突入、そして 6
お気に入り登録、評価などありがとうございます!
次で最終話です!
「マルガレーテ‼」
わたしがエッケハルトと共に階段を降りようとしたとき、フリードリヒ様が、邸を包囲している騎士をかき分けて玄関に飛び込んできたのが見えた。
「あ、団長!」
声を上げると、フリードリヒ様が顔を上げて、ホッと表情を緩める。
フリードリヒ様はわたしたちが下に降りる前にすごい勢いで階段を駆け上がって来た。
「マルガレーテ、怪我はしていないな?」
「怪我はしていないですけど、団長、あの魔道具うるさすぎです。耳がキーンってなりました。あとでマクシム様に伝えておいてください」
わたしがまだ耳鳴りがしている右耳を抑えながら顔をしかめると、フリードリヒ様がわたしの耳に手を伸ばしてくる。
「大丈夫か?」
「キーンてしますけど、鼓膜は破れていないので大丈夫です。エッケハルトも、ちょっと耳が痛くなっただけみたいですし」
「……マクシムには、もし次に使うことがあるならもう少し音を抑え気味にするものを作れと言っておこう」
「そうしてください」
あまりの爆音に、本当に驚いたのだ。
だが、突然の爆発音にホルダーの妻が腰を抜かしてくれたので、それはそれで助かったのだが。
魔道具を使った後で、わたしは突入してくる予定の騎士の手を煩わせないようにと、腰を抜かしたホルダーの妻を魔法で捕らえておいたのだ。防御壁を応用して、その中に閉じ込めてしまったのである。
ホルダーの妻は今、書斎で騎士たちに捕縛され、わたしとエッケハルトが見つけた契約書について尋問されている最中だ。
書斎に他に隠しているものがないかどうかを聞き出した後で連れて来られるだろう。
わたしたちの仕事はもう終わったので、あとはマクシム様と彼の部下である騎士に任せておけばいい。
……本当は、わたしが直接聞き出したかったりもするけど、こういうことは専門家に任せておいた方がいいと思うし。
お母様は一足先に階下に降りたようなので、わたしとエッケハルトがフリードリヒ様と共に階段を降りようとしたとき、書斎から縄をかけられたホルダーの妻が引きずられてくるのが見えた。
必要なことは訊き出せたらしい。
よかったよかったと思っていると、フリードリヒ様が驚いたように目を見張った。
「……ヘンリーケ?」
……え⁉
ヘンリーケって、フリードリヒ様の元奥さんの名前だよね⁉
びっくりして振り返ると、騎士に捕縛されていたホルダーの妻が、赤い唇をきゅっと引き結んでフリードリヒ様を涙目で睨んでいた。
だが、睨むだけで何も言わない。
……ってことは待って、ホルダーがフリードリヒ様の元奥さんの浮気相手の行商人⁉
おそらく、ホルダーという名前も偽名だろう。だからフリードリヒ様は気が付かなかったのかもしれないが、こんな偶然があるのだろうか。
フリードリヒ様は少しの間、瞠目したままヘンリーケを見ていたけれど、やがて興味が失せたように視線をそらした。
ヘンリーケが、騎士に連れられて階段を下りていく。
「おーおー、驚いたな」
ヘンリーケが玄関の外に消えていくと、騎士たちを指揮していたマクシム様が階段を駆け上がってきた。
「ありゃ、フリードリヒの元嫁じゃねーか。誰かが似たような女を王都で見かけたって噂は訊いたけど、本当に戻って来てたのか。また何のために」
「私が知るはずがないだろう。まあ、あれの男が詐欺師なら、この国で荒稼ぎするために戻って来たのではないか?」
フリードリヒ様が興味なさそうに言って、わたしに手を差し出す。
「マルガレーテ、降りるぞ。あとはこいつに任せておけばいい。……そう言えば、ホルダーという男はどうした」
「一階のサロンでお父様が相手をしていたはずですけど……」
フリードリヒ様の手を取って、もう片方の手をエッケハルトとつないで階段を降りると、サロンから相変わらずのほほんとした顔のお父様が出てきた。
「あ! お父様、ホルダーは?」
「騎士たちが縄をかけているみたいだよ」
開け放たれたままのサロンの扉の奥を見れば、放心した様子のホルダーの手首を騎士が縛っているのが見えた。
……でも、なんで座り込んで放心しているのかしら?
騎士たちに取り押さえられたのが怖かったのかしら? 不思議だが、あの様子だとすぐに口を割りそうだ。
「伯爵、怪我はないようだが、大丈夫だっただろうか」
「ええ、問題ありませんよ。あ、そうそう。全部が全部かどうかはわかりませんけどね、私が去年引っかかった投資の話には、どうやらヨアヒム君が絡んでいたようなので、そっちの方も一緒に確認していただけませんか? ホルダーさんに訊けば、詳しく教えてくれると思いますので」
「え⁉」
……ちょっと待って、お父様それ、どういうこと⁉
何故ヨアヒムの名前が出てくるのかとか、お父様がそんなことを知っているのかとか、わたしの頭の中が「?」でいっぱいになる。
フリードリヒ様も驚いたように目をしばたたいていた。
お父様は、能天気な顔でにこにこと笑っている。
「パパ、頑張ったんだよ~」
なんて笑いながら言っているけど、なんのことだか、わたしにはさっぱりわからなかった。
ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ
↓こちらも連載中です↓
「籠の鳥王女は愛されたいので好きにすることにした(https://ncode.syosetu.com/n3739lv/)」
ヒーローも登場し、ヒロインピンチ(?)です(笑)。
こちらも、楽しんでいただけると嬉しいです!







