第十二回 おまけコーナーのこと
もうひとつ、改稿と平行して進めてきたことがありました。
WEB版では文字数が多すぎた拙作ですが、改稿のわりと早い段階から、どうやらかえって文字数が少なくなりすぎそうだということがわかってきました。
最初にざっくり削ったあと、今度はまた増えてゆくかと思ったら、なぜか、さらに減り続けたので……。
かといって、削った箇所を元に戻すという選択肢はありませんでした。
不思議なことに、どんなに断腸の思いで削った箇所も、削った後で見直すと、やっぱり必要がない箇所だったと分かってしまうのですね。
作品にとって必要かどうかと、自分が気に入ってるかどうかは、また別の問題なので、趣味の作品であれば残してしまう箇所かもしれません。でも、商品としては、組み立てた後に残ってしまった部品はやはり最初から不要な要素だったのだと納得がいってしまったので、後悔はありません。
そこで担当様が提案してきたのが、ヒロインによる児童書の紹介コーナー。
最初は、あまり乗り気でありませんでした。
プロの作家でも児童文学の専門家や教育者でもなんでもない私などが、読者に児童書をお勧めするなんて、おこがましい気がして……。
(ヒロインが紹介するという体裁をとってはいても、実際には私が紹介するわけですから)
が、担当様と電話で話しているうちに、はっと思いつきました。
この作品のキャラの何人かは、実在の児童文学から名前をとっていて、そのことは、作中でも、WEB版の後書き等でも、特に触れていなかったのです。
さすがにスノーウィはそのままなので気付いた人も多かったと思いますが、ちょっと変えてあったりして元ネタがわからないキャラについては、単なる自己満足のお遊びなので、わざわざ説明する必要もないと思っていました。
これらの元ネタ本を紹介すればいいのでは……?
その直後から、私の頭のなかでは、タンテイ氏と司書子さんが、児童室で掛け合いをはじめました。
(自キャラに『さん』づけもなんですが、『司書子さん』については、私の頭の中で『さん』まで含めてそういう名前という扱いになっているので、ご容赦ください)
タンテイ氏には五歳くらいの同居の甥御さん(兄夫婦の子)がいて、児童室で司書子さんに、甥っ子に読んであげる本を紹介してもらう……という設定です。
担当様には、最初から、『一冊当たり200文字くらいで』と言われていたのですが、私の脳内では、制限文字数のことなど知らないキャラたち二人が、しゃべる、しゃべる……。
試しにざくっと書いてみたら、一冊あたり、350文字くらいから、多いものでは500文字以上に。
このままでは間違いなく文字数オーバーですが、(企画自体もまだ流動的な段階だし、削ればなんとかなるんじゃない?)という謎の楽観思考で、担当様に、「こういう設定の対談形式でやりたいんですが」と申し出て、許可が出ました。
それで、本文にも、『反田さんには五歳の甥っ子がいていつも本を読んでやっている』という一節を加筆しておきました。