082話 託された命*
巨大な魔法陣が完成する。
レオニスとセレスティアを中心に、金と白銀の魔力が渦を巻いていた。そしてその魔力は愛の象徴である神鳥を形作っていく。それはゲームで何度も見た、魔王を討つための究極連携魔法。
(終わった……。)
アベルは力なく短聖剣を下ろした。
もう身体は限界だった。
避ける力も。
受け止める力も残っていない。
レオニスが静かに剣を掲げる。
セレスティアが目を閉じ、膨大な魔力を解き放つ。
究極連携魔法が、ついに完成する。神鳥の身姿を体現した膨大な魔力の塊がアベルに向かって放たれた、その瞬間だった。
「アベルッ!」
聞き慣れた怒鳴り声。
次の瞬間、四つの大きな背中がアベルの前へ躍り出る。
ガイル。
トーヴ。
バルド。
リック。
宵闇の月の仲間たち。
「馬鹿野郎!」
「若ぇ奴が諦めるんじゃねぇ!」
「アベル!しっかりしろ!」
「俺たちがついてるぞ!」
直後、4人とアベルに究極連携魔法が炸裂する。
塔全体を揺るがす轟音。
眩い光が最上階を埋め尽くした。
爆風が収まり、光が消える。
アベルは無事だった。その代わり、
目の前の四人が、ゆっくりと膝をついた。
「ガルドさん!」
慌てて駆け寄る。ガルド達の鎧は砕け、全身から血が流れ、息も絶え絶えだった。
「へへっ……。」
ガルドが苦しそうに笑う。
「……間に合ったな。」
「喋らないでください!」
アベルは必死に傷口を押さえる。だが。ガルドの血は止まらない。
トーヴも苦笑した。
「俺たちは……もう十分、生きた。」
「だからよ…お前は……生きろ。」
その言葉を聞いた瞬間。
アベルの中で、何かが切り替わった。
(違う。)
目の前で倒れているのは幻ではない。
宵闇の月のみんなは、本物だ。
このままでは、本当に死ぬ。
助けられるのは自分しかいない。
アベルはゆっくりと立ち上がる。
その瞳から迷いが消えていた。
視線の先。
巨大な魔法陣の中央。
レオニスとセレスティアは、究極連携魔法の発動後の反動で、その場に静止している。膨大な魔力を制御した代償。わずかな時間、完全な硬直状態となる。ゲームでも存在した隙。
(今しかない。)
アベルは地を蹴った。限界を超えた速度で駆け抜ける。
メイが初めて表情を変えた。
「え……?」
勇者は一直線にレオニスとセレスティアへ迫る。短聖剣が白銀の輝きを放つ。
「ガルドさんたちは……。」
アベルは短く呟く。
「俺が助ける。」
その決意とともに、短聖剣が一直線に振り下ろされた。




