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薬草採集


 新しい装備を身に纏い、意気揚々と薬草採取に向かう。

 本当ならば薬草が生えやすい場所を調べだし、その周辺をしらみつぶしに探さなくてはいけないのだろう。

 けれども私たちには、鼻が効くフェリ君がいる。


『こっちだよ、エリス』

「わかった!」


 こんなに簡単に集められるなんて、本当にいいのだろうか。

 買えば千グランにはなるだろう薬草も普通に生えていて、簡単に見つけられるのだ。

 まるでそこら中に銀貨が落ちているかのようである。


「エリス、少しそこで動かないで」

「う、うん。分かった」


 近くに魔物が現れれば、ラインハルトが直ぐ様に片付けてくれる。

 ちょっと大型の魔物が出ても、フェリ君と連携してあっという間に倒してしまうのだ。

 私はまさしく姫プレイで、何の苦労もなく薬草を集められる。


「うん、これぐらいにしておくかな……」


 持って帰れることの出来る量には限りがある。

 ゲームの中であったならばインベントリがあって自由にアイテムを収納出きるものだ。

 けどこの世界の魔法はそこまで万能なものではなくて、火や水など自然の万物に通じる物に限られている。

 空間を歪めたアイテムバッグを実現できれば物凄い便利なんだろうけど、魔法研究のお偉いさんが頭を悩ませても実現出来ていないのだ。


「もう満足したかい、エリス?」

「うん。これだけあるとポーション百本分ぐらいにはなるかな……」


 行きには空だった鞄には大量に採集した薬草が詰まっている。

 私はそんなに多くを持てないので代わりにラインハルトに持ってもらうのだが、イケメンが大量の草が全く似合わなくてクスッと笑ってしまう。


「どうかしました?」

「ううん、何でもないの。それより、早く町に帰ろ!」

「そうですか……いえ、そうですね。暗くなると危険が増しますから、今のうちに早く帰りましょう」


 夜になると慣れている場所でも勝手が違ってくる。

 それに対して魔物は夜目も鼻も効いて、何不自由なく動けるのだ。

 私たちは目的を果たしたのだし長居する必要はないので、危険なことになる前に早く帰るべきだろう。


「どうかしたの、フェリ君?」


 手が塞がっているラインハルトに代わり、フェリ君が私たちを先導しオルタスの町へ歩を進めているのだけれども、その途中で急にフェリ君の足が止まったのだ。


『……誰かにつけられているみたいなんだけど、エリスはどうしたい?』

「えっ!?」


 振り返ってみるけど、見つけることは出来ない。


「大丈夫なの?」

『んー、敵意があるならもっと早く仕掛けてきてただろうからね』

「えっ……ということは私たちずっと付けられてたの?」

『うん、そうだよ。ラインハルトは気付いてたでしょ?』

「ああ、気付いていたよ」


 全く気付いていなかったのは私だけだったらしい。


「何で今まで教えてくれなかったの?」

「近付いてくるなら対処しようと思ってたけど、それよりは薬草を回収するエリスの側にいる方が重要だと思ったからね」

「それはそうなのかもしれないけど……気付かないで薬草を取ってた私って……」


 私がのんきに薬草を取っていたなかで、ラインハルトとフェリ君は常に気を張っていたのだろう。

 町の外に出るということで私も気を付けていたつもりだけど、まだまだ油断があったのかもしれない。


「気にする必要はないよ。エリスが出来ないことをするのが私の役目なんだからね」

「そうかもしれないけど……私、危機感が足りなかったね」

「そうだね。とてもではないけど、一人で町の外には行っては駄目だよ」

「そんなに?」

「うん。薬草を見つけて嬉しいのはわかるけど、常に周囲に意識は残しとかないと駄目だね」


 確かに移動中は周囲に気を付けていたけど、薬草を採集していたときは注意が散漫になってた。

 その時に後ろから魔物が現れたら、気づかないうちに襲われてしまう。


「ごめん……これからは気を付ける」

「よろしく頼むよ。それでエリスはどうしたい?」

「そうね……何事もないならこのまま町に帰っても良いかもしれない。でも付いてきている理由が分からないと、これから薬草を取りに来ても同じ目に合うかもしれないから怖いよね……」


 私たちの後を付いてきたのが悪意を持ってなのか、それともたまたま何かの目的でだけなのか。

 それによっては放置して良いものなのかが変わってくる。


「……私は何故に付けられているのか、理由が知りたいかも」

「分かった。それなら──」


 ラインハルトが頷き、行動に移そうとする。

 しかし、その前に既にフェリ君が動いていて……。


「「うわぁ、魔物だ!!」」


 遠く離れた背後から複数の叫び声が聞こえてくる。

 そしてフェリ君に追い立てられた人たちがこちらに向かってきた。


「「た、助けて!!」」


 私たちの前に姿を表したのは想像していたのとは違い……。


「こ、子供!?」


 二人の子供達がフェリ君から逃げ出し、私たちの背後に回る。


「あの子は大丈夫だから、二人とも落ち着いて。ね?」


 思わぬ犯人に驚きつつも、まずは二人を落ち着かせる。

 そしてしばらく待ってから、何故に付いてきたのか話を聞くことにした。

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