんな腐れ神。
「予定より少し早いですわね。あのお店への予約時間までかなり時間が出来てしまいましたわ……」
そう、今日はアリアンローズに頼んで、この街の名物を食べに行くのだ。貴族が行くんだもの、絶対美味いに決まっているよ!
ちなみにお昼に食べるつもり、今の時刻は午前八時半。ちょっと早すぎたわね……。
でも時間が空いたという事はつまり即ち、その分だけ好きな事に費やせるという事! 元々の集合時間でも十分早かったのが謎だけれども、まあ問題は無い!
予約していた店は確か、貧民街に近い(とは言っても検問とかあるけど)。そしてその貧民街には、出店がある! そう! 出店があるのだ!
「よし、それじゃあ早速、買い食いの旅に――」
「の前に、バルカ様?」
出店のユートピアへ行こうとしたら、どういう訳かアリアンローズに肩をガッ、と掴まれた。
あらこの娘意外と力強いのね、ところでなんでそんなにニッコニッコな顔なの? なんでニッコニッコなのにどうも笑っているように思えないの? バルカ、怖い。
「そのお召し物をなんとかいたしましょう」
「……へっ?」
「バルカ様の為にはっきり申し上げておきますと、そのお召し物……かなりダサいです」
うん、知ってるよ。流石のバルカもそこまで馬鹿じゃ無いよ。この服ダサいって知ってるよー?
でもね、動きやすいし着心地いいんだよー?
「そのジャージ、なるものが素晴らしい服だというのはわたくしも知っております。風邪を引いた時、お父様が着せてくださった時はその心地よさから八時間ぐっすりと寝てしまいましたので。
しかし! それでも尚、補ってあまりある程ダサいのです!」
ああ、そういえば貴族達の間で徐々に広まっているらしいね。病衣として。
動きやすくって寝る体制を阻害せず、着心地はグンパツで病気もすぐに治る……らしい。そんな機能は無いはずなんだけどね。
というか、ダサいって言わないでよアリアンローズ。アタシすんごい傷ついてるよ? 泣きかけ寸前だよ?
「ですので、しっかりとあのお店にふさわしいものをバルカ様とアリーシュに着てもらえるよう、わたくしがしっかりとエスコートいたしますわ!」
「えっ、私も!?」
「アリーシュは可愛らしいのですけれど、あのお店にはふさわしくはありませんの。ごめんなさいね」
ねえ、アリーシュと私の扱い違いすぎない!? ねえ!?




