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恋に落ちた  作者: 群青さかな
12/15

意外

声がした方を見上げると、見慣れない顔がこちらを見下ろしていた。



職場の同僚、五十代後半の女性二人組。


その顔は気のせいか、好奇心でキラキラ輝いているように見える。


…あ〜あ、厄介だな。



「あっ、こんにちはー。こんなトコで会うなんて凄い偶然ですねー!」


「ちょっとマナちゃん、誰誰?こちら。可愛いー♡息子さんじゃないよね…?」



…やっぱり聞かれるか。



「うん、ちょっと知り合いで。遠くに住んでるんだけど、近くに来たから会おうよってなったんですよー」



すると二人組、ふーん、と少し納得のいかない顔で私を見る。



「そうなんだ?じゃ、ごゆっくりー」



彼女達は、私にそう言ったあと、彼に極上の愛想笑いで挨拶。



「はい!マナさんをこれからもよろしくお願いしますね♡じゃ、また♪」



対する彼。なんとまたしても満面のニッコリスマイルでお見送り。


奥様二人組は、見事悩殺されたようで、顔を真っ赤にしてお店のレジへ向かう。

(わかるよわかる。そうだよね)


あーあ、こりゃあとでまた彼女らに質問攻めにあうかなぁ。噂話の格好のマトだ。


まぁしょうがない。

でも何も悪いことはしてないんだし…ね。



「ごめんねレンくん。まさか知り合いに会っちゃうなんて思わなくて…」


さっきの二人が店を出るのを見届けるのと同時に、急に申し訳なくなって彼を見ると。



「……」



まさかの無言。


本当に怒らせちゃった?



「…どうしたの?ごめんね、あの人達、悪い人じゃないんだけどちょっと好奇心旺盛で…」



「違う」


「え?…」



「違うよ」


「え、じゃ何で……私、何かしたかな…?」



すると彼は食い気味に、私から目を逸らしてバツが悪そうに言う。



「俺のこと『知り合い』って言っただろ!……俺はマナさんのこと、ただの知り合いだなんて思ってないのに。そりゃ、彼氏だなんてマナさんに迷惑だから、そんな事は思ってはないけどさ……」



え……


「……え?それってどういう……?」



「それ以上は言わないっ!!」



そう言うと、彼は真っ赤に染めた顔をぷいと逸らしてしまった。

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