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SCARLET  作者: 九条 隼
俺達天才サイキッカー!:超能力者達の話
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00-ある話




 床から天井まで本を並べたその部屋に、叫び声が響く。


「だから、勝手に、持ち出すなと! 言ってるでしょうが!」

「こらこら、図書室は静かにしないとダメだよ」

「ウチは図書室じゃねーんだよ!」

「そうだったっけ、わはは」

 艶やかな黒髪を後ろに束ねた中性的な相貌の女は盛大に溜息をついて、肩を落とした。

 対して、学生服を着た赤い髪の少女は、机に腰掛けファイルを開いている。


「いい加減にしてくださいよ」

「まあまあ。最近年食ったね、和さん」

 ファイルを閉じて、少女は笑う。

「だれのせいだと……」

「お店を拡大したのは自分でしょ」

「それは、そう、ですけど……」

「あたしのことをスカウトしたのも、自分だよ」

「それは、まあ……先代に勧められたのもありますけどね!」

 恨みがましく女が睨むと、少女は笑った。

「それはさておき。面倒でしょ、この仕事」

「……それは、受けた時から分かってましたよ」

「なのに受けたの? いい子だね」

 女が眉を寄せて嫌がる。


「皮肉やめてくれます?」

「率直な感想だってば。みんなそれ言うね」

 女が首を傾げる。


「みんな?」

 少女は頷いた。顔を上げた時にはすでに、表情が抜け落ちていた。


「如月ちゃん」


「……」


 黙り込んだ女に、表情のない少女が並ぶ。少し高い位置にある女の顔に指先を伸ばした。少女らしく細くまろい指先が女の怜悧な相貌を優しくなぞる。


「そんな顔しないで。人が消えるのをみたのは、二度目?」


 女は何も言えず、暫く目を伏せていた。

 目を瞑れば、少し前まで穏やかに笑う、困ったように身を縮こまらせる女がいる。やめなさいと言いながら、気を付けなさいと言いながら、そこまで深刻なものが迫っているなんて気付かなかった。事態を軽視していたのは彼女ではない。彼女を引き入れた自分に他ならない。こうなる前に、何か手があったはずで。

 それから、もう一人。この少女と引き合わせた、泡のように美しく消えていった人。自分勝手でワガママな、あの美しい人も、また。


「……そうですよ。先代が、初めてですから」

「そう、じゃあまだまだ慣れないね」

「何回だって慣れません」

「慣れるよ、いつかはね」

 さらりと言った少女に、女が言葉を詰まらせた。

「……体験談ですか?」

「どいつもこいつも同じことを」

 ふう、と態とらしくため息をつく少女に、女は肩を竦めた。


「すみません、つい。ねえ、……赤桐さん、これからのこと、それから今までのことも、教えてもらってもいいですか」

「その呼び方やめてくれるならね。司令塔が示しつかないでしょ」

「……はい」

「悲しかった?」

「……当たり前でしょう、だって、おれが、彼女を誘ったんですから」

 語尾を震わせた女に、少女は君は優しいねと声をかける。

「やめてください。優しいのは、あなただ」

「冗談でしょ、マジやめて」

 心底嫌そうに顔を歪めた少女が身を震わせた。


「本心です、貴方がいないと俺たちはきっと駄目だ」

「それは困る」

 そう言って、少女はふと、無表情ながらほんの少しだけ、目を細める。


「ねえ、きみ、早く強くなってね。ちゃんと待ってる。ちゃんと教えてあげるから」


 ぽかんと少女を見つめて、女は次第に顔を歪めていく。

 薄い唇を震わせて、ぐっと噛んで俯いた。


「急に、優しくするの、やめてくださいよ。しばらく上にあがれないじゃないですか……」

「店長さんは大変だね、お姉さんがよしよししてあげる」

 少女が緩く抱き寄せると、女はそのまま抱きついた。


「ヨッシャありがとうございます!!!!」

「ははは現金だな〜」




 表情のない少女は、そっと女の涙を払う。


 これはあの超能力者だけの話ではない。






 罪人の新たな始まりの話。期待の話。


 少女にできたかけがえのない友人の話。変化の話。


 消えた彼女の祈りの話。愛の話。


 少女達の忘れられない話。悲しみの話。






 そして、未だ店主として模索をする女の、成長の話だ。







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