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【三作目・完結済み】最強勇者の俺、倒すべき魔王が余命一ヶ月の少女だったので、看取ることにした  作者: 立花大二
第3章:最後の願い

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第39話:三つ巴の死闘

「……面白い。その死にかけの体で、まだ、私に挑むか」

 ゼーリオンは、奥義を使ったことで魔力を消耗しきっているはずのゼノンを、余裕の表情で見下ろした。

「だが、お前一人で、私を止められるとでも?」


「一人では、ありませんよ」

 ゼノンは、不敵に笑った。

 その言葉に応えるかのように、崩落した洞窟の入り口から、数多の光が差し込んできた。

 王都騎士団の精鋭たちが、ゼノンの元へと、集結しつつあったのだ。


「――ゼノン様! ご無事でしたか!」

「遅くなりました! 全員、到着しております!」

 騎士団長が、ゼノンの隣に並び、剣を構える。

 その数は、百を超える。一人一人が、王国最強を謳われる、屈強な戦士たちだ。


「……なるほど。これが、お前の切り札か」

 ゼーリオンは、集結した騎士団を見渡し、それでも、なお、その表情を崩さない。

「だが、数が増えたところで、結果は同じだ。烏合の衆が、いくら集まろうと、獅子には勝てん」

「それは、どうでしょうか」

 ゼノンは、杖を構え直した。

「我々の目的は、あなたに勝つことではない。ただ、時間を稼ぐこと。……その一点において、我々は、獅子をも喰らう、蟻の群れとなってみせましょう」


「――全軍、聞け!」

 ゼノンが、声を張り上げた。

「我々の使命は、ただ一つ! 勇者リアンが、その役目を終えるまで、この魔族を、この場に釘付けにすることである! 命を惜しむな! 己が身を盾とし、我らが世界の、未来を繋ぐのだ!」

「「「オオォォォォ!!」」」

 騎士たちの雄叫びが、山々にこだまする。

 彼らの士気は、最高潮に達していた。


「……フン。愚かなことだ」

 ゼーリオンが、指を鳴らす。

 すると、彼の周囲の地面から、先ほどと同じ、無数の黒い棘が、森のように出現した。

「一人残らず、串刺しにしてくれる」


「――行けぇぇぇっ!!」

 ゼノンの号令と共に、壮絶な戦いの火蓋が、切って落とされた。


 騎士たちは、死を恐れず、次々と黒い棘の森へと突撃していく。

 魔法使いたちは、後方から、支援の魔法を雨のように降らせる。

 ゼノンは、その中心で、的確な指揮を飛ばしながら、自らも、最大級の攻撃魔法を、ゼーリオン目掛けて放ち続けた。


 それは、まさしく、死闘だった。

 騎士たちは、黒い棘に貫かれ、次々と倒れていく。

 だが、誰一人として、退こうとはしない。

 一人が倒れれば、次の者が、その屍を乗り越えて、前に進む。

 彼らは、自らの命を、未来へと繋ぐための、燃料としていた。


「……しぶとい、蝿どもめ……!」

 さすがのゼーリオンも、その、常軌を逸した決死の猛攻に、わずかに眉をひそめていた。

 彼は、初めて、本気の魔力を解放し始めた。

 空からは、黒い氷の隕石が降り注ぎ、大地は、底なしの闇の沼へと変わっていく。

 戦場は、阿鼻叫喚の地獄と化した。


 だが、それでも、ゼノンと騎士団は、決して退かなかった。

 彼らの心は、一つだった。

 友のために。世界の未来のために。そして、自らが信じる、正義のために。


 ――その頃、俺は。

 エリアを背負い、広大な針葉樹の森を、ひたすらに南へと向かっていた。

 背後で繰り広げられているであろう、壮絶な戦いの気配を、肌で感じながら。


 聖剣が、俺の心と共鳴し、断片的な映像を、俺の脳裏に送り込んでくる。

 倒れていく、名も知らぬ騎士たちの姿。

 血を吐きながらも、杖を構え続ける、ゼノンの姿。

 そして、そのすべてを、嘲笑うかのように見下ろす、ゼーリオンの姿。


「……っ……!」

 俺は、何度も、足を止めそうになった。

 戻るべきではないのか。

 仲間たちが、命を懸けて戦っているのに、俺は、こうして、背を向けて逃げ続けていて、いいのか。


 だが、そのたびに、俺は、背中で聞こえる、エリアの、か細い寝息に、我に返った。

 俺には、俺のやるべきことがある。

 彼らが、命を懸けて作ってくれた、この時間を、無駄にするわけにはいかない。


 俺は、唇を噛みしめ、涙をこらえ、ただ、前だけを見て、走った。

 一歩でも、早く。

 一秒でも、早く。

 約束の場所へ。


 俺の旅も、ゼノンの戦いも。

 すべてが、最後のクライマックスへと、向かっていた。

 二つの戦場は、遠く離れていながらも、見えざる絆で、確かに、繋がっていたのだ。

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