表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/34

三月一日&三月十五日

 三月一日


 卒業式まで二週間を迎えた。一般入試を受験する三年生は最後の追い込みをかけている。その中で僕も受験勉強に取り組んでいた。そのさなか、ふとしたように優香が昼休みに話しかけてくれた。卒業間近の廊下は静かだ。


「三年間の中学校生活ももうすぐ終わりねー。なんだか寂しくなるなあ」


「うん。本当に終わりなんだな。優香は高校は?」


「青南高校に美術推薦が決まったよー」


「そっか。優香とも離れ離れになるなあ」


「創太。……今までありがとう。本当に創太は男らしくなったよ」


 優香は僕を見てから感慨深そうに言った。


「はは。本当にそうかな」


「なったよ。きっと創太の前に亜悠さんが現れてからかな。私が三年間アドバイスをしてもほとんど変わらなかった美術のセンスも男らしさも。私がいくらアドバイスしてもできないことを彼女は創太に与えたの」


 そう言うと優香は背を向ける。


「そのことを知ってようやくわかった。私は創太にふさわしくないんだってね! それを最初は認められなくて泣いたこともあったけど。だけど認めなきゃね。じゃないと私は前には進めない! だからマハタモールで創太が彼女と二人きりで歩いてたのを見たのもこれでよかったんだよなって思えた」


 優香は振り返ると笑顔で僕を見る。その瞳は澄んでいて綺麗だ。まるでこれからの旅立ちの期待に胸を弾ませているようにも見えた。


「だからこれからも私は美術を学び続けるよー。私には美術があるからそのような経験も美術に活かせる。嬉しい、悲しいを表現できる。でも亜悠さんは、ダンスを始めたばかりの彼女はその手段をまだ知らないんだと思うの。創太を失うことはマイナスでしかないから……。だから創太は亜悠さんを手放しちゃだめだよー」


「優香……。僕もがんばるよ。ありがとう」


「いや、ありがとうなんていいって! 私も創太と亜悠さんに負けないぐらいの青春を高校で過ごしてみたい。考えるだけでもワクワクしてくるんだ」


 これからの未来に対して不安がない態度の優香。彼女の迷いのない姿を見て改めて優香と三年間一緒に過ごせてよかったと思えた。いままで色々あったけれど、本当に優香とはこれでさよならになるんだな。ありがとう。これからも優香の活躍を祈ってるよ。


 三月十五日


 卒業式。三年生の生徒は皆、体育館に集まり校歌斉唱を行った後、卒業証書を授与された。在校生の送辞、卒業生の答辞が行われ閉式の言葉が体育館に響いた。


 北山高校に推薦が決まった杉原直樹。プロのミュージシャンを目指して浦陽高校を受験した瓦竜太郎。青南高校に美術推薦の北林優香。隣の県でダンスを始めるためにスポーツ推薦を蹴って一般受験に切り替えた小柳亜悠。そして画家になるために北山高校に受験した僕、新井創太。みながそれぞれの夢を持ってそれぞれの進路を選んだ。そしてこれから新しい生活に羽ばたき旅立つ。卒業式を終えた僕の胸の中はすべてが期待で溢れているわけじゃないけれど、今、中学校で培われた心と経験と想い出を携えて次のステージに出発する。


 一年生、二年生に見送られて退場した僕達。体育館を出ると空には雨雲が全体に広がり、雨足の強い天候になっていた。みんな傘を広げている。

 亜悠を探した。亜悠は大勢の友達と写真を撮っていた。ほとんどの卒業生が集まってせわしく写真撮影を行っている。写真撮影している亜悠に声をかけた。


「亜悠」


「創太くん」


「本当に僕達卒業だね」


「うん……。創太くんと私で写真撮ろうよ」


「そうだね」


 亜悠の友達がカメラを向ける。僕達の姿を写真に収めてもらった。そういえば僕と亜悠の写真はこれが初めてだった。これからも二人で写真を撮る機会はあるかな。


「よかった。創太くんと卒業式に写真を撮れて」


 嬉しそうな笑顔の亜悠を見て彼女と離れ離れになるのが名残惜しい。


「亜悠、高校に行ってもがんばろうね」


「創太くん、実は私、寂しいんだ。これからも私たち同じような関係でいられるよね?」


 笑顔だった亜悠の表情に途端に陰りがさす。その言葉は亜悠がみせた初めての弱音だった。僕も同じだよ。でもここで、「寂しい」なんて言ったら僕達は前に進むことなんかできない。亜悠には希望をもたせてあげたい。だったら僕は亜悠に励ましの言葉を伝えなきゃ。


「なにいってるんだよ。寂しいなんて思っても言っちゃ駄目さ! 僕達には希望があるんだから。それを信じていかなきゃ。最後ぐらい笑顔でいなきゃ!」


 そう言ってみたけど僕は亜悠にはっきりとした答えを言えたのだろうか?


「僕達の出会った空を思いだしてみて。寂しくなったら空を見上げればいいさ。きっと僕だって見上げてる」


「そうだ……。そうだよね!」


 そうして帰りの分かれ道で二人、僕達は別れた。僕は最後に本当のことを言ったのか嘘を言ったのか分からない。けれど、これでいいんだ。


 一人で雨が降る中、歩いている帰り道から広場を見た。すると、いつかの赤い傘を貸してくれたセーラー服姿の亜悠の面影が浮かんだようにみえた。この空がどのように曇って濁っていくかはわからない。でも、きっと明日は晴れだと信じて進んでいく。どこまでも進んでいく。




 おわり

ありがとうございました! 至らない作品ではありましたが僕の心は満ち足りて満足です! 読んでくださった方々に本当に感謝です! 小説家になろうというサイトを知って色んな方々が読んでくれたことに驚いています。小説家になろう様にも感謝です! それでは!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