突入、そして 1
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ホルガーが我が家に来てから五日後。
わたしたち家族は、四人でホルガーに教えられた住所を訪れていた。
ホルガーの家は二階建てのなかなか大きな家だ。
マクシム様が事前に調べたところ、この家の所有者はとある男爵で、ホルガーは家を借りているだけのようだった。
行商人が貴族のお邸を借りて住んでいるなんて、なんだか怪しい。
確か、お父様の話では、去年お父様が借金を抱えることになった投資話に、ホルガーも投資していたと聞いている。
宝石を売り歩いている行商人が、投資で大損を抱えたにもかかわらず、貴族のお邸を借りるような贅沢をするほどの余裕があるのだろうか。
商売に成功して富豪となった商人ならわかるが、社長室にふんぞり返るのではなく自らの足で商品を売って回っているホルガーがそれほど成功しているとは思えなかった。成功していたら、人を雇って動かすはずで、本人が汗水たらして宝石を売って回る必要はない。
しかし、こんな貴族のお邸を借りられるほどの余裕があるのならば、それなりに儲かっているはずだ。
……そうなると、ホルガー自身が行商人として家々を回ることこそに意味があるように思えてくるわね。
そう。たとえば、ホルガーが本当に詐欺師だった場合だ。
詐欺で儲けているのならば、詐欺を働くために自らの足でカモを見つけて回っているのだとも考えられた。
これがグループの犯行でないなら、ホルガー自身が動いているのも頷ける。
……疑いはじめると、全部が怪しく思えてくるわ。
今日はその疑惑が本当かどうかを確かめるためにここに来たのだ。
フリードリヒ様とマクシム様からは、何かあったらすぐに突入できるように、変装させた騎士たちを邸の周囲に待機させていると聞いている。
加えて、この邸の警備の中にも紛れ込ませたらしい。
ホルガーは王都に長期間滞在するつもりがないのか、警備の人間を短期間雇用しているようで、その使用人たちは、富豪が使う警備の斡旋所を利用していた。
斡旋所に登録している人たちは、いわば前世の派遣社員のようなもので、雇い主の性格に合わなかったりだとか、雇われた側の都合とかで、顔触れがちょこちょこ変わる。
それを利用して、数人の騎士を潜り込ませることに成功したらしい。
……わずか五日でそこまでの手配が完了するなんて、さすが騎士団。有能すぎ。
ただ、ホルガーは邸の中には警備を置かず、外だけを守らせるので、邸の中の潜入捜査まではできなかったと言っていた。
だからこその、わたしたちの出番である。
むしろ、騎士団だけで全部完結しなくてよかった。
能天気なお父様とお母様も、ホルガーに騙された可能性があると聞いてやる気を見せているし、エッケハルトも「やられたまま泣き寝入りなんて嫌だよ」と気合十分だ。
もちろん、わたしだって、これが詐欺ならば、やられた分はきっちりやり返す所存である。
……フリードリヒ様の予想もほぼ詐欺で確定みたいだから、絶対に証拠を見つけて取っ捕まえてやるんだから!
門をくぐり、玄関の呼び鈴を鳴らすと、雇われの使用人らしき人が現れた。
マクシム様の調査では、ホルガーに雇われている使用人は、料理人を除けば二人。
二人とも通いで、外の警備員と同じく短期雇用されている人たちだそうだ。
この大きな邸に、あとはホルガーと、彼の妻らしき女性が一人だけだという。女性の方は外を出歩かないタイプのようで、あまり詳しい情報は得られていないという。
使用人の男がにこやかにサロンに案内してくれる。
「お待ち申し上げておりました、伯爵」
ホルガーには投資話について質問があるので会いたいと連絡を入れてあった。
お父様にはこの部屋で、投資話に乗り気な雰囲気を見せつつ、事前に用意した百の質問をちまちまとホルガーにぶつけてもらう段取りである。
その途中で、エッケハルトが退屈になって、邸の中を見て回りたいと言い出し、わたしたちがエッケハルトについてサロンを抜けるという計画だ。
……十歳の子供が相手なら、ホルガーも怪しんだりしないでしょうし。
お父様は魔法が得意なので、何かあっても充分に自分の身を守れる。
わたしも防御系の魔法は得意だし、いざとなれば聖魔法の身体強化で対応可能だ。
……使用人が二人と、あとはホルガーとその妻一人しかいない状況だから、大丈夫のはずよ。
わたしたちの行動を怪しみ、危害を加えてこようとされても、わたしが防御壁と身体強化で対応している間に、警備に紛れ込ませている騎士たちや邸の周りを見張っている騎士たちが駆けつけてきてくれるという寸法である。
サロンで、ホルガーとにこやかに挨拶を交わしながら、わたしはそのときが来るのを緊張しながら待ち構えた。
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