51話 ヴァンパイアと情報操作
新たな街作りとダンジョン作成に忙しい中。
今日は、日々拡大し強化されていく、本拠地のダンジョンに向かう。
そのダンジョンの中でも、一際異彩を放つフロアがある――
漆黒のお城が建設され、まさにその様子は『魔王城』とでも言わんばかりだ。
「アルデバランを呼んでくれ」
子供のような小さな人物が、堂々と城の中に入ってきて、最初に目に付いた吸血鬼へと偉そうに呼びかける。
「ご主人様!? は、はいっ。すぐに呼んでまいります」
主人へと一礼し、慌てて駆け出していく吸血鬼。突然の来訪に、驚いているようだ――
「いらっしゃいませ。我らが主人、レンディ様」
「今日は、ヴァンパイア族にとっても、重要な話しがあってきた。みんなを集めてくれ」
突然の主人の来訪にも、冷静さを保ち、優雅に一礼をしながら挨拶をする、黒髪の人物。
ダンジョンのサブコアが成長すると、メインとなるコアの力も増し、守護者を新たに任命する事が出来るようになった。
そして、最近になって新たに守護者として追加された者が居る――
ヴァンパイアの『アルデバラン』だ。
名前の由来は……闇夜に輝く、おうし座で最も明るい恒星。
その外見は、人間そっくりな姿形。スラリとした体形と黒髪。目は、少し赤み掛かった色をしている。執事のセバスと似た雰囲気があるが、口調が少しキザっぽい感じがしてしまうのが、不思議な所だ。
おとぎ話しや伝説で言われているのとは違い、にんにく・聖水・十字架といった弱点はない。しかし、太陽の光が強い場所では能力が落ち、1ヶ月に1度は血の摂取をしないと弱っていくようだ。更に、血の摂取中だったり、血が足りない時は……目が充血して赤く輝く。
「アルデバラン。訓練の方は順調か?」
「レンディ様に言われたメニューはもちろん、課題をクリアする者も増えてきています」
詳しく訓練の様子を聞いて、思案するマスター。
ヴァンパイア達には、いくつかの課題を出している。それは――
・レベル30以上
・戦闘用スキル5以上
・一般常識などの知識と、語学の習得
・会話の上位訓練。交渉・騙す技術の習得
騙す技術については、村人役と狼に分かれて、会話で騙し合いをするゲームをしてもらっている。
「戦闘能力は必要だが、重要になるのは……知識と会話の技術だ。まかせたぞ」
「吾輩におまかせください」
ドッペルゲンガーと同じ様に、人の中でも生活していける種族として選んだのが、ヴァンパイア。
すでにその名前は忘れ去られており、伝説とまで言われるほど。中央大陸では、ほとんど知られていないようだ。潜入する事になるこちらにとっては、好都合な人選だ。
漆黒のお城にある、大広間。
「我らが主人、レンディ様よりお話しがある。心して聞くように!」
アルデバランの声が響く。ズラリと片膝をついて勢揃いしたのは、ヴァンパイア達が30名程。日々増えているとはいえ、新人達も多い。
「みんなに集まってもらったのは、新たに情報を扱う部隊を作る事にした。表舞台はドッペルゲンガー達の商人。そして、裏では密かにヴァンパイア達に動いてもらう事になる……」
闇の中で密かに活動する『情報機関』を作る事を宣言する。
これからは、きれい事だけではどうしようも出来ない事もある。情報を集めるだけではなく、その情報を使って、世論や国を動かしていく。情報操作を得意とした部隊が、ヴァンパイアの『情報機関』だ。
「お前たちには、いざとなれば……人間達を殺すための『暗殺者』として――『汚れ仕事』をまかせる事もある。大変だろうが、よろしく頼むぞ!」
「我らが忠誠は、主人の為に。如何なるご命令でも、果たしてみせましょう!」
心臓ともいえる魔核に手を置き、優雅に一礼をするヴァンパイア達。
過去の歴史を見ても、今までには多くの戦争があった。人間と付き合っていくなら、対立して争い事となる前に、事前に手を打てるようにしておきたい。情報操作一つで、戦争を回避出来るなら……それだけでも、この部隊を作った意味がある――
ドッペルゲンガー達と協力しあって、上手くいけばいいなぁ。
重要視している、人・物・金・情報。
まだまだ人材となる者達が少ないが、国を作るための基礎は、徐々に出来上がってきつつある。
ダンジョンマスターとしての、本来の役割である……ダンジョンの拡張と強化も重要だが――みんなが落ち着いて暮らせる場所を作りたい。その思いを胸に秘めながら、今は出来る事を一つずつこなしていく。
「ふっふっふ。本当は……俺が狼だぞぉ~。ガウガウッ~!!」
「わぅ!? 騙していたなんて、ズルイですっ!」
「むむっ。吾輩も、まだまだ修行が足りぬか……」
話し合いも終わり、ヴァンパイア達を含めて、和やかに騙し合いゲームを楽しむマスター達。
忙しい中での一時の休息。
いったい、いつになれば……ゆっくりと落ち着ける日々になるのか――
新たに作っている街とダンジョンへ、人が押し寄せて来る事になるのは、もう少し先の事となる。




