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12「女”には”困らないのです」

 どうしてこうなった……?

 落ち着け私、確か私は昨日博士とフラジルと一緒に酒を飲んで、それからえっと……。

 駄目だ思い出せない。つか頭がんがん痛い。もうやだ元の世界に帰りたい……いや、やっぱここの方がいいわ。元の世界だとぼっちで死ぬ、ただの上級腐女子だし。

 まあそれはともかく、一体全体何が問題かというと


「どうしたんですか、バルカ様?」


 私の頬にぐりぐりと犬のように頬っぺたをくっ付けてくるちっこい娘。

 勿論知らない。私に「撫でて撫でてー」とばかりに押し付けてくるさらさらな栗毛も、人懐っこそうな瞳も、全く知らない。

 ちなみに今私がいるのはお城ではなく、街の宿『満腹亭』。ここの飯がまた美味いのよ。こう、がつんと響く感じが。

 って、それはいいのよ。問題なのは、なんで私が庶民と一緒に泊まっているかなのよ。

 しかしこの子可愛いなおい、私と違って将来速攻彼氏作るんだろうなあ……うつだちのう。


「えっと……貴女は一体、誰なのかしら?」

「はい! 私はアリーシュ、バルカ様に命を救っていただいたアリーシュです!」

「いっ、命を……?」


 待って待ってなにそのイベント。

 普通悪役令嬢ものってそういうのじゃないでしょ!? 庶民と悪役令嬢が対立する感じでしょ!? なんでなつかれてんの!?

 というか、アリーシュ……聞いたことがあるような。ないような……。


「……あー、もしかして」


 ゲームのイベントで暴漢に襲われてて、主人公に助けられてなんやかんや仲間になる、エロ同人での犯され率ナンバーワンのアリーシュね!?

 いやはや凄かったわねあれ、忠犬みたいなのをぐちゃぐちゃにしたい心理とか男にあるのかしら。

 怖いわー、男って怖いわー。

 ……まあ、それはともかく。なんでそいつが私と一緒に?

 普通助けても着いて……来ないわよね。普通。


「バルカ様〜♪」

「何かしら」

「呼んでみただけです、ふふっ♪」


 うん、こりゃ世の男共に犯されるわ。なんつーか、脱法ロリみたいだもんこれ。

 ラストも引っかか……んないなーあいつは、生粋のホモになっちゃってるし。

 直ってくれたらいいんだけどね、ラスト。多分無理だろうけど。


「これで助けてもらったのはもう12回目! 運命感じずにはいられません!!」

「うんちょっとは学ぼうね」


 この子には学習能力がないのかしら。

 というか、そんなに私助けてるのねこの子。

 そういえば公式設定でも「ちょっと頭の弱い娘」だったわね。ちょっとってレベル越えてるぞこら。

 まあバ可愛いからいいけども。取り敢えず撫でておこう。


「やっぱり、バルカ様は優しいです!」


 撫でられるがまま、というか心地良さそうに目を細めるアーリシュ。ああ、癒されるわ。


「こんなに優しいのに婚約者が逃げるなんておかしいです!」

「ナチュラルに心抉るわねあんた」


 このーっ、このーっ! とももみくちゃにすると、ニュヘヘとアーリシュが笑う。なんだこれ可愛い。


「……ありがとうございます、いい思い出が出来ました」

「思い出?」


 まるで最後みたいな言い方……博士のおかげで医療技術は馬鹿みたいに高いのに、まさか不治の病とかかしら?


「私、来月に遠くの大陸にある学校に通うって決まっているんです。そこならこの国より治安がいいからとお母様が……ああっ、ごめんなさいバルカ様! こっ、この国はとても大好きです! でも、えっと」

「フフッ、大丈夫よ。落ち着いて。……正直私も、あまりこの国の治安良いとは思えないから」


 宗教崩れにテロリストにマッドサイエンティストにと、危ない人はいっぱいだわよ。そりゃあ、その国に……ん?


「ねえ、その国って、どのくらい遠いの?」

「えっと、お舟で2ヶ月です! 最短で!」


 最短で2ヶ月、つまりまあかなりの遠い大陸になるわね。

 言葉はどういう訳かどこでも通じるから問題ないとして……遠いとなれば、私の武勇伝もそこまで広まってない筈よね。


「詳しく聞かせてもらえないかしら、私の可愛いアリーシュ」

「はい、バルカ様……」


 顎をくいっとやると、とろんとした顔で応えるアリーシュ。

 ちょっと危ない雰囲気になっているけれど、まあこの際細かいことは気にしっこなしよ、チャンスであれば掴んでやるまでよ!!

 この後「昨夜はお楽しみでしたね」と言った店主に回し蹴りをくらわしてやった。

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