29「自分だけ特別って憧れていましたが、こんなのは望んでいないのです」
「あら、どうしましたバルカ様にラスト様?」
「ご機嫌よう」
私が若干早足にアリーシュの所に向かうと、アリーシュと隣に居る黒髪の少女が同時に礼をした。
黒髪の女性……初対面ね、多分。別のクラスかしら。ってそれはともかく!
「アリーシュ! 貴女、大麻吸ったりしてるんじゃないでしょうね!?」
「えっ!? いえ、そんなもの吸っていませんよ!? どうしたんですかいきなり」
「だって、だって何も見えない所に話しかけて!!」
あれ端から見たらただの危ない人だったわよ!? アリーシュの肩をがくがくと揺らしてると、黒髪の少女が私にデコピンをした。
だけどダメージは相手の方が大きかったようで、涙目で指を押さえながら私をキッと睨んでいる。その様子にちょっとのほほんとした私は、少し落ち着きを取り戻した。
私がまともに話が出来るようになったと判断したのだろう、少女はわざとらしいため息を付き、紅茶を白いティーカップに注ぎ、私に差し出した。
「少し落ち着いてください、全く……無用な注目を集めていますわよ」
「いや、だって、アリーシュが何もない所に……」
「えっ」
「えっ」
あれ、アリーシュ、なんで「えっ」って言ったのよ。あれ、なんでみんな私見てるの? 何、見えてないの私だけなの?
……マジ?
「……ラスト、何か見えてる?」
「うーんと、緑色の、羽の生えた小さい女の子かな。それがアリーシュちゃんの隣に見えるよ」
……私には何も見えないのだけれど。
まさかラストまで大麻吸っているとは考えにくいし……そもそも大麻で見る幻覚ってどんなのなのかしら。少なくとも、談笑出来るような状態ではなかったわよね、アヘンは。
「えっと、みんな、見えているの?」
私がドラゴンから受けた傷の箇所を掻きながら訪ねると、ほぼ全員がうんと頷いた。
ほぼ全員――つまり、私だけが見えていないというのは、確実らしい。すわ幻覚作用かとも思ったが、私はラストと同じ食事を取っているからそれは無い筈。
となれば考えられるのは……マジで妖精っているの?
「まさか、妖精が見えませんの? 心が汚れていたとしても見えるはずの妖精が……」
「えっ、そういうもんなの妖精って」
「海賊さんも見えていたようですよ?」
アリーシュが小首を傾げながら言ってくる。
となると、心の綺麗さは関係ないようで……なら、見える条件って何なのかしら? 気になるわね。ああ、ここに博士がいたらもっと楽になるのに。色々と研究がはかどるのに。
「……えっと、その、元気を出してください。ねっ?」




