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「なんだこの声は」


「住人とは違うな……“成り損ない”か?」


 リコとカイルが顔を見合わせ、次の瞬間全力で声の方に走った。

 瘴気でも出ていそうな沼地で出くわしたのは、泥のような体を持つ不格好な人っぽい何か。それはモンスターを連れた少年を追いかけていた。


「やはり成り損ない」


「おい少年大丈夫か!? 救助隊のカイルだ。リコ注意を」


 リコがわざと派手に泥人形の足元を爆発させると、それはのっそりとリコの方を振り向いた。

 口なのかぽっかりと穴が開いた部分から耳を塞ぎたくなるような奇声を上げた。どうやら挑発され怒っているらしい。

 その間にカイルがすり抜け要救助者の元へ駆け寄った。


「怪我は?」


「足を少し。でも歩けます」


「よし、下がって待ってろ。おい石蜥蜴(クリーピングストーン)、お前ちゃんと主を守っとけ」


 そう言うと少年を近くの岩場まで下げ、足元で怯えるモンスターのクリーピングストーンを少年に投げた。少年が慌ててキャッチする。


「絶対出るなよ。あいつは普通のモンスターじゃねえ」


「なんか吐いて攻撃されました!」


「見たまんまの攻撃だな」


 そう言って振り返ると、既に泥人形はリコに向かい何かを吐き散らかしていた。彼女はそれを魔法と剣を使い払っている。

 着弾した地面や岩から薄く白煙が上がっているのを見ると、当たって無事とは思えなかった。


「おいお前ら! そんなとこでびびってねえで手貸せ!」


 カイルが闇に向かって叫んだ。

 僅かに動揺した気配のあとに出て来たのは、中堅どころのモンスター。ソーサラータイプのアンデットのリッチと、それより少し劣るファイタータイプのスケルトン。


「アンデットが仲良くびびってどうすんだよ」


「私たちだって怖いものは怖いのよ。アレが私たちの手に負えるわけないじゃない」


 骨だけの姿でそう喋るのを聞く限り、どうやら女性らしい。

 確かにぼろきれのような服装とアーマーは女性ぽさがあるような気がしなくもない。


「んなこた分かってる。おいリッチ」


「なんじゃ」


「ゾンビ召喚してリコを守れ。ついでに少年の前にも」


「わしの可愛い子は盾ではないわ」


「うるせえお前も盾に使うだろうがよ」


「むう……」


 押し黙ったリッチは手にした黄金の錫杖を振りかざし、リコの周囲と少年の前にゾンビを召喚する。

 攻撃を避ける必要のなくなったリコは、ゾンビの背後から魔法攻撃に転じた。


「得物が小せぇな。今日ばかりは剣を持って来るべきだった」


 カイルがそう言って腰のナイフを抜く。

 波打つような刃のナイフは、刃渡り30センチほどしかなく遠距離攻撃の煩い相手の懐に飛び込まねば攻撃は届かない。


「ゾンビーズ! アレの動きを鈍らせろ。あと一体こっち来い」


 ォアアアと呻き声を上げながらのっそり移動したゾンビは泥人形の足元にまとわりついた。一体だけ言われた通りのっそりとカイルの傍に来る。


「リコ!」


 リコが心得たとばかりに魔法で応える。

 ゾンビごと光の縄のようなもので泥人形を縛り上げ動きを止める。それと同時にカイルが走り、傍に来たゾンビの背中を蹴って泥人形の頭の上に跳躍した。


「オラ消えろ!」


 それでも抵抗しようともがく泥人形が、リコの方を向いていた口をいきなり後ろに出現させ、泥を吐き出した。


 カイルはそれを素早くナイフで払い落すと、泥人形のてっぺんにそのまま突き刺した。


ォアアアア

キェエエエ


 リコによって一緒くたにされたゾンビと悲鳴を重ねた泥人形は、刺されたところから灰のように崩れると地面に僅かな山を残して消えた。

 ついでに一緒に光で縛られたゾンビも消えてしまった。

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