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作戦成功!

 「わぁー」


 俺は声を張り上げて、男に向かって行った。

 まじ、話のとおりになるんだろうな。

 俺に向かって撃ってこねぇよな。

 ほんの少し心配が心の中に沸き起こってきているが、もう止まれやしない。


 「なんじゃ、おんどりゃあ」


 男は叫びながら、銃口を俺に向けた。

 芝居のはずだが、俺はマジになって、男の腕を掴んで天井に向けた。

 再び銃声が店内に響いた。

 再び轟いた銃声で呆然としていた客たちが再び恐怖と現実に引き戻され、悲鳴を上げて逃げはじめた。

 鍵山の隣の女性が鍵山をかばうかのように鍵山の背後に回った。

 俺はすかさず、右の拳を振り上げ、男の顔面にぶち込む。

 本気で。

 これが芝居だと悟られないために。

 男のしていたサングラスが、男の顔から離れて、床に落下していく。

 男の顔は歪み、後ろにのけぞっている。

 警備員が今がチャンスと、駆け寄ってきた。

 男は再び体勢を立て直すと、警備員の足元に銃弾を放った。

 砕け散る床。

 警備員の足が止まった。

 鍵山ともう一人の女性も立ち止まって、俺たちの方を見ている。


 「くそっ!

 覚えていやがれ」


 男はそう言い捨てて、走り去って行った。

 警備員が少し遅れて、店を出て男を追って行く。


 「ふぅ」


 俺はやれやれ気分で、少しうなだれた。その瞬間、俺は左手首を掴まれた。


 「君も来なさい」


 そう言って俺の腕を引っ張ったのは、鍵山と一緒にこの店に来た優奈のお兄ちゃんの仲間の人だった。急ぎ足で鍵山と一緒に店の外に向かう。その女の人のもう片方の手には、ご丁寧にもさっき俺が床に置きっぱにしていた鞄が握られている。

 銃を持って押しかけた男がいなくなったとはいえ、店の中はまだ騒然としている。そんな騒がしい空間を抜けだし、歩道に出た。

 店の異常を感じていた歩行者たちがやじ馬と化して、その先で立ち止まって壁を作っていた。店の中から、慌てて出てくる俺たち三人に、そそくさと道を空けていく。


 「私が運転しましょうか?」

 「お願いするわ」


 優奈のお兄ちゃんの仲間の言葉に、鍵山が言う。鍵山は銃口を向けられた事に怯えているのか、顔から血の気が引いていて、小さく震えているのが分かる。

 仲間の女の人が歩道の横に止めている真っ赤なベンツの後部座席のドアを開けたまま、手でドアを持っている。そこに鍵山が乗り込むと、そのドアをゆっくりと閉じる。重厚さを感じさせる重い音と共に、後部座席のドアが閉じられると、助手席側のドアを開いて、顔を振って俺に乗り込めと合図をした。俺が乗り込もうとすると、手にしていた俺の鞄を俺の胸にどかっと押し付けてきた。

 俺はそれを受け取り、膝の上において、甘い香りで満たされた車の助手席に乗り込んだ。

 仲間の女の人が運転席側に乗り込もうとすると、後部座席から鍵山が身を乗り出して、言った。


 「この子も連れて行くの」

 「はい。

 助けてくれた恩人でもありますし、この子、私たちの素性に気付いていましたから、警察に事情を聞かれても面倒ですので」

 「分かったわ」


 鍵山が後部座席に着くと、車が静かに発進した。


 「ありがとう。

 私は長堀由香。

 君は?」

 「あ、はい。

 俺。いえ、僕は高橋翔と言います」

 「高橋君ね。

 悪いけど、お礼もしたいし、ちょっと付き合ってもらうわね」


 俺は黙ってうなずいた。

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