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第6話 『狩人』

三日三晩歩き続け、食料も尽きたところで、近くにある雁奈(かりな)と言う集落に寄ることにした。


「この辺は深い森のせいか少し淀んだ空気が流れているな。こんなところに本当に集落はあるのか?」


「拙者も行ったことはないでござるから自身はないでござるが…地図ではもうすぐな筈でござるよ。」


「そうか、それならいいんだぁ ぐぁ⁉︎」


突然の出来事に慧翔はめちゃくちゃな語尾になってしまう。

誰かが仕掛けたのであろう罠に慧翔が引っかかり、ついでに水無月も巻き込まれた。

地面を踏むと下から網が出てきてそのまま踏んだものを捉えると言うシンプルなトラップだった。

網の中に2人も入るとキツキツで、刀を抜いて網を断ち切ることも叶わなかった。


「慧翔殿、この状況は少しばかりやばいではござらんか?」


「ああ、おそらくこれは災獣を捉えるための罠だ。ということはその対象も近くにいる筈。今そいつに襲われたら一方的に喰われるな。噂をすれば、猛獣どものご登場だ。」


ぞろぞろと集まってくるのは、狼に似た獣だった。ただ、口元でギラつかせる牙が、ただの狼出ないことを思わせる。それもそのはず。地上に生きとし生ける生物は、人間と人間が新たに育てた家畜以外災獣へと成り果ててしまったのだから。


そして、その獣の群れのリーダー格であろう、一番がたいがよく牙の大きい一匹が二人へと飛びかかる。


その時、ヒュッ と風を切り裂く音とともに、獣の頭が貫かれた。


ドサっと崩れ落ちる獣の屍に、周囲の獣たちは呆然と立ち尽くしていたが、続く矢の雨で我に帰って一目散に逃げ出した。無論、急所を射抜かれた5匹は除いて。



「いやー、助かったでござるよ。感謝するでござる。」


網から出して貰った水無月が頭を下げる。


「いえいえ、それ、私が獣を捕まえるために仕掛けた罠ですから。まさかこんな森の中を歩いてくる人がいるとは思いもよらなくて...」


「それは悪いことしちまったな。すまん。」


「謝らなくていいですよ。いい餌になってくれたお陰でたくさん狩れましたから。」


「そういえばあの矢の精度はすごかったでござるな。狙った獣を全て正確に一矢で仕留めてたでござる。」


「私の腕なんてまだまだですよ。あとまだ名乗っていませんでしたね。」

「私の名前は化野(あだしの)与一(よいち)と言います。与一と呼んでください。」


「俺は御巫慧翔。で、こっちが水無月京介だ。それにしても与一ってなんだか男みたいな名前だなぁ。」



「知らないんですか、慧翔殿。化野家と言えば弓矢の名家でござるよ。そして、その党首は女性が務めていて、生まれてきた女の子には強く逞しく育って欲しいと願い男の名をつけるでござるよ。」


化野家について慌ただしく水無月が説明をする。随分目を輝かせているなと思ってあとで聞いてみたがどうやら化野家は数々の逸話を残しており、本好きの水無月にとって尊敬に値する名家ならしい。


「随分とよく知られているんですね。今言った通り、化野家は弓矢の名家で狩りを生業としています。ですけど私は拾われ者。血の繋がりのないただの余所者ですよ。」


「それはよくないことを話させてしまったでござるな。」


「もう慣れたから大丈夫ですよ。」


少しの間、重い空気が流れていたが、慧翔があることを思い出し、会話を切り出す。


「狩りをしているってことはこの辺の地理にも詳しいのか?」


「もちろんですよ。聞きたいことがあればなんなりと。」


「雁奈と言う集落に向かってるんだけれど道を教えてくれないか?」


「雁奈を目指していたんですか。なら丁度いいです。私の家もそこにあるので一緒に行きましょう。」


「そうでござったか。ではお言葉に甘えるでござるよ。」


「ただし、一つだけ条件があります。」


二人は口を揃えて疑問を漏らした。


「「条件?」」


「思ってたよりもたくさん狩れたので、運ぶの手伝ってくれませんか?」


(なんだ、そんなことか)


この人はきっと天然なんだなと思った二人だった。


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