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「止まって!」


 ラパは急停止すると、人間で言うなら胡散臭そうな雰囲気を醸し出して鼻をスンスンしている。

 止まってはみたものの、言う事を聞くべきか吟味しているようだった。


「マスターの命に従え、テイム・ラパ」


 数秒二人が睨み合った後、フィルがほっとした表情をした。

 どうやらテイムできたようだ。


「はぁ。できたあ」


「よかったな。どんな個体だ?」


「うーんと……ラパとしては平均的かな……でも毒性がちょっと強いですね。噛まれなくてよかった」


 その後ラパの気配はあるものの一匹テイムしたお陰か出てくるようなことはなく、一気に草原を抜けると突然森林地帯が広がった。


「このどこかにいるはずだ。遠巻きに見て何もなさそうなら引き上げよう。たまにドライアドが紛れてるから気を付けて。あと隊長がいるとただの可愛い女の子なアルラウネ。あれもえげつないことするから離れないでよ」


「はい…」


 しかし歩き出して数分、遠くからすぐに何かの音が聞こえて来た。


「音がするな……伐採の音か? いやそれにしては変だな……斬撃の方が近いか?」


 ハーキスの表情が引き締まる。

 もしかしたら駐屯兵は本当に何かトラブルを起こしているかもしれない。

 彼はフィルに絶対離れるなともう一度念を押すと、音の方に慎重に、だけど素早く歩みを進めた。

 少しずつ音が近づくにつれ、そこに悲鳴や怒号が混ざっていることに気づいた。


「やばいな……何かと戦ってるよ。しかもかなりの数」


 さらに近づくと、伐採したばかりの瑞々しい切株と倒木が現れ、その奥で何かと乱戦状態の駐屯兵を見つけた。


「嘘だろ……ドライアドの群れか!? しかも様子が変だ。フィル、絶対あっちには出ないで。警戒してより安全な所へ」


「ハーキスさんは?」


「依頼なんてなくても目の前でこんな状態ほっとくことはできないだろ?」


 来るまで散々ごねていたのに、この人も根は命を尊ぶ救助隊なのだとフィルは思った。

 自分が前に出ては大迷惑になるのは分かっているので、素直にそこに留まる。


「ハーキスさん、気を付けて!」


 彼はもうハルヴァードを構え走り出していた。


「なんだどうした?」


 近くでドライアドの枝で刺されそうになっていた兵士を助けると事情を聞く。

 その間にも攻撃は止まず、斬られた枝を引っ込めると別の枝で串刺しにしようと狙ってくる。


「わ、わからない…急に、急に暴れてこの数で…」


「自称勇者はどうしたんだよ!」


「あ、あちらで戦って…」


 恐怖で戦意を失っている兵が指さした方を見ると、明らかに装備の違う若い男がいた。

 煌びやかな鎧とマントを纏ったその男が王子で勇者だという人物だろう。

 彼は手にしたロングソードで次々襲い来る枝を切り払っている。

 本物の勇者かはわからないが、雑兵よりは腕がたつらしかった。


「戦えないやつは離脱しろ! いるだけ迷惑だ!」


 ハーキスが叫びながらドライアドを斬っていく。

 だがおかしい。数が多いのはわかるが、切ってもなぜか怯まない。

 葉の一枚になっても戦ってきそうな勢いで次から次へと枝を伸ばし、振り回し、突き刺してくる。


 腰を抜かしている雑兵にはっぱをかけ立たせると、草原の方へ行くよう逃がしていった。

 既に地面に伏している武装していない者は恐らく連れて来られた木こりだろう。

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