第7話《冒険者》
冒険者について
冒険者とは、主に魔物を討伐したり、市民の悩みを解決したりする仕事のことをいう。冒険者としてのランクは、
『F』、『E』、『D』、『C』、『B』、『A』、『S』の七段階に分かれている。
ランクごとのレベルとして、
F‥‥‥戦闘不可
E‥‥‥レベル1〜10
D‥‥‥レベル10〜30
C‥‥‥レベル30〜50
B‥‥‥レベル50〜70
A‥‥‥レベル70〜100
S‥‥‥レベル100〜
と、なっている。高ランクの冒険者は、貴族と同等の権限はないが、貴族と同じ扱いを受ける。
この世界は、魔王という存在がいるらしい。そいつは、魔族を率いる者とされている。
なぜ、そんな事を言い出したかというと、魔族は、魔物を生み出していると言われているからで‥‥‥俺は、父さんに、そんな魔物を倒す仕事である、『冒険者』になってこい。と、言われたからだ。
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俺の目の前に、四階建ての建物がある。その入り口の看板に、《冒険者ギルド》と書かれていた。俺は少量の金を手に、その扉を開く━━━。
「お?見ねぇ顔だな。おい、坊主、ちょいとこっちに来い。」
渋い声のいかついオッサンに、手招きをされ、反抗するのもなんかなぁと思い、オッサンの座るテーブルに向かう。
「あの‥‥‥なにか、ご用でしょうか?俺、これから登録をしたいのですが‥‥‥」
近くで見るとスゲェ迫力で、尻すぼみする。
「ああ、すまねぇな。そんな怖がんなくていいぞ?んで、登録か。そうだな‥‥‥親切なおじさんがちょっと教えてやるよ。分かっているだろうが、あれの奥のもんは受付だ。坊主は十歳前後だろう?なら、魔物と戦えるかの試験があるとは知らないだろ。ここら辺は基礎学校で習うことだが‥‥‥あとは、受付の人は依頼の注意点は聞かないと教えてはくれん。情報が欲しいなら、ちゃんと話は聞くことだ。あー、長々とすまんな」
「ううん、ありがとう。色々教えてもらったし、助かるよ」
「ならいい。坊主が成長したら、なんか奢ってくれよ」
俺はその台詞に頷き、受付に向かう。
「あの〜すみません、登録に来たんですが‥‥‥」
「はいはーい、登録ね。まず、君‥‥‥戦える?もちろん嘘はついちゃだめよ?」
美人な受付がいた。いや、このギルドの受付は大体美人だった。
「ない、戦えます。それで‥‥‥試験でしたっけ?」
「あら、そこまで分かってるのね。ご両親にでも教えてもらったのね。それで‥‥‥試験ね。担当の人を呼んでくるから、そこで待っててね」
「はい、わかりました。」
さて、試験の人がくる前に、準備をしておこうか。とりあえず、《模倣》は禁止しよう。
━━━魔力を身体に張り巡らせて、いつでも魔法を撃てるようにする。
「ごめんね、待ったかしら?私についてきてちょうだい」
さっきの受付嬢だ。俺は見失わないよう、少し急ぎ足でその背を追う。
歩き続け、目の前の受付嬢が門をあけたら、その先に人が立っていた。
「そこのヤツが試験を受けるヤツか?‥‥‥なんとも頼りないガキだな」
「頼りなくて悪かったな。さあ、やろうぜ。《剣製》、【アイアンソード】」
鉄の剣を生み出し、戦闘体勢に入る。向こうも大剣を抜き放ち、構え━━━。
「今回の試験は、この子が魔物と戦えるかを調べるためのものです。両者、やり過ぎないようにしてくださいね」
「「おう」」
そこだけハモり━━━
「(瞬間加速)、オラァ!」
全力で横薙ぎをを放つ。が、やはり見切っているようで、軽く防御される。
「ほう‥‥‥そこそこやるじゃねえか。見直したぞ」
そう軽く言ってくるが、その間に、大剣を振りかぶり、俺は避けざるを得なかった。
「ありがと‥‥よっ!まあ、レベル1にしては頑張ったからな。(アイスマシンガン)、(レールガン)!」
「おっ!魔法まで使えるのか。こりゃ将来有望かもな。だが‥‥‥威力は足りないぞ?」
チッ、レベル差は本当重要だな。無理だろこんなの。まだ勝てないな。
「はいはい、降参こうさーん。これ以上やっても意味がねぇよ。だろ?」
「お前ならもっと頑張れる気がすんだけどなぁ。まあいい、合格だ。つか、Dランクから始めてもおかしくないクラスだぞ?あの(レールガン)、だったか?それだけの威力があった」
おお、意外と俺を評価してたんだな。だが、強すぎだろ。父さんクラスの強さだぞ?
