意外
声がした方を見上げると、見慣れない顔がこちらを見下ろしていた。
職場の同僚、五十代後半の女性二人組。
その顔は気のせいか、好奇心でキラキラ輝いているように見える。
…あ〜あ、厄介だな。
「あっ、こんにちはー。こんなトコで会うなんて凄い偶然ですねー!」
「ちょっとマナちゃん、誰誰?こちら。可愛いー♡息子さんじゃないよね…?」
…やっぱり聞かれるか。
「うん、ちょっと知り合いで。遠くに住んでるんだけど、近くに来たから会おうよってなったんですよー」
すると二人組、ふーん、と少し納得のいかない顔で私を見る。
「そうなんだ?じゃ、ごゆっくりー」
彼女達は、私にそう言ったあと、彼に極上の愛想笑いで挨拶。
「はい!マナさんをこれからもよろしくお願いしますね♡じゃ、また♪」
対する彼。なんとまたしても満面のニッコリスマイルでお見送り。
奥様二人組は、見事悩殺されたようで、顔を真っ赤にしてお店のレジへ向かう。
(わかるよわかる。そうだよね)
あーあ、こりゃあとでまた彼女らに質問攻めにあうかなぁ。噂話の格好のマトだ。
まぁしょうがない。
でも何も悪いことはしてないんだし…ね。
「ごめんねレンくん。まさか知り合いに会っちゃうなんて思わなくて…」
さっきの二人が店を出るのを見届けるのと同時に、急に申し訳なくなって彼を見ると。
「……」
まさかの無言。
本当に怒らせちゃった?
「…どうしたの?ごめんね、あの人達、悪い人じゃないんだけどちょっと好奇心旺盛で…」
「違う」
「え?…」
「違うよ」
「え、じゃ何で……私、何かしたかな…?」
すると彼は食い気味に、私から目を逸らしてバツが悪そうに言う。
「俺のこと『知り合い』って言っただろ!……俺はマナさんのこと、ただの知り合いだなんて思ってないのに。そりゃ、彼氏だなんてマナさんに迷惑だから、そんな事は思ってはないけどさ……」
え……
「……え?それってどういう……?」
「それ以上は言わないっ!!」
そう言うと、彼は真っ赤に染めた顔をぷいと逸らしてしまった。




