3
キャス:猫の獣人。通常獣人は真層界に住むが、キャスとニーナは子供の頃から人間界にいる。猫らしくにゃ~にゃ~言う、受付だけど身体能力の高い、人懐っこいお姉さん。
ニーナ:妖艶と言う言葉がぴったりのカラスの獣人。真っ赤な唇が印象的。キャスと二人で受付嬢をする、クールビューティータイプのお姐さん。
「欲しいのあれば持ってっていいぞ」
「カイル」
「よう、久しぶりだな。変わんないな、お前は」
「お前は変わったな。なんだその汚い髭は」
リコがカイルの無精髭を見て嫌そうな顔をする。
彼はそれを撫でながら答えた。
「ワイルドだろ? どうした急に? 俺に会いたくなったか?」
「そんな理由では来ない」
「なんだつれないな。俺は会えて嬉しいぞ」
人間の時間はエルフの時間とは違う。
自分よりずっと老いるのが早いカイルは中身は15年前とそんなに変わらないようだった。
人間と人生を歩むスピードが違うのは長命種の宿命だが、変わらぬ部分を見つけたリコは、口調とは裏腹に心では安堵したらしかった。
「……再会が嬉しくないわけではない」
カイルはそれを聞いて嬉しそうに目を細めた。
対してエルフはあまり感情を前に出そうとはしない。特にリコは喜怒哀楽の中で喜び、楽しみの表情が薄い。
相変わらずお前は素直に笑うのだな。
その緑青色の瞳をまたこうして近くで見る事になるとは。
「にゃ~。二人とも立ち話してないで応接室か、どっか洒落たカフェでも行くにゃ~」
「この島のどこに洒落たカフェがあるんだよ」
来客対応の終わった猫の獣人が横からにゅっと割って入った。
ついでにリコを遠慮なく、上から下まで見ている。
「どっかで会ったにゃ~?」
「ない」
「まあキャスとニーナが会ったことがある気がするのは当たり前かもな」
カイルが意味有り気に言うもキャスは意味が分からない顔をしている。
「どういうことにゃ? 初めまして。キャスにゃ~。私は真層界には行ったことにゃいからよくわからないにゃ~」
「リコだ」
「隊長は積もる話があるにゃ~? ここじゃまずいにゃ?」
「シェアハウスの方のリビング使うか。おいハーキス、あっちにいるからなんかあったら呼べ」
「あいよ。ちゃんとお茶の一杯くらい出せよ」
カイルは「へいへい」と言うとリコを連れ一度本部を出た。
ちなみに本部とはついているが、支部があるわけではない。
救助隊の建物の裏手に回り、そこにある大きめの戸建へ入る。
隊員のためのシェアハウスで、現在隊員四名が使用中。最大八人でシェアできるというのに埋まったことがない。この四名には受付の二人も含むので、実動隊はまだまだ募集中。
ちなみに夜間対応するカイルは本部内に自分の部屋を持っているのでシェアハウスの方に部屋がない。使うとしたらせいぜいキッチンや風呂等の共有部分だ。
カイルはそんな共有部分のリビングに案内すると、やかんを火にかけた。