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272話 浄化*


 王都から遠く離れた村。


「ここが最初の被害地域です。」


挿絵(By みてみん)


 クラリスが言った。

 アベルたちは村へ入ると建物の多くが崩れていた。

 クラリスが周囲の鑑定を展開する。


「……います。」

「何人?」

「四人。」


 フェリは指定された場所の瓦礫の山を風魔法をエンチャントした斬撃で吹き飛ばし、残った瓦礫を全員で少しづつどかしていく。1人、また1人と遺体が出てきた。

 最後の1人の遺体を無事に掘り出して、アベルは静かに息を吐いた。


 フェリが拳を握る。


「よかった……。」


 ミリアは頷いた。


「これで、この捜索は完了です。」


 アベルは柱時計を見る。午前五時十二分。


「戻るぞ。」



 午前6時。


 東の空が白んできた。その空を駆ける一筋の光。アベルが一足先に飛行魔法で王都に帰ってきた。


 残り2時間。


「戻りました。」


 旧ミスリル製錬施設に缶詰になっていたセレスティアが振り返る。


「どうでした?」

「もれなく全て確認した。」


 アベルが息を落ち着けながら報告した。その場にいたミリアからも王都内の探索が終了したことが共有された。


「ありがとうございます。こんな限られた時間で、よくやってくれました。」


 そういうセレスティアの顔にも疲労が浮かんでいる。ルナは目の下に隈を作りながらも巨大な魔法陣の前で作業を続けていた。


「術式は?」

「あと少し。」

「エリスさんたちは?」

「まだ浄化中です。」


 アベルは時計を見た。午前六時十五分。

 残り一時間四十五分。


「間に合え…。」


 誰に言うでもなく、そう呟いた。



 そして、王城地下の聖なる泉。


 長い浄化を終えたエリスが、ゆっくりと立ち上がった。白い光が静かに消えていく。透き通るような白い肌には一片の穢れも残っていない。激しく感じていた全身の痛みも既に消えていた。


(……………。)


「神様。ありがとうございます。」


 エリスは見えない存在に深くお辞儀をした。そして決意を改める。


「……終わりました。」


 同じく浄化していたリシアも立ち上がった。エリスの全身をくまなく観察して、穢れがないことを確認する。


「穢れは、完全に消えているな。」

「ありがとうございます。リシアさんがいてくれたから……1人だけだったら、きっと途中で心が折れてました。」


 エリスは自分の手を見る。以前と同じように……いや、それ以上の聖なる力が、静かに身体の中を巡っているのを感じた。


「これなら……。」


 エリスが呟く。


「出来そうです。」


 隣でリシアがエリスの手を引いた。


「行こう。」

「はい。」


 二人は皆のところに向かって歩き始めた。



 午前七時。


 残り一時間。


 王国全土を覆う魔法陣が、ついに完成した。

 ルナが手を止める。


「完成。」


 セレスティアは大きく息を吐いた。


「……本当に?」

「術式はね。」


 ルナは続ける。


「後はエリス。」


 その時、階段から足音が響いた。


「お待たせしました。」


 エリスとリシアだった。アベルは二人を見る。

 リシアは聖なる泉に向かった時と同じ様な格好だが、エリスは白い大きな布をトーガのように体に巻きつけていた。その神々しさは、まさに聖女そのものだ。


挿絵(By みてみん)


「どうだ?」


 エリスは頷いた。


「必ず成し遂げます。」


 その言葉に、全員が静かに息を呑んだ。


 午前七時。


 残り一時間。

 蘇生作戦は、最後の段階へ入った。

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