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八月十八日&八月二十五日  

ブックマーク入れてくれた方に感謝です。この作品が自分の中で少しでも素晴らしい作品になるよう書いていきたいです(*^-^*)

 八月十八日


 今日、新しいスケッチブックを買うために街の大きな文房具店に来ていた。亜悠の絵を描くための準備を始めるために。水彩画で描くことにした。油絵はまだ僕には分からないからきっと夏休みに間に合わせることは不可能だから。


 そして午後、美術室に籠り水彩画で人物を描く作業に励んだ。そして家に帰りその作業を継続する。そんな日が連日続いたのだった。


 八月二十五日


 夜。この日も相変わらず人物画の勉強に明け暮れていた。なんとかコツとノウハウは分かってきた。でもうまく描けない。それも悪くない。苦しいということは自分が成長している証だ。だったらとことん苦しんでやろう。絶対にやってやる。完成して亜悠に見せたい気持ちで一杯だ。


 自分の部屋のドアからコンコンとノックする音が聞こえる。どうせ母親だろう。


「うるせーなー」


「創太―。電話よ。はやくでなさい」


 ん、誰だろう。


「はい、もしもし」


『あっ、創太くん!』


 聴いたことあるような声だけど。これってもしかして!? まさか。一瞬わが耳を疑った。


『小柳です』


「あ、亜悠!?」


『そうです』


「電話いいの!? てかよかったの!? あの時――」


『あの時は心配してくれてありがとう』


「う、うん」


 もちろん亜悠の事はすごく心配していたけれど、あの後光村と大丈夫だったのだろうか。


『腕のほうはひねって捻挫したみたい。病院で診てもらったらあと一週間動かさず慎重にしていれば大丈夫だろうって』


「それは良かった。大事に至らなくてよかったね」


『ありがとう。……あのね! 創太くんが声かけてくれた時、色々困って電話番号教えられなかったんだけどその後、私、間違ってるなと思った』


「あ! いいんだよ。そんな――」


「ううん。創太くんは勇気を振り絞って聞いてくれたんだよね。一生懸命伝えてるのが分かったの。私、その気持ちを踏みにじったままでいられなかった』


 あの時亜悠に声をかけることができたのも全部君のおかげなんだよ。お礼を言わなくちゃいけないのは僕のほうだ。


「あの時はなんか、悪かったなあと思って。いい雰囲気を壊しちゃったから。でも光村は?」


『いいの。創太くんは優しいね。心配しなくてもだいじょうぶ!』


 そうかなあ。そのまま沈黙が流れる。なんて話せばいいんだろう。せっかく亜悠が電話かけてくれたんだから何か大切なこと伝えなきゃ!


「あ、全国大会お疲れさま! かっこよかった!」


『私と仲間達がみんなで三年間頑張ってきた成果が残せてよかった。三年生最後の大会はこれで終わったなぁ』


「あの時の亜悠はさ、コートでも凄く輝いてて、一生懸命で、かっこよくて見ていて生き生きしてたよ! 応援に行けてよかった」


『私、絵を描いてる創太くんのように空を飛べてたかなあ?』


 亜悠は不思議なことをいう。


「絵を描いている僕なんかよりとてもとても元気で強かった! 頑張っていたよ!」


『えへへ……』


「僕も夢中になって試合を見てたんだ。そうしたら自分まで心が飛んでいるように感じる瞬間があったんだよ。そう感じたんだから亜悠は飛んでたんだよきっと!」


『ほんと!? 私も創太くんに負けないよう心の中で何度も挫けそうになったけど頑張ったんだあ!』


 僕は喋りながら頬が赤くなるのを感じた。亜悠とのこの電話越しの会話に嬉しいし照れるけど、ゆっくりもっと話していたい。


「僕も絵を描く答えがでたんだ」


『うんうん! それはなにかね?』


「描きたい絵が決まった。亜悠の絵を描くことにしたよ!」


『わあ……。 創太くん。 私を描いてくれるの!? なんだか恥ずかしいなあー! えへへ……。創太くんが描く私ってどんな色がみえるんだろう。創太くんの絵を初めてみたとき、その空が無限の自由と新しい世界へと連れてくれる君が絵の中にいたの。一体どんな私になるのかな。気になるなぁ』


 そうだったんだ。あの時の記憶が蘇る。あの場所で僕と亜悠は出会って絵について話をした。それは今でも新鮮で。セーラー服のスカート。よく覚えてる。彼女の姿が風に揺らめいている。

 僕は受話器を握る力をグッと込めて彼女に話した。


「僕の空が亜悠にそんな印象を与えていたなんて思わなかったよ。……考えたんだけどきっと憧れや希望を空の絵を描くことで投影していたのかもしれない。でも、それだけじゃ駄目だったんだ」


 そして彼女に心の底から伝えたい言葉を伝えた。


「きっと亜悠の絵を描きたいのは君の背中を追いかけたいからなんだと思う。いつも亜悠は僕を日の当たる場所へと引っ張ってくれるんだよ。だから、僕は亜悠のことが……」


 好きだ。そう伝えたい。伝えたくてしょうがないよ。


 お互いの間に沈黙が流れる。それでも気まずくない。この気持ちが彼女に伝わってほしいな……。


『……私は公園で絵を描いている創太くんにずっと前から気づいてたんだよ。広場の景色の中から何を感じているのか、声をかけようと思ってかけられなかった日も何回も夜、考えてたんだ。だから私は創太くんを知りたい』


 知りたいって、僕も君のことが知りたいよ。どうしたって知りたいよ。


『ねえ、これっていいチャンスじゃない? 創太くんが知った私を絵で描いて私はその絵を見て創太くんを知る。それって面白いな』


 彼女の導かれるような意見に僕は賛成した。


「いいね! 僕は亜悠を一生懸命描くから。亜悠はそれまで怪我良くなるようにゆっくり休んでて」


『創太くん。あのね! 今月の三十日、私の誕生日なの。友達や他のみんなも呼ぶから創太くんも来ない?』


「え、八月三十日。誕生日だったんだ!」


 僕が亜悠の誕生日に招待されるなんて! 僕は亜悠にとって友達なんだ! 心が躍った。受話器は熱くなっている。


「あ、亜悠! 行くよ絶対! きっとそれまでに絵を完成させるから。楽しい誕生日にしようね!」


 彼女は、『うん!』と元気に返事をする。受話器越しにはにかんだようだった。彼女のその声に僕も安堵する。


『来てよ。きっとだよ! じゃあね!』


 そうして彼女は電話を切った。そのまま、五、六秒受話器を耳に当てたまま確認した後にそれをおいた。僕は高揚している。亜悠との約束。守らなきゃな!


 さっそく机に向かい継続していた人物画の勉強の作業を再開する。この日の夜は遅くまで起き続けた。



次の話は八月二十八日です。二部構成でお送りします。優香の気持ちが表れます。難しくなりそうですが書けるかな……。

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