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人間

 彼はようやく、人間と出会った。

首を鎖で繋がれ、狭い牛舎──いや、人舎に繋がれた人、人、人……奇妙なことに、全員地に伏せているか、四つん這いで女ばかりだった。

「なんてこった……」

彼は手近にいた女の一人に駆け寄り、彼女を繋ぐ鎖を殴りつける。十回目のファンファーレとともに鎖は砕け散った。

「もう大丈夫だ。さあ逃げよう!」

後太郎は女に手を差し伸べた。澄んだ目をした、長い髪の女は彼を見て、言った。

「モー」




 「は?」

後太郎の頭の中は真っ白になる。

なぜ人間が なぜモーと鳴く?なぜ彼の嫌う牛の鳴き声を発する?

「ふざけてる場合じゃないんだ!早く!」

後太郎は彼女の手を取り──明らかに異質な感触が掌から伝わる。

後太郎は握った手を開き、まじまじと女の手を見る。その手には指ではなく──蹄がついていた。

「うわあああああああああああああああああ!!!」

後太郎は錯乱し、叫ぶ。彼の正気を繋ぎ止めていたものは、脆くも崩れ去った。

「モー……?」

心配そうに後太郎の顔を覗き込む女が鳴く。

「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!」

後太郎はダダをこねるように地面を叩く。地面を叩く音はファンファーレとともに大きくなり、やがて地面が揺れはじめる。

「モー……モー……!」

「黙れええええ!」

ドンッ!と地面が揺れ、またファンファーレが鳴った。



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