転機
一周単位で次話を投稿したいと言っていましたのに実に2ヶ月振りの投稿になってしまいました。
すみません。
フォルネア皇国軍歩兵部隊の渡河。それによって後に『ヴィクトゥーリア城ペルーサ川沿岸の会戦』と称されるフォルネア皇国とモンダルシア帝国の戦端は切って落とされた。
フォルネア皇国軍の歩兵が膝から十数センチ上までを濡らしながら徒歩で川を渡って来るのを見たモンダルシア帝国軍は個々人が短弓や弩、ロングボウと呼ばれる大弓を手に持って矢を射かけた。
「盾をかざせぇ!」
先頭を渡っていた兵士の内の誰かがそう叫びそれを聞いた兵は咄嗟に右手に持った盾を頭の上に翳して飛来した矢から自身と仲間を守った。
「密集してこのまま一気に渡るぞ!」
重装歩兵がそう川幅の広く無いペルーサ川の中程まで進んだのを見計らって軽装歩兵も川に入る。
軽装歩兵は重装歩兵程の防御力は無い。だが、軽装で動きが早く、乱戦に強い軽装歩兵は中世の戦場において最も多く用意された兵力となった。
それを見たモンダルシア帝国軍は僅かに後退する。
「重装歩兵を川から上げろ。弩兵は前面に展開。騎兵は弩兵が敵を引きつけた後に両翼から突撃をかけよ。」
実に効果的に乱戦を避けるべく兵を動かすベルトゥーリア伯はやはり先皇との戦にも従軍していただけに敵の拙なすぎる戦い方に物足りなさを感じていた。
「弱い。この程度であれば十分に撃破できるぞ。」
そう呟くが、戦況はそう容易く決まりはしなかった。先皇の起こした戦で鍛えられているのは戦った側のベルトゥーリア伯だけではなく、当然先皇が率いていた兵達にも影響を与えている訳である。重装歩兵は騎兵の突撃に対して密集陣形を保ったまま盾を翳し、盾の隙間から槍を突き出して騎兵を迎え討とうと隊形を変える。
「ふむ。流石は皇国兵、と褒めるべきだろうな。戦い慣れている。それ故に無能な者に率いられている事が不憫でならんな。
チャリオット隊を前へ!あの陣列を崩せ!」
亀甲隊形を組み騎兵の突撃を中心させた重装歩兵隊に丈夫な鎧を馬にも着せ、兵隊を守りつつ前進するチャリオット、つまり戦車隊が突撃を敢行した。
帝国軍チャリオットの突撃を受けた皇国軍重装歩兵隊は当初の密集隊形を崩される事になった。
しかし、その間に渡河を終えた軽装歩兵隊が帝国軍本隊に乱戦を仕掛ける事態になり、戦況は膠着状態になりつつあった。
「ふむ。やはり一兵卒の戦力は向こうが上か。」
乱戦に持ち込まれ、徐々に押し込まれる帝国軍を見ながらベルトゥーリア伯はそう呟いた。
「ベルトゥーリア伯、本陣を下げましょう。このままでは敵の歩兵部隊と正面から戦う事になります。」
「いや、ここで本陣を移すのはいかんを敵に川を越えた拠点を与える事になる。騎兵隊を持って、軽装歩兵隊に対応せよ。弩兵隊は敵の騎士隊が渡河を開始した場合それを優先的に攻撃せよ。
それまでは前線の部隊への援護射撃を。
やはり、この会戦の結末はティグリスの城攻めの成否次第という事になるか。」
そう言って刻々と変化する戦場を睥睨しつつ次々に軍団を動かすベルトゥーリア伯は副官同然の若者に戦の勝敗を委ねた。
城が見える林の中に待機したティグリス率いる二千の兵の内、大半は軽装歩兵である。
「ティグリス様、やはり戦況はやや、こちら側が不利との事です。皇国兵の練度はそう落ちてはいない様です。」
「指揮官は馬鹿でも兵が強いとなると苦戦するか。
ベルトゥーリア伯なら崩される事はないだろうがな。
ガンジュ、まだか?」
崩される事は心配してないにせよ、戦場では万が一という事がまま起こる。
故に若干の焦りを持ってティグリスはそうガンジュに聞いた。
「問題ありませんよ。今に城門は開きます。」
「そうか。お前達がこの城攻めの要だ。しっかり頼む。」
「鉱山で崩落するまで鉱石を掘らされるよりはマシでさぁ。
俺たちに奴隷以外の選択肢を作って下さったティグリス様のためなら我等一族この身を投げ打ってでもお助けしますぜ。」
アテにしていると言ってティグリスは城門を睨みつけていた。
ヴィクトゥーリア城内に残る千足らずの兵はなんとか見える位置で行われている会戦を城壁の上から見ていた。
「川を渡って攻め込んでるみたいだな。やっぱり皇国の方が強いんだな。」
「さぁな。ま、今回は数でも勝ってるし。余裕だろう。」
そう言って話している二人の兵士のうちの片方が盛大に腹を鳴らした。
「腹減ったな。」
「そうだな、もう昼だしな。」
中空に輝く太陽を見ながら二人はそう言った。
「しょうがない。俺が何か貰って来てやるよ。」
「悪りぃな。酒も頼む。」
「そいつは無理だと思うぜ〜。」
と片手を振りながら城壁の階段を降りて行った彼は突然地面に穴が空いたのを見た。
「な、何だ!?」
慌てて手に持った槍を構えて慎重に近づいた彼は穴の中から伸びてきた子供の様な大きさの手に掴まれ穴の中に引きずり込まれた。
穴の中に引きずり込まれた彼が最期に泥だらけで大振りな斧を持ったドワーフの鉱夫達に気付けたかどうかは定かではない。
一緒に話を考えてくれてる友人の都合がつかずに続きを考えられていないので…
しばらくは別な小説の方を投稿していこうと思っています。
ジャンル同じようなのでやるつもりですのでこちらを読んで下さってる方にはしばらくもう片方の方も読んで頂けたらなぁと思っています。