長期休暇と工場視察 3
お気に入り登録、評価などありがとうございます!
次の日、アイスキャンディーを詰めた父の試作品の冷凍庫を持って、わたしたちは伯父様が作ってくれた工場へ向かった。
工場までは伯父様が馬車を手配してくれたのでとっても快適だ。こんな暑い中歩きたくなかったので、本当に感謝である。
伯父様とは工場で待ち合わせているので、馬車の中は四人だけだが、馬車の中とはいえ夏は暑い。
エッケハルトがお土産用のアイスキャンディーを食べたがったので一本あげると、お父様とお母様もほしがったので、結局全員でアイスキャンディーを食べながら馬車に揺られた。
工場は伯父様の店の近くに作られていて、作った製品をすぐに店頭に運べるようになっている。
工場の前で馬車を降りると、すぐさま伯父様が工場から出て出迎えてくれた。
「伯父様、暑そうですね。食べます?」
額に汗が浮かんでいる伯父様を見てアイスキャンディーを渡すと、不思議そうな顔をされる。
「マルガレーテ、これは?」
「新製品のアイスキャンディーです。売れるかどうか聞こうと思って。冷たくて美味しいですよ」
竹筒からの外し方を教えてあげると、伯父様はしげしげとアイスキャンディーを見つめた後で口に入れる。途端に、目を輝かせた。
「美味いな。そして冷たいから、今日みたいな暑い日にはぴったりだ」
「そうでしょう? ただ、早く食べないと溶けるので気を付けてくださいね」
炎天下の中で食べているとアイスキャンディーが溶けるのも早い。
伯父様は急いでアイスキャンディーを食べ終えて、工場見学のあとでこの販売について話を煮詰めようと言い出した。売る気満々だ。やったね!
「そうだ、マルガレーテ、シップヤクの在庫がなくなりそうだが、追加を持って来てくれたか?」
「あ、持って来てますよ!」
いかんいかん、忘れるところだった。
わたしは湿布薬の瓶を入れた大きな袋を伯父様に渡す。
「五十個あります。また作っておきますね」
「そうしてくれると助かる。騎士団からまとめて注文が入るから、追いつかなくてね」
本当に騎士団は湿布薬のお得意様である。
ちなみに国王陛下もだ。フリードリヒ様は、腰が痛いと国王陛下に呼び出されることがなくなったと、嬉しそうだった。頻繁に呼び出されるのがよほど嫌だったようだ。
わたしたちは猫の手、ハンドクリーム、バスボムを作っている部屋をそれぞれ見学して、働いている従業員さんにアイスキャンディーを配って回ると、そのあとで商談ルームへ向かった。
「商品の売れ行きだが、ハンドクリームとバスボムが少し落ちたな」
「温かくなると手荒れの頻度も下がりますし、お風呂で長時間入浴したりしなくなりますからね。ハンドクリームは冬になれば売れ行きが回復すると思いますけど、バスボムは少しアレンジしておきます? ミントの精油を入れて、ひんやり効果を追加しましょう」
「そんなことができるのか?」
「気持ち程度ですけどね。でも、意外と気持ちいいんですよ。湯上りがスーッとするんで。今度試作品を作ってきます」
まあ、この二つの売れ行きが落ちていても、アイスキャンディーを売り出せば、その二つの落ち込んだ利益くらいかるーく取り戻せるでしょうけどね。
ただし、作り方がわかれば誰でも真似できるだろうから、金額を安めに設定して、作る手間を考えるなら買った方がいいわ~と思わせるのがコツである。材料費はそれほどかからないので、安価で売っても利益は充分に出せる。
伯父様にアイスキャンディーの保存のための冷凍庫の試作品を説明し、これをもとに店に置く冷凍庫のサイズを決める。
「このレイトウコは売らないのか?」
「作るのが大変なので今のところは考えてませんけど、もし、興味を示す人があれば金額次第応相談ってことで受けてください。受注生産ってことで。ね? お父様?」
「うん、それなら大丈夫だと思うよ。ただ、レイトウコは氷室の魔道具よりも魔力を食うから、あんまり需要はないかもしれないけどね」
魔法が使える人ならいいが、自分で魔力が充填できない人は充填屋さんに頼む必要があるため、ランニングコストが高すぎて買わない可能性が高いらしい。お父様の計算では、氷室の魔道具の七倍ほど魔力を食うそうだ。
……わたしたちはアイスキャンディーが売れればそれでいいから、冷凍庫は今のところそれほど重要視はしていないのよね。
お父様が冷凍庫製造に手を取られたらアイスキャンディーの製造が追いつかなくなるはずだから、むしろ注文は来なくてもいいくらいなのだ。
「そうか。……それから、これを見てくれ。今の調子で商品が売れていくと、私の計算ではあと八か月後にはお前たちの目標の金貨一万枚に到達するはずだ。アイスキャンディーが追加されたので、恐らくもっと早いだろう。アンデルス伯爵に連絡をし、領地を取り戻す準備をはじめておいた方がいい。いきなり金貨を持って、今日から領地を返してくれと言えばあちらも慌てるだろうからな」
たしかに伯父様の言う通りだ。事前にこのくらいの時期に領地を買い戻せるはずだからと伝えておいた方がいいだろう。
……それにしても、金貨一万枚なんて聞いたときは途方に暮れたけど、意外と何とかなるもんね! お父様たちの頑張りと、伯父様のおかげだわ!
「お父様、これに懲りたら、今度からは何かをはじめる時は伯父様に相談してよね。わかった?」
「う、うん、わかったよ……。でも、もう投資なんて懲り懲りだからね。そんなものには手は出さないよ」
まあ、借金を返し終わっても商品の販売を停止するわけではないので、我が家にはコンスタントにお金が入って来る。お父様が投資に手を出す必要もないわよね。
「では、アイスキャンディーの売値を決めようか。先ほど見た限り種類がいくつかあるようだが、合計で何種類だ? 販売価格は全部一緒なのか?」
商売の話になったので、エッケハルトはちょっと退屈そうだ。
お母様も話を聞いていなさそうなので、二人には冷凍庫に残っていたアイスキャンディーを手渡してあげる。
……さってと、借金返済の目途も立ったから、頑張るわよ~!
まさかこのアイスキャンディーが、のちのちちょっとした騒動を起こすことになるとは、このときのわたしは露とも思っていなかった。







