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 女子寮に直行した。

 寮母のおばさんに「一年のっ、モーガン・クリストフですっ! 二年のシンシア・ウィステリアさんを呼び出してほしいんですけどっ!」

と荒い息のまま言った。

 寮母のおばさんが大丈夫?と心配してくれているところで、シンシアが帰ってきた。

「モーガン君……? なんか……大丈夫……?」

「走ってきただけです、大丈夫です。ちょっと外で話せませんか?」

「うん……いいけど……。」

 外に出た。ローザも控えめについてきた。

「あの!先輩!」

「……は……はい……」

 モーガンのいつにない強気な姿勢にシンシアはたじろぐ。モーガンの眼は完全に座っていた。

「昨日のことですけど! なんでもう終わりなんですか!?」

「え……、だから……私婚約することになって……」

「婚約したらなんでやめなきゃいけないんですか? そんな法律があるんですか? いつ決まったんですか? 何時何分何秒地球が何分回った時ですか!?」

「えええ……」

「だいたい勝手なんですよ! 勝手に僕の探し物探してあっちこっち連れまわして僕をやる気にさせて楽しくさせたらポイですか、捨てるんですかポイ捨てですか!」

「いや……その……」

「シンシア先輩だって楽しかったでしょ! 僕は楽しかった! もっとしたかった! もっとこんなアホみたいなこと続けたかった! なのにダメってどういうことですか!」

「あの……すみません……」

「はあっ! 謝ればそれで済むんですか! 警察いらないでしょ! はーっホントにダメですね! 責任者はどこなんですか!?」

「責任者……?」

「誰の許可がいるんですか!」

「いや、誰ってことも……ないかな?」

「はあっ!? ふざけないでくださいよ! 僕は続けたい!シンシア先輩だって続けたいでしょ! じゃああと誰が良いっていえばいいんですか!!」

「えー……誰だろ……?」

 シンシアは困ってしまう。誰がと聞かれても、世間体なのだから世間? 世間って誰?

「レイモンド殿下ではありませんか?」

 ローザが言う。

「じゃあ連れて行ってください。直接文句と許可を取ります。」

「え? そんなことできるわけ……」

「はあっ!? あなたが決められないんでしょ! じゃあ決められる人と話すしかないじゃないですか!」

 完全にクレーマーだ。

「では車を持ってまいります。」

 ローザは車を取りに行った。

「ちょっ……! ローザ!」



 ローザの運転する車に乗って、王宮までは二時間かかった。

 その間しばらくモーガンはぷんぷん怒っていて、シンシアはそんな様子にビクビクしていたが、やがて二人は疲れて眠ってしまった。

 途中、ウィステリア邸に立ち寄り、服を着替えた。シンシアはドレスに着替え、モーガンにはアレクシスの服を貸してくれた。

 そして王宮についた。着替えている間にローザが伝令をしていたのでもう訪ねてくることは知られている。

 すぐに中に入れた。

 モーガンは緊張していた。

(王宮に入るなんて初めてだ……)

 勢いにまかせてえらいことになってしまった。

 しかも言うのは苦情だ。

 ここでお待ちくださいと通された部屋で椅子に座る。

 椅子はふかふかだった。

「あの……モーガン君……」

 おずおずとシンシアが声をかける。

「なんか、私のためにごめんね……」

「……だからシンシア先輩のためじゃないんですって……」

 モーガンはムスッと言う。

 もうなんだか破れかぶれな気分だった。

 どうとでもなれー。

 カチャリと音がして扉があく。

 レイモンドが入ってきた。

 二人は椅子から立ち上がり頭を下げる。

「話ってなんですか? ……僕もそれなりに忙しいんですが」

 レイモンドはモーガンを冷たく見る。

「シンシア先輩に学校を続けさせてください」

 モーガンは緊張しながら言った。

「……なんで君にそんなこと言われなきゃいけないんですか?」

 虫を見るような眼をしている。

「かわいそうじゃないですか。せっかく楽しく学校に通っているのに……。占い部だってせっかく活況になってきたし、春休みだってたくさん楽しい予定がありました」

「……婚約も学校をやめることもシンシアが決めたことです。僕が強制させているわけではありません。そうでしょう?シンシア」

「……うん……」

 シンシアの顔は暗い。

「そもそも学校に行く必要なんて彼女にはない。家庭教師だっているし、学びたいなら結婚してからでもいつでも僕のそばで学ぶことができる」

「そういうことじゃないじゃないですか!? シンシア先輩にとって学校は勉強するだけのところじゃなくて、たくさん周りの友だちとか地域の人とか、とにかくあそこにいるから楽しいことだったんです! 違うところじゃ意味がない!」

「……わかったようなことを言わないでください」

 レイモンドがにらむ。声も怒っていた。

「だいたい、なんでこうなったと思っているんですか? あなたのせいですよ。あなたがシンシアと仲良くしすぎたから引き離しているんです」

「なんですかそれ! 僕はまだシンシア先輩と会って四か月なんです! シンシア先輩に引っ張りまわされてあっという間の四か月で、シンシア先輩を好きとかどうこうなんてありません! そんな段階じゃないんです。

確かにシンシア先輩は行動力があり何事もポジティブで今まで僕の出会ったことのない素敵な女性です。でもだからと言って閉じ込めてしまってはかわいそうじゃないですか! シンシア先輩は広いところにいてこそ輝く人です。

そもそもお二人が愛し合って婚約しているのにどちらかが暗い顔をしているなんてありえないっていうか、そんなんじゃこの先思いやられますよ! 心中するつもりかっていう。

だいたい好きな人が楽しいことやってるんだから支えてあげるのが当然でしょ! 男だったらどーんと相手を信頼して好きにさせたらどうなんですか。自分が魅力的であれば気持ちなんて離れていきませんよ、知りませんけど!」

 つい言い合いになって失礼なことを言ってしまった、とモーガンは少し後悔する。

(でも本当のことだ!)

 レイモンドはあまりの言われように、怒りで顔が赤くなっている。

「この! 泥棒猫!」

「粘着質!」

「お邪魔虫!」

「ケツの穴が小さい!」

 ぐぬぬぬぬと二人はにらみ合う。

 そんな二人の様子を見ていたシンシアだったが、

「……ぷっ……!」

 突然吹き出した。

 そして、

「あはははは!」

 たまらず笑い出した。

『何笑ってるんですか!?』

 二人の声がハモる。

「だって! 二人ともこんな大声で言い合いする姿なんて初めて見たわ! しかも! こんな! くだらない! 子どもみたい!」

『くだらないって何ですか!?』

 また声がかぶってしまって二人はにらみ合う。

「あははははは!!!! 息ぴったり!!!!」

 指をさしてシンシアは爆笑する。

 そんなシンシアを二人はにらんで見ていたが、笑いやまない様子にがっくりと肩を落とした。

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