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閑話13話 王の怒りとひとつの事実
王城の執務室。
王は静かに書類を読み進めていたが、その手が途中で止まった。それは学院から上がってきた、アベルに関する報告書だった。内容は淡々とした事務報告の体裁を取っている。しかし、読み進めるほどに王の表情はわずかに険しくなっていった。
「……この扱いは、何だ」
低く呟かれた声には、抑えた怒気が混じっていた。
学院内での評価。
実戦機会の制限。
周囲生徒との待遇差。
そして、一部指導者による不合理な判断。
王はゆっくりと書類を机に置く。紙が木机に触れる音が、やけに重く響いた。王の指先がわずかに机を叩く。
「学院は……何をしている」
呼吸を整えた後、王は即座に命じた。
「学院とギルドの監査を入れろ」
「アベルに対する評価と待遇の全記録を洗え」
執務官が緊張した声で応じる。
「は、はい……」
王はさらに続ける。
「必要なら責任者の処分も検討する」
その言葉は冗談でも怒りでもない。ただの“事実確認後の前提”として語られていた。
しばしの沈黙の後、王は窓の外を見た。そして王は静かに目を閉じる。小さく息を吐いた。
「遅いな……気づくのが」
その声には、怒りだけでなく、別の感情も混じっていた。
かつて守れなかったものと、今守るべきものが重なって見えているような、そんな色だった。




