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「隊長何して!?」


 背中にフィルの慌てた声が聞こえたが、カイルは滑り落ちながら主に話しかけた。


「おいムカデ野郎。お前話できんだろ。コイツら返してくれねぇか」


「ウルサイ…コイツラハ、オトリ…オレノ イエ アラス…タオス」


「囮? 地下に何かいるのか?」


 話している間にも要救助者五人とカイルはどんどん飲まれていく。最初の一人はついに砂の下に見えなくなってしまった。


「オレハ、コワイ…あれガコワイ…」


「わかった。俺が見てやる。とりあえず俺を食うなよ?」


「キサマニ、ナニガデキル」


「よっと……まあそう言うなよ。頭無理にいじられてテイムされたくないだろ? 下に何がいる」


 カイルは中心に到達するとムカデの大顎をよじ登り頭の上に乗ってしまった。

 他の人間が飲まれていく中、その奇妙な会話は続く。


「キサマ、オレ、ていむデキナイ」


 二人目も砂に埋没してしまった。

 あまり時間はない。

 カイルは一瞬だけフィールドを展開した。

 上にいるフィルにまでその力場は広がり、彼は初めてテイムされる側の感覚を身をもって知る。


「なに、いまの……」


 急激に意識を持って行かれるような感覚があり、フィルは眩暈を起こしたかのように頭を押さえた。


「ウグ……キサマ…」


「わかったろ? 時間がない。あいつら生きて返してくれねえか」


「デハキサマガ オトリダ…」


「いいだろう。じゃあまずここに残ってる連中が沈む前に上に投げてくれ」


 フィルからは二人の会話が聞こえない。

 何か説得に応じたらしい主は落ちた人間を大顎に引っ掛けると次々と巣の上に飛ばした。

 フィルが急いで彼らを確認すると、いずれも息があり自分で巣から遠のいた。


「今救助隊が向かってますから!」


「か、彼は!?」


「別件で来ていた救助隊の隊長です。僕は見習いです」


「彼はどうする気なんだ?」


 フィルが「分からないです……」と下を見た時、上にいた全員が「あっ」と声を上げた。

 主が顎にカイルを挟み地中へ引きずり込んでしまったのだ。


「隊長!」


「そ、そんな……食われたのか?」


 静かになった巣穴を見ていても何も起きない。

 何が起きているのかわからずフィルも含めて恐怖で見守るしかなかった。

 それでもふと自分は見習いだが救助隊なことを思い出し、彼らを安全な所まで下げると砂漠エリアの入り口を見た。

 もうすぐハーキスたちが来るはずだ。


 ロッドに炎を灯し、彼らの姿が見えるとそれを振って場所を知らせた。


「ハーキスさん!」


「フィル! 要救助者は…四人、あと二人は?」


「砂に飲まれました。今隊長がアリジゴクと一緒に地下に潜ってしまいました」


「なるほど。何か言ってたか?」


「ハーキスさんたちに要救助者を引き渡すことと、あと真似するなだそうです」


「真似できないっつーの」


 彼はそう言うと到着してすぐ要救助者の状態を確認していたウォーレンと一緒に怪我を見て行く。

 彼らは大きな怪我はしていないようだった。

 ショックは受けているようだが、先に注意した装備をきちんとしていなかった相手にそこまで知ったこっちゃない。


「ハーキスさん、隊長は…」


「大丈夫だろ。真似すんなって言ったんだから待ってるしかないって」


「なんでそんな余裕なんですか」


「余裕なわけじゃない。ただ隊長がそう言って自分で行ったなら大丈夫だろ。信じて待つしかない」


「でも砂に埋まってたら…」


「下は空洞になってる。アリジゴクって呼んでるけど本当はでっけえムカデ。巣穴が地下に広がってんだよ。ムカデの分泌物でトンネル状に固められてるから砂に埋もれることはない。帰れないけどな。ウォーレン、どうだ?」


 ウォーレンは地下の様子を探っているのか、何かの魔法を使って探索している。

 そしてしばらく経っと巣穴の方に顎をしゃくった。

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