第六回 怒涛の打ち合わせ(1)
打ち合わせの具体的な内容に触れる前提として、ここで、WEB版『木苺はわたしと犬のもの』の内容を説明しておきます。
主人公は三十二歳の図書館司書『司簫子 』、通称『司書子さん』。二人暮らしだった祖母を一年前に亡くし、祖母が残した小さな古い家に、老犬一匹とひっそり暮らしています。
相手役は、近所の洋品店の次男で、司書子さんの働く図書館の常連でもある、三十五歳の『タンテイ』さん。これは『反田貞二 』という名前からついたあだ名で、職業は別に探偵ではありません。
この二人が、架空の地方都市・御狩原 市の、昭和の匂いの残る古い住宅街で、ご近所で起こるささやかな事件を解決したり、縁側でお茶しながら不器用な恋を育んだりする、探偵ごっこ風味のほのぼのご近所ラブコメです。
ささやかな事件は二つ。
一つ目は、木苺の実る五月のお話で、二つ目は、梅雨が開け、夏休みに入ったばかりの七月のお話です。
そして、そのあとに、エピローグとして、砂糖を吐くような恋愛エピソードがくっついています。
文字数は、168,021文字。
四百字詰め原稿用紙にして(改行等を考慮せずに)約四百二十枚ですね。
文体が冗長で、内容的にも脱線モノローグが多いので、話の規模のわりに文字数が多いです。文庫本一冊には、たぶん、ちょっと多すぎです。
当然、改稿で文字数を削るように言われる覚悟はしていました。
そして、打ち合わせは具体的な改稿の話に……。
文字数については、やはり、減らして欲しいと言われました。
これは、ただ文字数が多いからではなく、作品が冗長だからもあるでしょう。
具体的には、12~13万字を提示されました。
約17万字を12万字というのは、かなりの削減です。
冗長体質のため、いつも書くものが長くなりすぎて削るのに苦労している私に、できるでしょうか。
編集者様は、すでに作品の具体的な改稿案をプリントして、持ってきてくれました。
話の流れを書き出し、どこをどうしたらいいという提案を赤字で描き込んだものです。
とにかく丁寧に作品を読み込んでくれていることが、よく分かります。
たぶん、ストーリーの流れを、作者の私より把握しています。
それを元に、具体的な改稿策を話し合います。
その中で、大きな変更点がいくつか出てきました。
また、タイトルの変更についても、この時に要請され、それ自体は合意しました。
ただ、私は、元のタイトルである『木苺はわたしと犬のもの』も残したくて、サブタイトルとして残させてもらえないかとお願いしました。
これについては、けっこうぎりぎりまで決まらず、ずっとはらはらしつづけることになるのですが、その話は、また後で。




