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深夜の襲撃者!

 その日の夜、俺は自分の部屋の中から時々優奈の部屋に目をやった。カーテンを開けると俺の部屋から漏れ出た照明の明かりが、優奈の家の壁を照らし出す。その少し横にある優奈の部屋。あれっきり、優奈は部屋に戻っていないのか、窓は俺が飛び込むために開けた時のままである。真っ暗な優奈の部屋の中で、時々カーテンがゆらりと揺れている。

 ここは俺の家と優奈の家の間であって、他人は入ってきやしない。それだけに、安全っちゃあ、安全であるから、俺もそのままにしていた。

 今はきっと、昼間の出来事が怖くて、お母さんと一緒かお兄ちゃんと一緒なんだろう。俺のところに来れば、ぎゅっとして、守ってやるのに。

 そんな思いで時間を費やしている内に、俺はついつい机に突っ伏してうとうとしてしまった。

 いくら時間が経っただろうか。

 俺は何かが擦れるような音と人の気配に目を覚ました。

 なんだ?

 俺は机の上から顔を上げて、あたりに耳を澄ましてみた。

 どうやら、その怪しげな音は外から聞こえてきているようだ。俺の家と優奈の家の間。その音がするタイミングは、ほとんど周期的に繰り返されている。

 なんだ?

 俺はその音の理由を頭の中に思い描いてみた。

 誰かが俺の家と優奈の家の壁を両手両足で突っ張りながら、少しずつ上ってきている。そう思いいたった時、優奈の部屋の窓が開けっ放しだったことを思い出した。慌てて椅子から立ち上がり、窓際まで行って、カーテンに手をかけたところで、俺は動きを止めた。

 とんでもない悪人だったら、どうしよう。

 俺はカーテンの隙間を広げ、ちらりと外の様子をうかがった。

 二つの家の間のわずかな隙間に差し込んでくる夜の街の薄明かりと、夜空のほのかな月明かりが、俺の想像通りの侵入者の姿を映し出していた。

 背中を向けているのでその顔は分からないが、短い髪型と言い、そいつはおそらく男。その男が目指しているのは開け放されたままの優奈の部屋。きっと泥棒か何かが、開けっ放しの窓に目をつけたのだろう。

 もうじき、優奈の部屋の窓に手がかかる。

 今なら、プイップルワイパーの射程距離である。しかも、あの体勢で俺への反撃はありえない。

 俺はプイップルワイパーを手に、カーテンと窓を開けて、叫んだ。


 「なんだ、お前は?

 泥棒か?」


 男は俺の方を振り向こうとしている。

 俺は容赦しない。

 プイップルワイパーの軟弱な棒で叩いても、そうダメージはないだろう。だが、その先で突けばそれなりのダメージを与えられるはずだ。

 俺は振り返った男の顔を思いっきり突いた。

 男は醜く短い悲鳴を上げたが、まだ二人の家の間の壁で、突っ張ったままである。

 俺が男にプイップルワイパーで、鉄槌を下す。

 何度も、何度も、突きまくる。


 「泥棒だ、泥棒だ」


と、叫びながら。

 やがて、男は壁の間を滑り落ちるように地上まで落ちて行った。

 しりもちをついた男は一瞬動きを止めている。

 勝てる。

 そう思った俺は二階から飛び降りた。

 立ち上がりかけている男の前に飛び降りた俺は、威嚇のため大声を上げて、男に掴みかかった。

 狭い空間。

 乱闘なんてできやしない。

 立ち上がりかけていた男を押し倒す。

 俺の思い通り、男を俺は地面に押し倒した。

 仰向けに倒れ込んだ男の上に、馬乗りになって、男の動きを封じる。

 暗い空間。男の顔はよく分からない。


 「くそっ。死ね、死ね」


 男のその言葉に一瞬、俺はぎくっとした。

 昼間の男と同じじゃないか。あいつは確か飯田に殺されたはず。

 そんな時、俺は背後に人の気配を感じた。


 「誰だ!そこにいるのは」


 優奈のお兄ちゃんの声だ。俺はこの人は苦手だが、今は少し心強い。


 「来てください。

 こいつが、岡本さんの部屋に忍び込もうとしていました」

 「何?」


 優奈のお兄ちゃんが駆けつけてきて、俺の下敷きになっている男を抱え上げ、その腕をねじ上げた。


 「痛てててて」


 男はそう言いながら、優奈のお兄ちゃんに連れて行かれた。その後をついて行く。壁に挟まれた狭い空間から、道路に出ると、街の照明の明かりが増した。光が男の顔を浮かび上がらせた。

 どこかで見たような?

 そう思ったのは俺だけではなかった。男の顔を確かめようと、後ろ手に手をねじ上げたまま顔を覗き込んだ優奈のお兄ちゃんも、怪訝な顔つきになっている。どこかで見たような?そんな雰囲気である。


 「死ね」


 その時、男が言った。

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