閑話15話 聖剣の行方
王都の外れ、小さな鍛冶場。
アベルは折れた聖剣の刃を、静かに鍛冶職人へと預けていた。
後日、完成したのは一本のショートソードだった。握った瞬間、手に吸い付くような感覚がある。重さも、魔力の流れも、妙に自然だった。
「……しっくりきますね」
アベルは小さく呟く。ただし問題は一つ。元は国宝の聖剣の一部であるという事実だ。そのため普段は布で包み、目立たぬよう隠して携帯することにした。
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一方その頃…
レオニスもまた、王都で評判の鍛冶場へと足を運んでいた。折れた聖剣の修復を依頼するためである。その鍛冶師は、王都では名の知れた人物だった。高い技術力を持つとされ、貴族や騎士の間でも一目置かれている存在。ただし、その評判の多くは最近になって突然出てきたものだが、レオニスはそのことを知らない。
「これは……見事な品だな」
鍛冶師は折れた聖剣を見て目を細める。
「修復は可能だ。かなり繊細な作業になるがな」
レオニスはその言葉を信じた。少なくとも、王都で一定の評価を受けている鍛冶師であることは事実だったからだ。
「いくら必要だ」
「手間賃としては……これくらいは頂きたい」
提示された金額は高額だったが、聖剣の価値を考えれば許容範囲にも思えた。
(これで直るなら安いものだ)
レオニスはそう判断し、支払いを決断する。
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数日後。
レオニスは修復完了予定日を過ぎても一向に連絡をよこさない鍛冶師に痺れを切らして鍛冶場を訪れた。しかしそこには、静まり返った工房だけがあった。
「……どういうことだ」
工具は整然と残されている。だが鍛冶師の姿はない。さらに確認すると、作業途中の記録も消されており、修復の痕跡も曖昧だった。
「逃げたのか……それとも、元からその程度の腕だったのか」
レオニスは低く呟く。すぐに衛兵へ命じる。
「鍛冶師を探せ。王都内外の出入りを調べろ。聖剣に関わる件だ、優先度を上げろ」
衛兵は直ちに動く。
「はっ!」
だが調査は空回りする。王都で有名だったという鍛冶師の経歴は、確かに存在していた。しかし、その名声の多くは、本人が意図的に流布した誇張や噂によって作られたものだった。加えて、すでに聖剣の残骸は闇ルートで売却されていた形跡があった。
「……俺の聖剣は、いったいどこに行ったんだ?」
レオニスの声は低く沈む。握りしめた拳がわずかに震える。
(聖剣をこのまま無くす訳にはいかない。だが、今は手がかりすらない)
怒りと焦燥だけが、静かに積み重なっていった。




