34「ガソリンの味とか知りたくないのです」
今日も今日とて眠たい体を引きずって私は学校の教室に頑張ってたどり着いた。
まさか、帰ってからアヘンが阿片をキメているとは……おかげで煙が換気されるまで部屋入れなかったし、その後も薬の効果が切れた影響でまたあの発作出るしで……もう散々だったわ。
「ヘイ姫様、眠そうだな!」
ジャーン、とエレキギターみたいな謎の楽器を弾き鳴らす、柳のように垂れた紫色の髪が左目を隠している変な男が、妙なテンションで私に液体の入った瓶を渡してきた。
……こんなキャラ、ゲームにいたかしら? いや待て、もう既にゲームとは別の世界になっているんだったこれ。精霊魔法とかそういうの無かったし、そもそも学校自体無かったし。
「誰だって顔してるんで自己紹介させてもらうがよ、俺ァお節介焼きのケツァルコルトニー! よろしくな!」
こいつ絶対ジョ○ョ世界のキャラだろ!?
というか、ぽんと瓶を渡されてはいありがとう飲みますってなる訳ないわよ全く。こちとら裏切られまくりで死にかけたことが何十回とあったことか……どういう訳かコ○ラ並みの回復力持ってたから、問題なかったんだけれどね私。なんだ私、本当に王女なのか私。
「安心しな、毒なんか入ってないぜ。ロックに黒い水が入っているだけさ!」
「黒い水?」
「なんか火を付けたら三日三晩と燃えさかるんだよなぁ……不思議だぜぇ」
それ石油だよね!? お前それ飲まそうとした――ってかお前それ飲んでんの!?
どうしよう。そりゃこいつイケメンだし、正直攻略してもいいかなーって最初は思っていたけれど、予想以上に異常な変人だった。
「……飲まないのかい?」
「ごめん、石油はちょっと……」
「石油ってなんだ?」
ああそうか、この世界は石油、まだ無いんだった。確かようやっと石炭が実用化されてきたってレベルだから……あれ、石炭と石油って同時期だっけ? まあいいや。取りあえず、石炭はあるのよね。それで例えたら相手も納得するでしょ。
「簡単に言うと、石炭の液体版みたいなものよ」
厳密には全く違うけど、大体同じような用途だからいいわよね別に。
相手もそれで納得したのか、飲ませるのを諦めたように私の席から瓶を取り、中の石油を一気に飲み干した。
……飲み干した!? あれ冗談とかそういうのじゃなかったの!?
呆然とあっけにとられている私の前でケツァルコルトニーは、口に付いた石油を袖で拭ってから一言
「……くっそ不味いなこれ」
「ならなんで飲んだ」




