31「アンノウンなのです」
簡単な自己紹介から適当な話をすること数十分、なんとアリアンローズが2年生であることが発覚した。
……これなら、この娘ならアヘンの本当の名前、分かるかしら。
「そういえばアリアンローズ、ちょっと教えてほしいことがあるんだけれど」
「はい、何でしょう?」
「私と同室のあの子の名前、分かるかしら?」
そう言うと先ほどまで笑顔だったアリアンローズの顔が、ぴしりという祇園が聞こえてきそうな暗い表情が凍り付いた。
そして私に顔を、ちょっと前に傾ければキス出来るくらいまでくっ付けると小声でひそひそと話し始めた。
「あまり大きな声で話さないでくださいまし。……あの子って、アヘンのことですわよね。あの子の名前、実は私も知りませんわ。いえ、誰も知らないといった方がよろしいかしら」
「誰も知らない?」
生徒が知らないならまだ分かるけど、その口ぶりはまるで━━教師も知らないと言っているような。
いや、まさかね。そんな教師も知らない生徒なんている訳━━
「割といるんですよ、教師も名前を知らない生徒」
いっぱいいるんだ、大丈夫なのかしらこの学校。
というか、貴族とか王族が通っているんだからそういう内部調査ちゃんとしときなさいよ。そういうのしないの?
「どうも真相は理事長のみが知っているそうです」
「へえ、理事長が」
「はい。……あと、アヘンは私が1年生の頃に、3年生から『名前は知らないけど、みんなアヘンって呼んでいる』と教えられましたわね」
随分と昔から、アヘンはアヘンだったようね。
なんというか、学校の七不思議を思い出すわねぇ……あれ? たしかここって、アヘン禁止な国じゃなかったかしら?
だとしたらアヘン、どこから大麻を調達しているのかしら? まあ私に副流煙来ないのなら何でもいいけれど。
えっ、止めないのかって? 自業自得よあんなもん。
「まあ、気にする必要ありませんわ。アヘンは常に狂っているようなものですからね。キメていてもキメていなくても、まともに会話出来たことありませんわね」
そう言ってパン、とアリアンローズは手を叩く。話題を変えようという合図だろう。アリーシュはすでに舟を漕いでおり、ラストは本日4枚目のパンケーキをぱくりと食べた。
結構高カロリーなのを食べているのに、こいつ太らないのよね。あれかしら、セックスでカロリー消費しているのかしらやっぱり。
「まだ質問したいことがありますよね、バルカ様」
「そうね、魔法の違いについて教えてもらえる?」
まさか相手から話を振ってくれるとは、今後の軍事力増強に関係するとなれば聞いておいて損は無いわね。




