あとがき
異世界で生まれ変わった男を最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。
マイナー小説のスピンオフ作品であるにもかかわらず、予想以上の読者の方に読んでいただいた事に、作者は心から感謝しています。
もし最後まで読まれて、中途半端に感じられたのなら申し訳ありませんが、青年編までの投稿をもって、この物語は完結扱いにしたいと考えています。
今後、成人編を投稿する予定も、ルミネシア世界の話を書くつもりも、今の所ありません。
しばらくは忙しいので、落ち着いたら違う話を考えて、投稿したいとは思っています。
今まで、作者のつたない物語に付き合って下さった皆様に、くりかえし最大の感謝を申し述べます。
本当に、ありがとうございました。
以下に、作品の解説や裏話や作者の言い訳を書きますが、かなり勝手な事も書いていますので、お気を悪くされる方がいるかもしれません。
それでも宜しければ、読んでみてください。
繰り返しですが、この話を作る上で、作者が考えていた事の一部をこれから書きます。
ご自身の感想を大切にされたい方は、読まない方がいいかもしれません。
話は、プレプロローグの時点に戻ります。
プレプロローグ自体が一つの作品として完結しているので、『異世界で孤児になった男』のスピンオフ作品としては、設定を練り直す必要があります。
まず、今作の主人公比留間健一は、元作の主人公黒部義人と比較すると、かなり対照的な人物です。
異世界ルミネシアに来た経緯、日本人としての生い立ちや人生の結果、性格や年齢や考え方、そして、生まれ変わった後の立場も明確に違います。
これらは、プレプロローグの時点では、意図して書いたつもりはありません。
その後、ケン=マッケンジーが前世の不完全な記憶を持ってしまった事も、家庭円満な家に生まれたのも、あまりにも生前が気の毒だったので、作者の救済措置の意味が強かったと思います。
これは作者の考えですが、人が人に生まれ変わる場合でも、実感のともなった前世の記憶なんて、リアルな設定を突きつめると難しいと思います。
はっきり言って、普通の精神の持ち主ならば、自我が混同するか崩壊して、心身のバランスを崩した結果、発狂する可能性が高いんじゃないでしょうか?
ケンがまだらで実感のともなわない記憶を持った事は、少し幸運だと思ったから、その代わりに彼の能力は制限しました。
並の人間族より、少し上という感じでしょうか?
一方ヨシト=ウッドヤットは、前世日本では、人生の成功者と言える立場でした。
それを管理者たちの都合で、半強制的に生きたまま異世界に飛ばされたので、人としての最高の能力と最高の環境を与えられました。
全世界で唯一彼にだけは、女神様のあからさまな贔屓も入っています。
その代わり、孤児という、どうにもならない宿命を背負いました。
更に人間族だというのに、簡単には黒部義人の意識が捨てられないので、彼は苦悩します。
どちらが幸せかというのは、個人の価値観にもよりますが、双方の主人公とも幸福になれる資質は持っています。
失う物があれば、それと同等に得る物もある。逆もまた真なり。
自らの行いは、良しにつけ悪しきにつけ、必ず自らに跳ね返って来る。
行動を起こさない人物は、良しにつけ悪しきにつけ、物語は紡げない。
これらは、元作も合わせた2つの物語の裏テーマでもあります。
次に必要なのは、異世界人ケン=マッケンジーのキャラクター作りです。
ヨシトとは違い、彼は転生していますので、比留間健一とは別人格になるべきだと思いました。
ですが魂は同一なので、馬鹿な所を強調して、頑固な点と矛盾する性格はそのまま残しました。
こうして、努力する凡人、我がままで一途な熱血馬鹿、人間族ケン=マッケンジーが誕生した訳です。
2人の主人公の対比を鮮明にする為に、ケンを獣人族にする事も考えましたが、ヨシトと出会う機会が制限されるだろうと思い、結局、人間族に設定しました。
これは、結果的に成功したと考えています。
当初から、ヨシトの登場は考えていましたので、新旧の主人公達をある意味で対等に絡ますには、種族間の差は邪魔になるだけで、差別問題を取り上げると主題がぶれてしまう可能性がありましたから。
