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第五十八話 最後の大一番、大将戦、フローチェ対魔王、序

 アリマ関は強かったわね。

 魔王軍の陣営でみんながアリマ関の健闘を称えているわ。

 最後の最後、紙一重の所で踏ん張れるか踏ん張れないかが大関クラスの勝負なのよね。

 でも、大丈夫、リジー王子の体はまだまだ大きくなるし、どんどん番付を上げて行く事でしょう。

 いつかきっと横綱に成れる日も来るから心配はいらないわよ。


 さて、魔王さんとの一戦。

 星は二対二、この勝負を制した方が団体戦でも勝ちだわ。


 魔導列車で戦った時は惜しくも引き分けだったから、今回は綺麗に勝ちたいわね。

 なんとしてでも第三段階の変身を引き出して、その上で勝つわ。

 私たちが負けると、関係の無いエルフの森共和国の首都が魔王軍に乗っ取られるから。

 それは申し訳ないわ。

 居なくなったワン太の思い出にかけても勝たなくては。


「フローチェ」

「はい?」

「肩の力を抜こう」


 そう言うとリジー王子は華のように笑った。

 ああ、そうだわ、大事な事を忘れるところだった。

 勝利にこだわると負けるわ。

 勝敗は時の運だし、天が決める物よ。

 私はただ相撲を楽しめば良いのだわ。


「ありがとうございます、リジー王子」

「がんばって、フローチェ」

「はいっ」


 気負いが全部抜けたわ。

 団体戦なのだから一人で戦っているわけじゃないのよ。

 大事な事を王子が教えてくださったわ。


 ハイヒールで踏みしめて土俵に上がる。

 この、公の場ではヒールが脱げない仕様はなんとかならないかしら。

 これでも自由に土俵で戦えるけど、お相撲さんならば裸足で戦いたいわよね。

 まあ仕様なので仕方が無いのだけれど。


 魔王さんは今日も鍛え上げた筋肉に派手なラメ入り廻し一丁で勇ましいわね。

 エアハルトみたいな息子が居るのに姿も若々しいわね。

 上級魔族は長命種なのかしらね。


「いよう、今日はおまえさんを倒して魔界相撲が最強って天下に示してやるからな」

「魔界相撲は強いわ、アリマ関を見ればわかるわよ。そして、魔王さんも強いわよ」

「カカカ、ったく、煽りが効かねえのはつまんねえな」

「そんな事をする必要も無いのに、趣味が悪いわよ」


 魔王さんは片頬で笑うと、遠い目をした。


「相撲は良いよな、短い戦闘で力の差がはっきりわかってきっぱりしてらあ」

「本当に、凄いわね、神事にして興行、聖にして俗、懐が深いわ」

「俺もよ、エアハルトが倒されたって聞いて、相撲に興味を持ってな、ククリをアリアカに送り込んだりして調べてたのよ」

「ええ、知っていたわ」

「で、わかった事で魔界で色々やってたわけだ。誰か力自慢をつのって、魔王軍で力士を作って、おまえらにぶつけてやろうかってな」


 魔王軍が相撲を偵察に来ていたのは知っていたけど、ここまで本格的にお相撲しているとは思わなかったわね。

 どうやってバルハラの相撲協会と連絡を取ったのかしら。


「色々調べてな、ルールや技とか試してみたのよ。で、一番はまっちまったのが俺でな。いやー、楽しい楽しい、強くなるのも楽しいし、土俵の上での駆け引きとか、意地の張り合いとかな。軍の大将軍のアリマと色々研究してたのよ」

「アリマ関も初期からのお相撲さんなのね」

「ああ、あいつはああ見えて、粗暴な魔界一の荒くれ者だったんだが、相撲をやることによって、なんというか、人格の深みみたいのが出来てきてな、今じゃ大関よ」


 お相撲は人生だから、そういう事もあるわね。


「軍の中で大会とかしてな、魔物のみんなは相撲に夢中だ。そうしたら半透明な連中がやってきてな、『お相撲をもっと知りたいですか』と来たもんだ」

「あら、バルハラの皆さんの方から行ったのですか」

『はは、そうなりますね』


 グレイ審判が苦笑しながら言った。


「バルハラ相撲協会が色々教えてくれてな。本格的な相撲と相撲興行がはじまってよ。今や魔界全土が相撲に熱狂してる」


 魔王さんはきゅっと笑った。


「俺はな、相撲を知って良かったって思うんだ。魔物の連中は色々な形、色々な風習があってさ、相互理解がしにくいんだよ。同じ悪魔デーモン族でも、いろいろな種族がいてな、喧嘩ばっかりでなかなか一枚板にはなれねえのよ」


 でしょうね、魔界相撲の選手を見ても、種族や形が色々すぎるわ。


「そこへ相撲って共通の規格ができてな、対戦相手の事は調べないといけねえ、得意な攻撃や、それのしのぎ方とか考えなきゃならなくてな、魔物の相互理解が深まるし、相撲の心意気に感化されて、良い感じの漢や女になるし、ルールを守るとはどういう事か、わがままで暴れるのは馬鹿のやることだって、皆が周知してな、良い事ずくめだ」

「それは素敵なお話ね」

「だからさ、おまえさんには感謝してるんだぜ、フローチェ横綱」

「私のお手柄ではないわ、相撲が素晴らしいのよ」


 魔王さんは深くうなずいた。


「それでも、おまえさんにありがとうなんだぜ。感謝してる」

「どういたしまして」


 そして魔王さんはすごみのある笑みを浮かべた。


「感謝の気持ちを込めて、フローチェ、お前をここで倒すっ!」

「やってみなさい、魔王横綱っ!!」


 私は殺気を込めて獰猛な笑顔で彼を睨んだ。

 空間が歪むぐらいの殺気がお互いの間に張り詰めた。


 気合い十分!

 まったなしだわっ!!

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― 新着の感想 ―
[一言] >居なくなったワン太 原型を留めないレベルでチャラくなっただけだでで成れの果てはまだ居るから
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