対面販売
私たちがポーション販売への準備に取り掛かり初めてから数日後。
ギルドからも正式にオルタスの町ではポーションの自由販売が認められることが発表された。
冒険者たちは大きな変化があるのか疑問を持っていたみたいだけど、これまでにポーションを納めてきた人たちにとっては大きな話だ。
私たちが改めて許可を貰いに向かった頃には既に何人かの人たちが承認を得ていたし、町から薬草や瓶が一瞬にして消え去ってしまった。
そして既に町の中ではポーションの販売が行われ初めている。
「よし、なら私たちも売りに行こうか!」
「はい!」
ラインハルトとエレンにポーション運びを手伝って貰いつつ、ギルドから町の外に出る道へ向かう。
自分のお店は用意出来なかったけど道沿いのお店にスペースを貸して貰い、そのお店の前で販売を試みることにしたのだ。
ここでならポーションを必要としてくれる人が通るし、確実に売れるはずなんだけど……。
「どうして売れないの……」
行き交う人たちに声を掛けながら販売を試みるのだが、多くの人は一度だけ目を向けてくれるもスルーされてしまう。
「エリスさんは人に物を売ったことがありますか?」
悩んでいる私を心配し、ニコが聞いてくる。
「……そういえば一度もないわね」
「えっと、ちょっと、どんな風に売っているか見せてくれますか?」
「え? あ、うん、勿論いいわよ」
町の人に変な目で見られないようにニコにはポーションの管理をお願いしていたのだけれど、私よりニコの方が販売歴が長い。
年齢は関係ないし、その教えを乞うことにしたのだけど……。
「エリスさん……それは本気でやっているのですか?」
ニコから呆れられた目を向けられる。
「えっ……もちろん本気だけど、何かおかしかったかな?」
道行く人に相手にされないので何かが悪いことは分かるけど、全くもって理由が分からないので聞く。
「はい……まず、何を売っているか一目で分かるようにしないとダメですよ」
「えっと、どうすればいいのかな?」
「ちょっと、見ていてくださいね」
ポーションの瓶を手に持ちながら売っているのだから伝わると思うのだけれども、ニコには不満らしいので手本を見せて貰う。
「お兄さん、ポーションは如何ですか?」
ニコは道行く全員に声を掛けるのではなく、一人に絞って近付き声を掛けた。
「ん? ポーション? これは君が作ったのかい?」
「いえ、作製したのは私ではなく向こうにいるお姉ちゃんです。ギルドからの許可も貰ってますし、効果は保証します!」
ニコがこちらの方を見てくるので、私はとっさに許可証を掲げて見せる。
「へぇー、そうか……で、値段は?」
「今なら、たったの銀貨4枚です! ギルドで買うよりお安いですよ!!」
「そうなんだ……なら三本貰おうかな」
「ありがとうございます!」
ニコはあっという間に三本を売ってしまった。
「すごい……凄いよニコちゃん!」
「私がすごいのではないです。エリスさんが出来ていないだけですよ」
「は、はい……」
素直に凄いと思って褒めただけなのに、ダメ出しされてしまった。
ニコはこれまで生きるためにポーションを売ってきたのだ。
だからこそ妥協することが出来ないのだろう。
でも確かにニコから学ぶことは多い。
通りすぎる人に単に声を掛けるのではなくて、遠くから近くに来る前に何を売っているのか認識させ興味を引いて貰っているのだ。
その効果は私の時とは一目瞭然で、あっという間に手持ちのポーションが捌けてしまった。
「エリスさん! 追加のポーションをお願いします!!」
「は、はい!」
私は急いでストックのポーションを取りに戻る。
すっかり売り子としてイキイキし初めたニコを見て、町中では変な目で見られるかもと心配したことが如何に杞憂だったかを思い知らされる。
というよりむしろ、ニコがこれまでに売ってきたであろう冒険者が、率先して買いに来てくれているのだ。
「このポーションは、向こうの人が作ったのかな?」
「はい、そうですよ! ちゃんとギルドから許可証を貰ってるので、効果は保証します!!」
ニコはポーションを作ったのが私であるとお客に告げる。
悪意をもった人からニコが狙われないようにする為に事前に決めたことなんだけど、ニコは笑顔でそれを受け入れてくれた。
本当に良くできた子で、私がニコが作りましたと自慢したくなってくるぐらいだ。
「……ニコちゃんの為にも頑張らないとね」
こうしてポーションを売り続けて用意した分がなくなった頃、町に戻ってきた冒険者に声を掛けられる。
「ハッハッハ! なんだ姉ちゃん、錬金術師様だったのか! いやー、行きに通った時に不審者がいるなと思ったが、ニコちゃんがなついてるなら怪しい人じゃあ無いな! また買わせてもらうよ!!」
「え、ええ、ありがとうございます……」
この町に来てから普通の市民の人たちとは顔馴染みになってきていたけど、冒険者たちには顔が知られていなかった。
それもあってか、私は道をウロウロしている不審者にしか見えなかったらしい。
「そんなに酷かったの私……」
ポツリと呟くと直ぐ様にニコが答える。
「はい、ダメでしたよ」
「そっか……頑張るね……」
いつまでもニコにばかり頼っていては駄目だ。私も頑張ってポーションを売れるようにならないとね。
こうして私たちは何とか無事に用意したポーションを売りきり、これで収益確保が出来る目処がたったのであった。




