第四回 作品の特殊な事情
そんなわけで、『打ち合わせ時には、ぜひこれを聞こう』という事柄は一つ決まったのですが、その前に、私がやらなければいけないことがありました。
実は(といっても、最初から公表していますが)、この作品には、第一話部分のプロットを提供してくれた方がいるのです。
書籍化のお話を正式にお受けする前に、その方に話を通しておかないわけにはいきません。
とはいえ、先方にも都合があります。ちょどとお仕事が忙しい時期のようだったので、お返事を急かすわけにもいきません。
長くお待たせする可能性も考えて、出版社側には事情を話し、返事待ちであることを伝えました。
その際に、出版社側が、プロット提供者様の権利をきちんと尊重してくださる姿勢を示してくださったことも、書籍化を決心する理由の一つとなりました。
この作品は、プロットやアイディアを提供してくれた仲間たちをないがしろにするわけにはいかないものですから。
というのは、この作品は、もともと、ツイッターでの雑談の中から、フォロワーの皆様にいろんなアイディアを出していただいて生まれてきたものなのです。
その事は、『小説家になろう』でも自サイト『カノープス通信』でも、謝辞や『後書き』で明記していました。
以下、その後書きの一部を転載しておきます。
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冒頭の謝辞にも書きましたとおり、この作品は、ツイッターでの雑談をきっかけに生まれたものです。
私が自宅の庭のキイチゴを犬と分けあって食べたことを呟いた時の、『最近は子どもたちがキイチゴを食べなくなったから、キイチゴはもっぱら私と犬のもの』という何気ない一言に対する『いいフレーズですね、小説のタイトルになりそうな……』というリプライが発端になって、最初は『そういうタイトルの架空の作品の内容を妄想する』という遊びから始まり、それをたまたま見ていた方が第一話のプロットを提供してくださったことで、実際にその作品を私が書いてみようということになり、さらに他の方から第二話の元となるアイディアが飛び出し、様々なアイディア提供や助言を受けながら、途中、ちらっと第二話以降を競作しようなんていう話も出てきつつも、最終的には私の単独作品として完成した――それが、この作品です。
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※ちなみに、このときのツイッターのやりとりは『まとめ』を作って公開し、作品後書きからリンクしています。作品既読の方には一種の『メイキング』として楽しめると思いますが、未読の方には盛大なネタバレとなりますのでご注意下さい。
『木苺は私と犬のもの』まとめ→ https://togetter.com/li/516639
※提供された第一話プロットは、文章の権利が私にないので公開していません。また、実際に書くにあたっては、元プロットそのままではなく、いろいろと変更や肉付けをしています。
私は、普段、今どき流行らない作風の異世界ファンタジーなどをほそぼそと書いており、こういうライト文芸系の現代ものは、これ一作しか書いてませんでした。
この作品は、もともと『私ではなく誰か別の人が書いた、こういうタイトルの作品の内容を想像する』という遊びから始まったもので、だから普段の自分なら書かないような内容になったのです。
なので、フォロワーさんたちの後押しがなかったら、自分がこの作品を実際に書こうと思うことはなく、結果、この作品は誕生せず、当然、書籍化の打診が来ることもなかったはずです。
だから私は、この作品については、プロット提供者の方の許可を得られ、また、出版にあたって、その権利をきちんと尊重してもらえ、他のアイディア提供者様たちへの謝意を表す場も与えてもらえるのでなければ、書籍化の話をお受けするわけにはいかなかったのでした。
その後、プロット提供者である村崎右近さんの祝福とご快諾を得て、次の段階――顔を合わせての打ち合わせに向けて動き出しました。