【第2章】勝利と不安
『時元魔法』の力を使い、ボスを瞬殺した俺達は奥の部屋で宝箱を見つけた。
見つけた宝箱の中には宝石のついた首輪が入っていた。
宝石は翡翠色に輝いていてわずかだが魔力を帯びている。
そして探索を終えた俺達は王都のギルドに戻ってきていた。
「はい。クエスト達成を確認しました!報酬の金貨30枚は現金にしますか?それともギルドカードに振込みますか?」
「それじゃあ金貨10枚ずつを俺とミーナのギルドカードに振込みであとは現金でもらうよ」
「分かりました!では手続きをいたしますので少々お待ちください!」
そういって受付嬢は奥へと引っ込んだ。
探索依頼の達成条件はマッピングした地図を渡すことだ。
ならば嘘の地図を作って渡せば報酬がもらい放題だと考える奴もいたが、後日ギルドの部隊で調査が行われて地図の整合を行うらしい。
もし地図が大きく間違っていた場合にはギルドから呼び出し、報酬金の没収と何らかの罰を受けることになる。
出頭に応じない場合は不当な報酬の受取ということで犯罪者として手配される。
「お待たせしました!金貨が10枚とギルドカードになります!」
「ありがとう」
金貨とカードを受け取る。
「今回はクラムのギルドマスターからの指名依頼を達成。難易度3の依頼ということでCランクへの昇格になります!すごいですね!二階級特進ですよ!」
どうやらギルドマスターが裏で手を回していたらしい。
「そしてCランクになりましたので難易度4までの依頼を受注できるようになります!困難な依頼も多くなりますががんばってください!」
「ああ」
俺達はそう言ってギルドを後にした。
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ギルドを出た後俺達は祝勝会がてら少し高級な酒場に来ていた。
二人分で銀貨50枚。
高いが今日はこのくらいの贅沢はできる。
酒は二人でワインを楽しむ。
「やりましたね!まさかCランクに昇格できるだなんて!」
「そうだな。でも普通の冒険者ならあの依頼は達成できなかっただろう。これも俺達の実力だよ」
実際危ない場面も多かったし素直に喜べない部分は多いが今はそこまで言及しなくてもいいだろう。
「そういえばアルトさん」
「どうした?」
ミーナがいつになく真剣な顔をしている。
「迷宮でボスと戦う直前になんだか雰囲気が変わりましたよね」
「そうかな?そんなことはないと思うけど・・・」
「それにぼんやりしていたと思ったら私を見たときになんだか悲しそうな目をしてました」
・・・本当に彼女は俺のことをよく見ているな。
だがまだ彼女に話すことはできない。
もっと俺が強くならないと。
「気のせいだよ。多分ミーナも疲れてたんだ」
「そうでしょうか・・・?」
疑いは晴れないと思うがこれだけは譲れない。
「さて、そろそろ出ようか」
そう言って席を立つ
「あっ、ちょっと待ってください!アルトさん!」
そうして俺達は宿屋に戻り、明日以降の行動をどうするか相談したあと休むことにした。
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ミーナ 寝室にて
「絶対におかしいですよね・・・」
私はアルトさんは絶対に何かを隠していると思ってます。
魔法関係のことで何かあったのでしょうか。
しかしあの時私を見る目が明らかにおかしかったですよね・・・?
まるで大切なものを失った後のような・・・
それにボスとの戦いも何か変でした。
いつものアルトさんなら魔法を試すときは私に相談してから使うし、聞けば教えてくれます。
詠唱はしなくても魔法は発動させるまでに必ず何か動作があります。
今回はそれがなくて、突然岩の槍が出てきたと思えばそれだけでボスを倒してしまいました。
不自然なことが多いです。
それになんだかアルトさんが遠い存在になってしまったような・・・?
それはなんだかとても悲しいことだと思いました。
アルトさんのために私も何かできることがしたいと思うのに、あの人は一人でもどうにかなるくらいの力があります。
私は足手まといであったとしてもまだまだ彼の役には立てない。
「私は必要ないのでしょうか・・・?」
不安になります。
いつか彼においていかれるのではないか。
私は彼のように戦う力があるわけじゃない。
それでも彼と一緒にいたいと思います。
同時に彼の足を引っ張ってしまうとも考えます。
私はいったいどうすれば良いのでしょうか・・・?
第2章完結!
第3章についてはプロット作成の途中ですのでもしかすると更新の期間があいてしまうかもしれません。
これからも『時空魔導士の魔法研究』をよろしくお願いします!