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プロローグ

奇特にもこのお話を読もうと思って下さった方へ。

ありがとうございます、そして申し訳ございません。定期的に投稿できないと思います。

仕事もプライベートもヒマな時に、ゆる~く更新して行こうと思います。

見逃してください(;´∀`)

「……様、アンジェラ様」


 ゆっくりと目を開くと、侍女のエイミーが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。

 頭が痛い。

 そう、私は前世の記憶を取り戻して頭痛が……いや、即物的に頭が痛い。

 頭部に手をやると、きれいに結い上げていたはずの髪はボサボサで、たんこぶが出来ている。

 何をしていたんだっけ。記憶が曖昧で……いや、前世の記憶が……なんだっけ?


「盛大に頭を打っていたからな。どれ」


 金髪碧眼の、まるでマンガに出てくる王子様のような美少年が、椅子から立ち上がり、私の頭に触れた。


「コブが出来ているから大丈夫だろう。一応冷やしておいた方がいいな」


 近い近い近い近い。 恥ずかしくてギュッと目を瞑る。

 焦りながらも、せっかくなので滅多に拝めない美少年の顔を間近で見てやろう、と、思い切って目を開けてご尊顔を凝視する。

 ……あ、髭剃り跡。 金髪だから遠目にはわからないけど、結構ブツブツ。 それに、鼻の奥に何か鎮座していらっしゃる。 それが鼻息に合わせて出たり入ったり……。

 たまらずブランケットを引き上げ、顔を隠して笑いをこらえる。


「おい、医師はまだか? 痙攣し始めたぞ!」


 笑いの発作が収まったところで、ベッドから起き上がり、ドレスをつまんで優雅にお辞儀する。


「失礼いたしました。 ジークフリート殿下。 ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ございません。 私は大丈夫ですわ」



 思い出した。 全てを。

 頭を打ったから、では無い。 彼女を見たから。 彼女と出会ってしまったから。

 学園主催のパーティーに遅れて入場して来て、その瞳を好奇心でキラキラと輝かせ、アホのように口をポカーンと開け、落ち着きなくキョロキョロと周りを見渡している、ウメ・マツタケ。

 私が前世で何百回とプレイした乙女ゲーム、イケメンプリンスファンタジーテイルの主人公、松竹梅。

 彼女を見た途端、私は雷に打たれたような衝撃を受け、全てを思い出した。

 あまりの衝撃に後ずさり、ドレスの裾を踏んで盛大にコケた。

 そして現在に至る。



 ゲームの舞台は中世っぽいファンタジー世界。

 普通の女子中学生、松竹梅が、ある日、彼女の趣味である廃墟巡りをしていると、宗教施設の廃墟の奥に、隠し部屋を発見する。

 そこに隠されていた宝剣を触り、誤って指を切ってしまう。

 床に一滴落ちた梅の血により、魔法陣が現れ、梅は異世界へと転移してしまうのだ。

 そして、この世界の子爵家の庭で、気を失っている梅は発見される。

 廃墟探索のため、完全防備だった梅。

 この世界では見たことの無い恰好。 存在しないテクノロジー。

 ヘッドライト、懐中電灯、ペットボトル、デジカメ、スマホ。

 梅は極秘裏に子爵家に保護され、この世界の常識を叩き込まれた後、ここ、セントグランテスト学園へと転入してくる。

 それからは彼女の知識を狙った隣国の王子に攫われたり、でもその王子が彼女に惚れてしまったり、我が国の第一王子、鼻くそジークフリート王子に取り返されたり、騎士と恋に落ちたり、馬丁と駆け落ちしたり、攻略対象は10人、50ルートもある、なかなかやり込み甲斐があるゲームなのだ。



 そしてゲーム内での私、アンジェラ・レベッカ・スペンフォードの立ち位置は、鼻くそ王子ルートの悪役令嬢。

 この国の王妃の座を狙い、ヒロインの梅ちゃんをいじめまくる役だ。

 今まで前世の記憶が無かったけれど、前世での地味な性格が災いし、私は悪役令嬢らしい振る舞いをして来なかった。

 なるべく目立たず波風立てず、趣味は読書と手芸、社交界では壁の花。 それが今の私。

 公爵家に生まれ、家柄に恵まれた私は、本来であればもっと我儘で高飛車で高貴な令嬢であるはずだった。

 何人もの派手な取り巻きを引き連れて、ツーンとしていなければいけなかったのだ。

 取り巻き? いません。 いえ、仲の良いお友達は何人かいますよ。 地味~なオタクグループです。

 しかし、恋とは障害があればあるほど燃え上がるもの。

 そういう意味では悪役令嬢は重要な登場人物なのです。

 二人の恋を盛り上げるために、私は悪役に徹しなければいけないのかしら。

 幸いなことに、ゲーム内での取り巻きだった方々は実在していて、着実に意地悪令嬢としての地位を確立していますので、悪役はあの方たちにお任せできないかしら。

 ゲーム的には、悪役令嬢がその後どうなったか等の記述は無かったので、もし必要であれば悪役になるのも構いませんが、できれば面倒な事はしたくないんです。

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