「はい、わかりました。さて、この書類に名前を書いてもらえるかしら?」
「わかりました‥‥‥フィーレン・エイプレイっと。はい、どうぞ」
「はい、ありがとう‥‥‥えっ?エイプレイですって!?ねえ、嘘‥‥じゃないわよね?」
「俺の名前?俺はフィーレン・エイプレイだけど‥‥‥何か問題でもあった?」
「つかぬことをお聞きするのですが‥‥‥貴方の親の名前は、『グレイゼル・エイプレイ』と、『リーヴェリア・クライネラス』のお二人でよろしいでしょうか?」
『リーヴェリア・クライネラス』?‥‥‥ああ、母さんの結婚前の名前か。
「はい、父さんはグレイゼル・エイプレイ、母さんはリーヴェリア・エイプレイですよ。多分、母さんは結婚してエイプレイ姓にかわったんだと思います」
「ええ!?本当ですか?あの二人は、十数年くらい前に、冒険者ギルドに来なくなり、安否がわかっていなかったのです。その息子がいたので‥‥‥お二人も生きているのですよね?」
「はい、生きてます‥‥‥というか、ピンピンしすぎて、よくボコボコにされてます」
「そうだったんですね。教えていただき、ありがとうございます」
そういって去ろうとしていく。
「待って待って!ギルドの登録ってもう終わりなの?」
「あっ、すみません。じゃあ、戻りましょうか」
今度は、俺も一緒にここを去る。
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「改めまして‥‥‥試験合格、おめでとうございます。そして、はい、これがギルドカードです。これは、なくすとまたEランクから始まるので、なくさないでください」
「わかりました‥‥‥そうだ、依頼って、どう受ければいいんですか?」
「では、解説しましょうか。依頼は、常駐依頼と、期限依頼の二つがあります。常駐依頼は、納品により、報酬をもらい、期限依頼は、依頼書に完了の報告を書き、提出することで報酬をもらう‥‥‥と、いうことです」
「ありがとうございます。これから何か受けてきます」
俺はしばらくは常駐依頼か‥‥‥
よし、常駐依頼はどんなのがあるかな。
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《スライムの討伐・スライムの核納品》『E』
《ゴブリンの討伐・ゴブリンの耳納品》『E』
《ウルフの討伐・ウルフの毛皮納品》『E』
《ゴーストの討伐・ゴーストの霊布納品》『E』
《ホーンラビットの討伐・ホーンラビットの角納品》『E』
《悪魔の討伐・悪魔の部位納品》『B』
《ワイバーンの討伐・ワイバーンの部位納品》『B』
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ふむ‥‥‥前世のゲームの魔物と種類は似ているようだな。悪魔とワイバーンか‥‥‥まあ、偶然遭遇したとしても、俺には《模倣》がある。最悪、なんとかなるだろうな。
たしか‥‥‥この街の外は草原地帯で、スライムやらゴブリンが出るんだっけか?なら、安全だし、軽く狩りにいくかね。
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「あっ、衛兵さーん、外に出ますねー!」
「おう、気をつけろよー」
街の入り口を守る衛兵に挨拶をし、街の外へ向かう。
「まずは‥‥‥《剣製》【アイアンソード】」
俺の前に、ちょこちょこスライムであろう生物がいる‥‥‥そういえば、どうやって倒すんだ?まあ、斬ればいけるだろ。
「フッ!ああっ、ぬるっていった!そしてスライム消えた!」
俺が斬った後にスライムは消滅し、核がそこから生まれる。
なるほど‥‥‥スライムはちゃんと攻撃が効くようだ。なら、スライムは‥‥‥湧かなくなるまで狩り尽くしてみるか!今日はスライム狩りじゃあ〜!
