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汚物の記憶

小学校高学年の時の担任は、大企業の社長の次男だった。


母親たちはそういう情報をどこで入手するのかわからないが、そのことは母親たちをときめかせるネタだったようだ。


めったに家にいないうちの母までも、それ以来先生の名前をよく出すようになった。


母は役員になったとかで、「今日誰と飲んできたと思う〜?」と、先生と飲んできたことをわたしに自慢気に話した。



ある時、算数の授業の終わりが迫っていた時にノートをとっていると、鈴木という隣の席の男子が邪魔してきた。

鈴木はその頃、何かにつけてわたしに絡んできて、鬱陶しい存在だった。

ノートを最後まで書けていない段階でチャイムが鳴り、残りの部分を慌てて書いてしまおうとコンパスを用意してたら、鈴木がノートを引ったくろうとして、コンパスが鈴木の手に刺さった。


鈴木は「人殺し!」と言って泣いた。

鈴木といつもつるんでる男子が、先生にちくりに行った。


戻ってきた担任はわたしの名前を呼び、「放課後、教室に残りなさい」と言った。



放課後、言われた通り教室に残っていると、担任が入ってきて、教室の前と後ろの鍵を閉めた。


先生は先生用の机のイスに座り、「何でそんなことしたんだ?」と言った。

わたしは、「鈴木が手を出してきただけです」と言った。


先生は、わたしを見て、「その下は体育着か?」と聞いた。

わたしは頷いた。


先生は腕を組み、「脱ぎなさい」と言った。

体育着になれという意味かと思ったわたしは、私服を脱いで、体育着になった。


すると先生が、「それもだ」と言った。

体育着も脱げという意味だと気付くのに、数秒かかったと思う。

先生が立ち上がり、手伝うように短パンをおろした。

それでわたしは、ようやくその意味を悟った。


瞬間、小さい時の、まさみちゃんのお父さんにされたことの記憶が生々しく蘇った。

自分が、汚いものになっていく感覚。

それと同じ絶望が、また。


先生はわたしを膝の上に座らせ、触りながら言った。

「どんな気持ちだ。嫌か?」

わたしは頷く。

すると先生は、あらかじめ決めていた落としどころのように言った。

「鈴木も同じくらい嫌な思いをしたんだ」と。

そうして、自分の歪んだ性欲を、まるで正義の制裁のように変換した。


みんな、汚い。

わたしは、もっと汚い。

小さなあの時から、わたしはずっと、汚いままだった。

それを改めて実感した。

わたしは、汚物だった。



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