第14話 絶体絶命
突如木々に赤くて丸い光が出現した。それは数を増やし、気づけば僕が見渡す限り、赤い光だらけになった。ビーラの顔が引きつっていた。ヤツは相変わらずニヤニヤしていた。
日が昇って来たのだろう、鬱蒼としていた森に陽の光が照らし出した。と同時に、赤い光の正体が明らかになった。
それは異型な鳥だった。体は鳥と同じく翼とモフモフの胴体、鉤爪があった。が、頭部は蟹だった。これを見た僕は瞬時にビーラが魔物に拷問を受けていた過去を思い出した。これがカニバードなのか。
奴らを見た後、ビーラの方を見ると青ざめていた。以前に鳥を見た時みたいに少し乙女チックな反応ではなく、トラウマレベルの蒼白とした表情をしていた。ヤツは僕の方を向いたままニタニタしていた。
もしかして、ヤツは魔物を呼び寄せる力を持っているのか?
だとしたら、あのゴリマッチョベアが襲ってきたのはヤツの仕業なのだろうか。なんて奴だ。ヤツはそんな力を隠し持っていたのか。もっと早く分かっていたら、何かしらの対策ができたというのに。
でも、今はこの窮地を抜け出す事だ。周りにいるカニバードは、人やエルフを喰う。それに音に敏感だ。例え全速力で駆け出したとしても、あっという間に襲われるだろう。
どうすればいいか考えていたが、ヤツはその猶予を与えまいと、いきなり僕の方に駆け出してきた。
ビーラが弓をかまえようとしたが、周囲の奴らに警戒しているからか、攻撃できなかった。
僕もなす術無くヤツに抱きつかれてしまった。両脚で僕の胴体に巻きつけ、蜘蛛みたいに伸びた腕を直角に曲げながら絞めていた。
魔法で撃退しようと思ったが、声に出してやらないと発動できないので、もどかしい思いをしながら苦しんでいた。
どうしよう。一か八か、やってみようか。いや、僕が魔法を放った所でたかが知れている。
そう思っていると、ビーラと目があった。何故か僕の脳内に電流が奔った。
言葉ではないが、直感的に彼女がやる事が分かってしまった。駄目だ。絶対に駄目だ。僕のために。
「ピカーラ!」
彼女が放った閃光がヤツの背後に迫ってくる。僕はとっさに目を瞑って失明を回避し、ヤツは背中からモロに喰らったのか、ギャッという声が上がった。
その途端に僕の身体は自由になった。
「振り向かずに走れええええええ!!!」
ビーラが森中に響かせるぐらいの声量を上げた。僕は彼女の一声に奮い立って、無意識に走り出した。
カッと目を見開いて、懸命に走る。カニバードが騒ぎ出し、僕を無視して一斉に背後にいる彼女へと向かっていく。
僕は振り返りたい衝動に駆られたが、見た所で阿鼻叫喚が待っているのは確実だ。
だから、必死に堪えて走った。すると、突然背中から焼けると思うほどの熱風が襲い掛かってきた。
「うわっ!」
僕はその風に身体を丸ごと持ってかれてしまい、気づけば飛んでいた。無重力の中、背後の景色が見えた。それは森中が炎に包まれていた。
火だるまになったカニバードが狂ったようにあっちこっちに暴れているのを見た時、僕は背中を強打した。
「うっ……」
その衝撃で僕の意識は途絶えてしまった。




