表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私を殺した公女、いまは幼女  ――私以外に、負けるな。【連載版】  作者: 緋色の雨


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/17

プロローグ

 生きるために足掻いた。その行いを正当化するつもりはない。

 反乱の扇動、それに潜入工作や要人の謀殺。

 私はあまりに多くの罪を重ね過ぎた。

 だから――


「貴女の処刑が決まったわ」


 告げられた言葉には驚かない。それよりも、自身を縛る鎖を鳴らしながら顔を上げ、牢の格子越しに声の主をたしかめる。

 薄暗い廊下に、ドレス姿の女性がたたずんでいる。

 私より少し年下くらいの、美しい女性だった。

 ……ようやく会えた。


「貴女が私の宿敵ね、ヴィオラ」

「ええ。こうして相対するのは初めてね、ノクス」


 銀髪に縁取られた小顔に、上品な笑みを湛えている。

 彼女はアルヴェイン公国が生み出した怪物、ヴィオラ。エルディア王国の第一王子派として活躍しており、第二王子派の工作員として暗躍する私の策をことごとく潰した。


 私が捕らえられたのも、他ならぬ彼女との読み合いに負けたからだ。

 情報がたしかなら私より三つ年下。どんな恐ろしい外見をしてるのかと思ったら、まさかこんな、虫も殺せなさそうな令嬢だったなんてね。


「公国の怪物が私になんの用? わざわざ処刑を告げるために来た訳じゃないでしょう?」

「ええ。刑を執行する前に、貴女と話をさせて欲しいと頼んだの」

「話?」

「誰の命令? 黒幕は誰? ――なんて、つまらないことは聞かないわ」


 ……でしょうね。

 ヴィオラならとっくに掴んでいるに決まっている。

 最後にそんなことを聞かれたら、がっかりするところだった。


「――貴女との戦いだけが楽しかった」

「……は?」

「それを伝えておきたかったの」


 一瞬だけ胸の奥が熱くなった。

 あの怪物が、私を認めていたのだと思ったから。


 だけど、その言葉の意味を理解して、心がすーっと冷えていく。


 孤児院育ちの私は、幼くして組織に売り飛ばされた。そうして工作員として育てられ、生きるために様々な犯罪に手を染めた。それを楽しんだことなんてただの一度もない。

 結果を出し続けることでしか、生き残ることが出来なかったから。


 ヴィオラとの戦いだって、いつも命懸けだった。

 なのに、それが……楽しかった?


 私を拘束する鎖が悲鳴を上げた。

 アルヴェイン公王家の第一公女であるヴィオラは、その知謀の他に、権力や財力、そして軍事力と、私が求めて止まぬすべてを兼ね備えている。

 それでも、知略を尽くした戦いだけは対等なのだと、心のどこかで思っていた。


 でも違った。

 私は命懸けなのに、彼女は楽しむ余裕すらあった。

 その事実が、私のプライドを粉々にした。


「厄介な敵よ、貴女は」

「あら、評価してくれるのね、嬉しいわ」


 本当に厄介。

 第一王子派にヴィオラがいなければ、第二王子派は順調に勢力を伸ばしていただろう。私も順風満帆な日々を過ごし、工作員のエースとしての地位を不動のものとしていたはずだ。


 私にとって最悪の敵。

 なのに、彼女は無邪気に笑っている。


「私たち、もっと早くに出会えていれば、友達になれたかもしれないわね」

「冗談じゃないわ」


 考えるより早くに吐き捨てる。

 友達なんて必要ない。少なくとも、私の人生には縁のなかった言葉だ。


「……残念ね。私は本気だったのに」


 ヴィオラは少し寂しげに笑った。

 なによそれ。

 貴女は、私が手にできなかったすべてを持っているじゃない。


「正気とは思えないわね」


 任務を通してぶつかることは多かった。けど、こうして会うのは初めてだ。そんな敵を捕まえて、友達になれたかもしれないなんて、冗談にしてもたちが悪い。

 まったくもって、怪物の考えは理解できないわ。


 そんなことを考えていると、足音が近付いて来て、ヴィオラの隣で止まる。

 新たに現れたのは、執事らしき格好をした黒髪の青年だった。


「公女殿下、そろそろお時間です」


 彼女は小さく頷き、続けて視線を私に向ける。


「最後に、言い残すことはある?」

「……先に行くわ。私の居ない世界で、せいぜい退屈な余生を楽しみなさい」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