表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
72/72

061話 反撃の勇者

 王都外壁前線。


 崩れかけていた戦線に、再び“軸”が戻る。アベルが戻った瞬間から、戦場の空気は明確に変質していた。


「……ここから押し返す」


 アベルは静かに剣を上段に構えた。構えた剣の周囲に展開された立体魔方陣が強い光を放ち、次第に刀身に光が収束していく。


「《レーザー・ソード》」


 その輝く刃をアベルが振るうと、斬撃の軌道そのものに魔力が流れ込み、衝撃波として拡散した。その結果、一振りで、前方の魔物群が一掃された。


「なんだあれは…」


 後方の兵士が息を呑む。


 ただの剣技ではない。

 ただの魔法でもない。


 アベルが一歩踏み込むだけで次の瞬間には数十体の魔物が消えていく。誰もが初めてみる魔法剣技とも言うべき魔力を纏わせた刃で、アベルは敵を一網打尽にしていった。


(身体が軽い……いや、それだけじゃない。今までとは段違いに体内の魔力の流れがスムーズだ!これならば…!)


 アベルは内心で確信する。

 奈落での死闘。

 準魔王級との交戦。

 そしてヒロイン達による魔法回路の再構築。

 それらが重なり、今の自分は“別次元”に引き上げられていると。


 魔物の群れが再び押し寄せる。だがアベルは止まらない。


「――ここで止める」


 剣を振るうたびに戦場が削れていく。

 そしてその中心に立つ影。


 サイクロプス型魔族――ザイ。


「小僧、キサマいったい何者だ?」


 低い声とともに、大地が震える。まだザイとアベルの間には100m近い距離があったが、ジャンプで一気に距離を縮めたザイがアベルに拳を振り下ろす。大きな地響きと共に巨体が強襲し、それだけで空間が歪むほどの質量。


 それに対抗するためアベルも一瞬で距離を詰める。一気にザイの懐にまで飛び込んで、剣を突き出した。


 しかし――


 次の瞬間、衝撃。

 金属音が戦場に響く。


 ザイの腹部の鎧で左右に引き裂かれたアベルの剣。アベルの持つ柄の手前まで完全に真っ二つに割れていた。所詮は数打ちの平凡な剣。アベルの攻撃に用いるのは無理があったのだ。



 だがアベルは止まらない。


(何か代わりの武器は?)


 視線が地面へ落ちる。

 そこにあったのは――折れた聖剣の刃。


 アベルは飛び込むようにそこに移動してそれを拾い上げた。折れた聖剣の刃は元の刃の3分の二の長さ。ちょうど根本の辺りは細くなっていて刃もついていない。アベルは迷わずそこを握り構えてみた。


 次の瞬間、聖剣の残滓が反応する。

 そしてアベルの内側の力――勇者の力と共鳴した。


 光が走る。聖剣の力は失われておらずアベルの身体能力を引き上げていく。


 それをみてザイが動いた。


「小細工を――」


 しかし言い切る前に、空間ごと斬られる。

 アベルは一歩踏み込み、最短距離で斬撃を叩き込む。勇者の力と聖剣の残光が融合した一撃だった。


 ザイの巨体がよろめく。


「……馬鹿な」


 次の瞬間、さらに一閃。

 今度は防御ごと切断される。


 アベルは静かに言う。


「終わりだ」


 戦場にひと筋の光が走った。

 そして次の瞬間、ザイの巨大な上半身が下半身からズレて崩れ落ちた。そして巨大な下半身だけが、そこに残ったZ


 戦場に、数秒だけ静寂が訪れた。


 その後――


 押し寄せていた魔物の流れが、明確に“止まる”。そして魔物の残党は一斉に逃げ出した。


 王都防衛戦は、こうして終結したのだった。

光る剣は勿論、若さとか愛が何かを教わった宇宙の刑事的なアレのオマージュです。

大葉さんのご冥福をお祈りします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