そうと決まれば、2人を繋ぐ人物を考える必要が出て来ます。
ケンの姉のマリに、その大役を任せるかどうかは迷いましたが、元々彼女は、ケンとの対比の為にかなり優秀な人物にするつもりだったので、更に頑張って成長してもらいました。
でも、最悪の場合を考えて、水精族のノッコさんの存在も設定しました。
ヨシトもマリも、少々癖の強い人物ですから、恋人同士にする自信が無かったのです。
要するに、この話がどうなるのか、作者自身も決めていなかったんです。
漠然とした大筋を決めたのは、第10話の閑話の辺りだったと思いますが、無理にキャラクター達を動かすよりも、それぞれの気持ちを大切にしたかったんです。
ただでさえ流されやすい作者にとっては、これらはかなり実験的な試みだったんですが、おかげでマリの祖母、エマという存在を思い付いたのが収穫でした。
次に、ケンの恋人リエリス=キュンメに付いてです。
青年編のテーマの一つを恋愛にする事だけは決めていたので、彼女の設定には、それなりに気を遣いました。
特に意味も無く、主人公の能力に引かれるような、つまらない女性にだけはしたくなかったので、かなり優秀な名家のお嬢様にしてみました。
ですが、当初からケンを好きになる明確な理由だけは持たせたつもりです。
くさい言い方をするなら、彼女は彼の能力や資産に惚れた訳では無く、彼の心意気に惚れた訳です。
あまりにも高めの女性だったので、2人をくっ付けるには苦労しましたが、その分だけ楽しかったです。
実際、本気で付き合うとすれば、彼女は少々困った人ですが、それほど悪い子ではありません。
ヒロインを少しでも魅力的に書けていたならいいんですが、それは読者の判断にお任せしたいと思います。
結局、この作品には、主人公カップルと裏主人公カップルが居る訳です。
2組とも別れてしまいましたが、100年後が楽しみだとだけ言っておきます。
次に、青年編で投稿を終了する事に付いてです。
「ケンの冒険はいよいよこれからなのに中途半端だ! 最後まで読んで損した!」と思われた読者の方、…申し訳ありません。
でも、青年編での終了は、当初、大筋を考えた時の予定通りなんです。
そして、ケンが世界を旅する事が、今作を含めた2つの作品の主題では無い事は、最後まで読んだ方には理解していただけるんじゃないでしょうか?
実はこの話は、完全に見切り発車で書き始めた上に、プロットどころか、途中までは大筋さえ決めずに書いていたので、元々キリのいい所で閉めるつもりでした。
元作の感想ページや活動報告をご覧いただいている方にはお解りでしょうが、今作は物語の構成重視というよりは、読者の方の様々な意見や、ご要望にお応えするつもりで練習の意味も含めて書き始めた訳です。
『続編かスピンオフを期待しています』、『ヨシトはあの後どうしたのか?』、『せっかくのキャラクターを生かし切れていない』、『異世界の設定が解りづらい』、『あちこちに入る説明が、物語を楽しむ上で邪魔だ』等々の意見です。
それに加えて、元作で書けなかった異世界での設定、例えば魔術やギフトについての事や人間族の子供時代や恋愛事情、精霊族の村や田舎の風景をある程度は丁寧に書いたつもりです。
すでに元作である『異世界で孤児になった男』の話数を超えていて、その点では十分じゃないかと考えています。
その為、1話ごとにプロットを切らず、心に思うままに書くという実験的な手法を最後まで使いました。
それでも何とかして話に整合性を持たせようと頑張りましたが、矛盾点やストーリーに一貫性が無いと感じられたなら、それは作者の力不足です。
こうして書いてみると、かなりいい加減な様に思えますが、物語を書く以上は、主題を明確にして書き切ったつもりです。
この話の少年編までのテーマは、主人公ケン=マッケンジーの立志と同時に、ルミネシア世界の設定の補完と、元作の主人公であるヨシト=ウッドヤットの近況報告です。
青年編のテーマは、ケンの成長と人間族の恋愛です。
そして、全てに共通するテーマは、例え異世界でも変わらないであろう、人としての価値観、…家族の愛情と個人の自己実現です。
