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 カイルがリコとの雪辱戦に勝利した頃。

 人間界の救助隊本部では、ハーキスが渋い顔をしていた。


 ややこしい連中がよりによってカイルのいない時に来た。

 カイルはいつも「めんどくせぇ」と言いつつも飄々とトラブルを片付けていくので、正直自分が当事者になると「やりたくない」の一言に尽きてしまう。飄々と解決とまではいかない。


「絶対何かやらかすって。あいつらダンジョン慣れしてないだろ? ギルドの話も聞かねえ、救助の申請もして行かねえ。間違いない、なんかやるね」


「えー。俺たち申請されてないし関係なくね?」


「隊長もそう言うか?」


「言うけど、実際は動くだろうね」


「お前は動かないのかよ」


「うぇえ、面倒くせえ」


 ハーキスがこれほど嫌がる相手とは、大陸ルーシズ王国の駐屯兵のことだ。


 そろそろ昼飯でもと思った時、カランと扉を開けて入って来たのはお客ではなく冒険者ギルドの職員だった。

 冒険者ギルドと救助隊はよくダンジョンの内部構造の情報交換等をしているのでお互いに出入りが多い。

 

 今日来た職員が持ってきた話は、「駐屯兵が勝手にダンジョン内の樹木伐採隊を送り込んできた」だった。


 王国は駐屯兵に始まり、大規模採掘隊、安全確保のための討伐……という名目の素材採取隊、そして誰も頼んでいない警備隊……そんなものを次々送り込んでは、自治領を宣言するための既成作りに勤しんでいる。


 フィルが成り損ないと出くわしたのも固定部屋から彼を追い出した駐屯兵のせいだ。


 本国の命を受けた駐屯兵は王宮拡張のための資材としてダンジョン産の木材が欲しいらしく、兵士だけでなく木こりを大量に雇い大した知識も装備もないままダンジョンに入って行ってしまったらしい。


 一般の冒険者や商人を端へ追いやったのは気に喰わないが、だからと言って中で集団迷子や、全滅なんてことになったら流石に困る。

 なので冒険者ギルドは普通有料で行うルーキー向けのレクチャーを無料で駐屯兵にしようとした。


 だがプライドの高い彼らは当然聞く耳を持たず、慣れないダンジョンへずかずかと踏み込んで行ったらしい。

 兵は本国でもそれなりの強さを誇る騎士や戦士から編成されているらしく、彼らには自信があったのだろう。


 ダンジョンの外ならそれでもいいが、中は勝手が違う。

 そもそも予備知識もないのなら、迷子必至なのだが。


「で? 俺たちどうすりゃいいのよ」


「一応見回りに行ってくれないかなーって」


「そっちでもそういう依頼出せばいいだろう。やだよー。駐屯兵絡みたくないよー」


「そりゃ出したよ。でもこんなのに正直金使いたくないし、冒険者も駐屯兵に関わりたがらないし、誰も受注しないのよ」


「こっちだってタダじゃねーっつの」


「我々は慈善事業じゃないのにゃ~。でもカイル隊長ならきっとふらっと行って様子見てくるのにゃ~。そして帰りについでにレア素材持って帰って来るのが隊長にゃね。出来る男なのにゃ~」


「こういうのはどうかしら? フィル君の訓練」


「はぁ……。でも何かトラブってたとして、俺たちの言う事聞かないよ? そっちはどうするつもりだったの?」


「様子伺って、ヤバそうなら採掘のフリして助けて恩でも売っておこうかと」


「フィル、お前どうする?」


 突然自分に話が振られ、屋台で買ってきた昼食を応接セットで食べていたフィルは思いっきりむせた。


「ゲホッ……僕物凄い新人なんですけど? というか見習いですけど!」


「いや、訓練したいかどうか」


「訓練ならしたいです!」


「しゃーない、訓練てことでちょっと行ってくるよ」


「レア資源見つければ苦労もお釣りが来るわ」


「そんな簡単にないからレアって言うんだろ……。ちょい十五分時間ちょうだい。飯食ってくる」


 ギルド職員が慌ただしく出ていくハーキスに「頼んだぞ!」と声をかけると、「お前とこも行けよ!」と叫ばれた。


 そして十五分後。

 よく行く屋台で超特急で昼飯をかきこんだハーキスは、念のため救助道具を装備し、自分用の救難信号オーブを持った。愛用のハルヴァードを背負うとフィルの装備も確認した。

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