第一回 なんで私に!? まさかの書籍化打診
五月末頃のある日、たまたま複数の大きなコンテストの結果発表が重なって、私のツイッターのタイムラインにも、その結果発表がリツイートで回ってきていました。
それを眺めて、周囲の書き手さんたちがどんどん書籍デビューしていく最近のネット小説事情にあらためて感慨を抱き、思わずこんなツイートをしました。
“ネット小説がどんどん書籍化されて、すごい時代になったなあ。コンテストもいくらでもあるし、昔はよく『ネットに良い作品を上げさえすればどこかの編集者が見出してくれるなんてありえない夢物語』的なことを言われてたけど、今はそれが現実にあるんだもんね……”
私が個人サイトを開設したのは2001年ですが、当時、書籍化を目指す道といえば、ほぼ公募だけで、しかも、当時の公募では、ネットで公開した作品は既発表作品と見なされて応募できないことが多かったので、本気でプロを目指す人はネットで作品をあまり公開せず、ネット小説の書き手が商業デビューするレアなケースでも、出版されるのは、多くの場合、ネットに公開しているものとは別の投稿作品でした。だから、もしサイト掲載作品が書籍化されるとしたら、一作目が売れた場合の二作目以降となり、よりいっそうレアなケースでした。
つまり、ネット小説が商業書籍化されるなんて、滅多にないことだったのです。
それから状況はどんどん変わって、投稿サイトからの拾い上げや、投稿サイトに公開したまま参加できるコンテストなども増え、ネット小説の書籍化は、すっかり一般的になりました。まさに隔世の感です。
けれど、いくらネット小説がどんどん書籍化される時代になったといっても、それは、ランキング上位だったり、積極的にコンテスト等に参加している人の場合。
ランキングなんてまったく圏外だし(というか、どうせ圏外だろうから見に行ったこともない)、コンテストにも参加していない私には、関係のない世界のお話です。
だから、ただ、見知らぬネット小説仲間の受賞を勝手に祝いながら、『私は枯れ果ててるから関係ないけど……』などと、完全に傍観者気分のツイートを連投していました。
……が、その直後。ツイッターを離れ、何気なくメールをチェックしたら、受信トレイに【書籍化打診のご連絡】という、まさかのタイトルが……!
はっきり言って、目が点になりました。
(なにこれ、本物? なんで私に? まさか、何かの間違いでは……?)と。
しかも、よりによって、上記のようなツイートの直後です。
差出人が小説家になろう運営元ヒナプロジェクトさんでなければ、誰かが私のツイッターを見ていて悪戯でメールを送ったんじゃないかと思ってしまいそうな、絶妙のタイミング。
しかし、メールの主はヒナプロジェクトさんです。
そして、転送されてきた打診メールも実在の出版社からのもので、レーベルの公式サイトもリンクされています。
文面から、間違いなく拙作をきちんと読んでくれていることも分かりました。
(本物なんだ……。こういうことって、本当にあるんだ……)
若干呆然としつつ、もう一度、あらためて心のなかで問いました。
(でも、なぜ、私に?)