平たくいえば、人は何のために生きるかという事です。
決して、主人公が冒険する愉快な物語を書きたかった訳ではありません。
ただし、作者の誤算だったのは、執筆途中でケンが世界を回る旅を書きたくなってしまった事です。
今思えば、もっと異世界の設定を膨らませてみたかったのかもしれません。
だからつい最近まで、青年編の後に成年編を投稿しようと思っていましたが、事情があって断念しました。
それは何かと問われれば、作者が今後しばらく忙しくなる事と、それに伴うモチベーションの低下が一番の理由です。
今は物理的に時間が足りないから、例え続ける場合でも休止扱いにするしか無いんです。
多分ですが、この話を大団円として完結させるには、少なくても後100話近くは掛かるはずですから…。
それでも、せっかくここまで書いた訳だし、時間が無いなら何とか調整して、せめて週に1度でいいから投稿しようかと真剣に考えましたが、この作品の特性と作者の性格上、それは難しいと思いました。
私にとって、この物語の執筆は、単純作業の積み重ねでは無くて、頭の中の多くの部分を異世界の設定に切り替えるという、異世界トリップそのものなんです。
しかも、私は切り替えが苦手なタイプなので、調子が出るまでの間、まとまった時間が欲しいんです。
つまり、空いた時間にバラバラに異世界物語を書き留めて、後でまとめて執筆するのは、仕事の様な作業になってしまうので、作者自身が集中出来ず、書いていて楽しくありません。
いくらなんでも、実力不足の素人の私が楽しんで書けない作品を投稿する訳にはいきません。
それならば当初の予定通り、キリのいい所で話を閉めた方がいいんじゃないかと思った訳です。
…まあ、どう言い訳しようが、楽しみに読んでくださっていた読者の方にとっては、作者が投稿しない限り、書けないのも書かないのも同じですから、心苦しい思いはあります。
結果的にケンの旅に必要な要素が、物語のあちこちに散りばめられてしまっているので、風呂敷をたたみ切れていないと、不満を感じられる読者が出てくるのも当然だと思います。
それでも、今回の場合は問題ないと、作者は考えています。
青年編終了の時点で、ケンの目的はほとんど達成されていますから。
もちろんこれは作者の勝手な言い分で違った感想もあるでしょうが、前作の主人公、ヨシト=ウッドヤットと違って、彼の人生にとって大切な物は、もう全てそろっていると思います。
人間族としての最高クラスの能力、心から解り合える親友、別れても大好きな恋人、尊敬できる師匠や命の恩人、小さい頃からの夢や将来の希望、…そして、かけがえない家族。
ですから、この時点で物語を止めたとしても、ケン=マッケンジーは幸せなんです。
今現在も、これからもずっと……。
そして、ヨシトの将来の幸せに付いても、解る人には解っていただけたはずだと、作者は考えています。
それが、少しでも読者の方々に伝わっているならば、嬉しく思います。
つらつらと勝手な事を書きましたが、しばらくして時間に余裕が出来て、モチベーションが上がれば、新作や短編を投稿したいとは思っています。
読者に見られるという意識で物語を書いていると、今までと違った視点で他の作品が見れるので、作者は投稿した事を後悔していませんから。
最後に、少しでもこの話に興味を持った人がいたとしたら、物語を書く事をお勧めします。
特に作者のお勧めは、2次創作では無くて、オリジナルの新作投稿です。
PCとネット環境さえあれば、投稿するのにも、お金なんて掛かりません。
ちょっぴり大変ですが、きっと新しい世界が見えてくるはずです。
アインシュタインの言葉に『想像力は知識よりも大切だ。知識には限界があるが、想像力は世界を包み込む』とあります。
想像力で世界に影響を与える事は、偉人くらいしか出来ないでしょうが、小説を書いて世界を造る事なら、凡人の我々にでも出来ます。
それはきっと、あなたの人生を豊かにしてくれると作者は思っています。
以上、最後まで自分勝手な事を書きましたが、今までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
PUPU




