22
探索開始から1ヶ月、エイリーク王子はスムゲルア王国の王都に到着した。
冒険者ギルドに破格の値段で人探しの依頼をした後、何の進捗も無いままに更に1ヶ月が経過していた。
1ヶ月の間、何もせずに報告だけを待っていた訳では無い。
南国の地は、小麦色の肌の乙女たちがとても魅力的であった。
遊びに遊びまくり、手持ちのお金のほとんどを使ってしまった。
追加の仕送りを本国に要求しながらも、根が真面目であったエイリーク王子は、今更ながらに自ら近隣の探索に出かける事を決意したのであった。
エイリーク王子の母国、ベリリンドール王国は、正妃の長兄だからと言って簡単に王位を継承してくれるような国では無い。
自国に一番の利益を齎した者が王位を継ぐのだ。
そう、例えばウメのような、未知の技術を知っている妃を娶れる者が優位だろう。
エイリーク王子は、全てが終わった時には、ウメに求婚しようと思っていた。
王家に伝わる魔眼のせいで、どうせ他人を信用する事などできない、愛する事などできないのだから、と、諦めていた。
他の兄弟達も他国に留学し、自国のためになる関係を築いているはずだ。
兄弟達の情報は入手できていない。
そんな状況で、必要以上の出費は控えたかった。
アンジェラを探しながら、自分達も冒険者ギルドの依頼を受け、解決すればいい。
エイリーク王子は、一つの依頼に目を止める。
農村を襲うオークの討伐依頼。
どうやらそのオークは、戦闘力の無い小さな農村だけを狙い、丁寧に村民を無傷で追い払った後で、村に残っている食料等を奪うらしい。
オークは確かにそこそこ強い種族ではあるが、自分の護衛達であれば、どんな群れでも倒すことはできるだろう。
だがスムゲルアで冒険者登録をしている者にとって、それは魅力的なクエストでは無かったようだ。
戦闘力がある人間が村に居れば、オークは襲ってこない。
鼻が利くんだろう、と言う事だった。
まぁ、メインはアンジェラ嬢の捜索なので、他の事はあまり気にする事は無い、と、護衛達に伝えていた。
オーク達の移動速度、移動経路、村を襲う頻度から計算した次のターゲット。
全て計算して出されているのに、その村に王国の騎士団が派遣される事は無い。
なぜならば、騎士団が王都から離れると、王都を魔獣たちが襲うからだ。
冒険者が村で待ち構えていると、何故だかオーク達は襲ってこない。
情報が全て流出しているのだ。
ダメ元で、次に襲われると思われていた村に向かった。
村人達の話を聞いて回り、そこで意外にも、オークの情報では無く、アンジェラ嬢と思われる女性の情報を入手した。
朝、水色の髪の女が来た。
「ごきげんよう、おほほほほ、また夕方にお邪魔しますわね」とだけ言って、居なくなった、と。
あまりに怪しすぎて、不安に思っていた、と伝えられた。
彼女かもしれない。
念のために村民を避難させながらも、エイリーク王子は、彼女との邂逅を期待し、確信していた。
「プギャーフガフガプギギギギ(おまいら、いけいけいけいけ、みなごろしよ!)」
「ぷ…ぷぎゅ~(姉さん、殺生はタブーですよ)」
「ふごふごぷぎゅ~(姉さん、兵士がいます! 中止しましょう)」
「フゴッ!フゴフゴ、フゴー!(あ、あいつ捕獲、生け捕り)」
その夜、エイリーク王子は確かにアンジェラとの邂逅を果たした。
手足を丸太に縛られ、なんかもう豚? 豚の丸焼き的な? シュラスコ的な?
捜索対象のアンジェラがオーク集団と一緒に居たため、護衛達は困惑し、エイリーク王子の指示を待っていた。
「フゴ! フゴフゴ(お館様、生贄です、お召し上がり下さい)」
「ふごふごごごご(え~、いらね~)」
エイリーク王子は護衛達に目配せで手出し無用と伝え、アンジェラを見つめた。
「えっと、アンジェラ嬢、久しぶりだね。 とりあえずこの縄、解いてくれないかな? 色々と誤解があるようなので、説明させて欲しいんだけど」
「フゴ?(なんですって?)」
「すごいな、オーク語を覚えたのか。 君の潜在能力の高さには驚かされるよ」
「フゴ?(なんですって?)」
「……アンジェラ嬢?」
アンジェラは人間語を忘れていた。
今日の朝までは覚えていたはずなのに、エイリーク王子は一歩遅かったようだ。
入院生活の弊害が!!
何もせずにいた期間が長すぎて今まで以上に何もしなくなっちゃった!
確定申告の期間伸びてよかった~(;´∀`)




