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「そいつらはリコの友達なのか?」


「さあ…私から見たらリコ様が一線を引いているように見えたわね。でも側近の方が言うには、村に来る時が一番表情が和らいでいたそうよ。でも今日はちょっと安心したわ」


「何がだ?」


「だって村に来た時よりも今日の方がずっと肩の力抜けているみたいだったもの」


「そりゃ酔っぱらってるからだろう」


「そう? 酔うって、気を許した相手の前じゃないとできなくない? ってあなたには無縁そうな話ね」


 カイルは苦笑して「まあな」と言うと勘定を払った。


「さて、真昼間から酔っ払いを背負って帰るか。エルヴィンにもの凄い怒られそうだな」


「あなたはリコ様の側近じゃないのね。人間よね?」


「俺は仲間みたいなもんだ。リコはどう思ってるのか知らんがな。明日か明後日には人間界に戻る予定だ」


「そうなの。リコ様は?」


「魔力が回復したらまた人間界だろうな」


「リコ様は凛としているけど、寂しがりよ。人間界でどう過ごしているかはわからないけど、きちんとフォローしてあげてね」


「してるつもりだ。届かねえけどな」


 手に握られたナッツとレーズンをテーブルに置くと、起きそうにないリコを背負った。

 女将に「それじゃあ意味ないわよ」と言われ、「全くだ」と返す。


「機会があれば次はきちんと食事に来たいな。じゃあ世話になった」


「またリコ様連れて来てちょうだいね」


 荷物ならば馬の背に放り投げたいところだが、流石にリコをそうするわけにもいかない。

 カイルは彼女を担いだまま馬の手綱を引いた。

 周囲の視線が刺さるが仕方ない。


「おいリコ、せめて馬に乗ってくれ」


「んー……あとで」


「なんだよ後でって。城に着くまでに起きろよ。じゃないと俺がエルヴィンに殺される」


「かいるつよい、しなない」


「そりゃどうも。話す余裕あるなら馬に乗れ」


「ねてる」


「起きてるだろ」


「ここがいい」


「光栄なこって」


 町の中心の花壇広場に差し掛かると、ゴブリンとオークの子供が遊んでいた。

 リコがだらしなく背負われているのを見て笑っている。


「魔王様おんぶ!」


「人間におんぶされてる!」


「魔王様の威厳の欠片もねぇな」


 リコはカイルの背中から自分を指差す子供たちをぼんやり眺めた。

 

「かいるはこいびと いないのか」


「なんだよ唐突だな。いるように思えるか?」


「百人かゼロ人いそう」


「それ遊んでるかぼっちかってことだろ」


 背中のリコはゆっくり流れる景色をしばらく眺めた後、「いいことかんがえた」と言った。


「酔っ払いの考えってのは大体いいことじゃない」


「こあがずっと まおうをうまないから、私がうむ」


「アホか。魔王も勇者も遺伝や血統じゃないだろ」


「父おやがゆうしゃならもしかしたら生まれるかもしれないだろう……」


 カイルの首に回すリコの手にきゅっと力が入る。拗ねたような言い方をした彼女は背中にいて、一体どんな顔でそんな台詞を言ったのかは分からなかった。

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