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十月二十日 その1

 ついに文化祭がやってきた。生徒は一度各々教室に集まり体育館に移動して開会式が始められた。体育館は前方のステージだけライトの照明が当たっていて窓はすべて黒いカーテンで閉められている。薄暗い体育館は非日常を醸し出しその雰囲気がワクワクさせる。ステージの周りには美麗な装飾に鮮やかな豆電球達の光がカラフルに体育館前方を彩る。そのステージに圧倒された。これが優香の考えたデザインなのか。あいつ、本当に美術方面でなにかしら就職できるんじゃないか?


 文化祭実行委員がステージでコスプレをして小芝居をしている。シルクハットを被って黒いマントを羽織り付けヒゲをした生徒がパッと手の持つスティックから紙に切り替えるマジックをする。その紙には『ようこそ豊山中学文化祭へ』と大きな文字で書かれてあった。これが文化祭の開会のスタートの合図らしい。放送部から正式なアナウンスが入る。早速僕は自分のクラスのお化け屋敷のお化け係を務めるために教室でお化けの格好をした。それにしてもその格好が白い布を被ってゾンビのマスクをしただけっていう……。これで脅かすことが僕にできるのかなあ。とにかく催しは始まっているから定位置にスタンバイした。


「はい、一名いらっしゃいませー」


 お客さんがやってきたらしい。僕の出番の前には穴の開いた壁から十人の生徒達が一斉に手を出して驚かすトラップが待ち構えている。


「アッハッハッハ! おもしろーい!」


 面白いって言われちゃったよ……。まあ文化祭のお化け屋敷なんだからそれでいいんだよな。少しプレッシャーから解放された。よし、気持ちを切り替えて驚かしてやる。


 ターゲットは僕の担当するポイントまでやってきた。声を大にしてターゲットに襲い掛かった。


「ワアー!」


 ターゲットは無反応だった。う……。


「その声は」


「うわっ!」


 頭に被っていたマスクをとられてしまった。


「やっぱり。創太だ。全然怖くないよ。駄目っしょ」


「誰かと思えば優香か」


「創太はお化け役失格!」


 優香はマスクを持ったまま教室を出て行ってしまった。


「おい! それがないと困るんだけど! マスク返してよ!」


 あわてて優香からマスクを取り返す。


「あ」


「ふふん」


 優香は二組の催しの喫茶店のウェイトレス姿だった。いつも優香は短いスカートだけど、今日のミニスカートはいつもと違ってとても新鮮だった。黒いヒールのついた靴を履き、太ももの下部が白いニーソックスに包まれている。黒と白のギンガムチェックでフリルのついたスカートに黒が基調の乳袋の白い服。その胸につい目がいってしまう。


「優香いいんじゃないのそれ。似合ってるよ」


「かわいいでしょ。喫茶店が暇すぎて創太のクラスのお化け屋敷にお邪魔しちゃった。それじゃあねー」


 かわいいな、優香。直樹がこれみたらなんて驚くだろう。




 お化け屋敷の担当の番も終わり自由に学校をまわれるようになった。さてと、誰かと一緒にまわりたいけど直樹は彼女とまわるって言ってたし龍太郎は体育館のステージのライブの準備で忙しいらしい。どうしよう。とにかく一度体育館で催しをみてみよう。そうして体育館の扉に手をかけた。


「ねえ創太くん」「ねえ創太」


 そう言って僕の右肩と左肩をたたいたのは亜悠と優香だった。まったく同じタイミングだった。とても嬉しいけど困るじゃねえかああああ!


「あ! すみません! そちらからどうぞ!」


「ごめんなさい! どうぞそちらから!」


 二人は頭を下げたり手を差し伸べて譲り合いをしている。ど、どうしよう。ここは僕が何か言わないと!


「じゃあ三人で見ようか!」


「……」「……」


 やっぱりまずかった。



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