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スライム狩り、ちょうたのしい。
‥‥‥はっ!あー、どうやら気が狂っていたようだ。よくあるよくある。さて、スライムの核は‥‥‥うげ、数え切れないくらいあるな。こりゃ持って帰るのは大変になるぞ?何で俺はこんなことをしてたのかねぇ。
ゲームみたいにストレージはないし、便利アイテムのアイテムボックスは持ってないし‥‥‥いや、待てよ?もし、ストレージを《模倣》で使えたとしたら?一応ストレージだって能力だ。なら、模倣できない道理はないはずだが‥‥‥やってみる価値はありそうだな。
「《模倣》━━━【ストレージ】」
俺の目の前‥‥‥というか、空間に薄い青の板が現れる。その板は、昔俺がよく使っていたストレージ画面そのもの。スライムの核に触れると━━━頭の中に、スライムの核をしまいますか?と、流れる。
Yesと答えると‥‥‥手にあったスライムの核が消え、板のなかに、スライムの核の表示が現れた。
俺は、スライムの核を拾い集め、次々にしまっていった。
「さて、帰りはどうするかなぁ。もう夕暮れだし、歩くんじゃ間に合わないよな‥‥‥もう魔法で帰るか。(瞬間加速)、(天駆)」
‥‥‥やっぱ空は移動が楽だな。魔物と遭遇はしないし、土地の影響を受けずに済む。
そんな事を考えながら、数分、割と早く街に戻り、そのまま冒険者ギルドに向かった。
「え〜っと‥‥‥納品所はどこだったっけかな。あっ、あの親切なオッサンがいるじゃん、オッサンに聞いてみるか。すみませーん、納品所ってどこにありますか?」
「ん?ああ、昼間の坊主じゃねえか。納品所は、受付の近くのめちゃくちゃ広いスペースがあるところだ」
「ありがとうございます。じゃあ、いってきます」
やはり親切だったオッサンを背に、納品所へ向かう。
「納品をお願いします。スライムの核なのですが‥‥‥」
「納品ですね。では、こちらのスペースに置いて下さい」
「はい。《模倣》、ストレージ。アイテム、スライムの核。オールリリース。」
ズドドドドドォ!
大量のスライムの核が溢れだす。その数は、ワンスタック99のストレージが約10枠分。つまり千個ほどだ。
「ちょっ、ちょっと!?と、止めて下さい!」
「あっ、すみません。これ、一度出したら止められないんですよ。全部出しきるまで待っていただけたら‥‥‥」
「ええ!?も〜こんな時はどうすればいいのよ!」
その言葉に、俺は苦笑いをするしかなかった‥‥‥おっと、全部出しきったようだ。
「もうこれで全部です。集計と換金をお願いします」
「あの‥‥‥さすがにこの量を今すぐとはいきませんので、明日でよろしいでしょうか?」
「あっ、はい。大丈夫です。一応、ギルドカードを渡して置きますね」
「いえ、確認だけで結構です。一旦お借りしますね‥‥‥はい、確認いたしました。また明日、受付に、この事を伝えてください」
俺は頷き、冒険者ギルドを去る。
ヤベェな。俺、ちょっとやり過ぎたみたいです。言い訳はある。だってスライム、無限湧きだったんだから。仕方ないんだ。
おかげで‥‥‥おっ、俺のレベルが10まで上がってるな。スキルレベルに成長はなし、と。初日にしては頑張っただろ。いや、頑張りすぎたといったほうが正しいか。
そして、家の玄関へ━━━
「ただいま〜」