最終回 店長さよなら
最終回
あのお客様が来てから、店長は様子がおかしくなった。
相談にはいつもどうり乗ってくれるが、何時もの明るさには欠け、震え、下を向く回数が増えたように思える。
お客様はいつもどうり来てくれている。1番人気メニューは、シュークリーム。 口の周りにクリームをつけながら幸せに頬張る姿が、店長の幸せを感じる瞬間でもあった。
お客様の中には、店長の謎っぽいところが、どうしても気になる方もいます。聞かれる度に様子がおかしくなってしまうところが特に、お客様の好奇心がそそられてしまいますが、店長を察し、最後まで聞いた者はいません。
しかし、今日は店長の様子が特におかしい…
…パリンッ! ガタンッ…
「…!? 店長!!!」
店長が倒れてしまった。
お客さんは慌てて救急車を呼び、店長は病院に搬送されました。
店は、シーンと静まり返ってしまいました。
「…………。」
…シ……。シンっ…。おきて…!
「…!?」
「! やっと目を覚ましましたか。」
「…こ、ここは?」
「病室です。あなたは急に倒れられて、お客様が救急車を呼んでくださったんですよ。良かったですね。」
「えっあの…なぜ…」
「はい…原因なんですが…」
「どうかしたんですか?」
「後遺症が少し…酷くなっているようです。このまま安静にしててください。もう少し検査したいところがありますので。」
「後遺症…?」
「…5年前の。」
その言葉を聞いて、とっさに自分の手で自分の顔を触った。そして、少し焦ったように医者に言った。
「あ、あのっ…!か、仮面は…!」
「焦らなくても、ベットの横にありますよ。」
店長はゆっくり仮面を手に取り、撫でた。
「何故仮面をつけるのですか?やはり…その顔を見られたく無いからですか…?」
「はい…こんな顔、気味が悪くて、お客様が寄り付かないとおもったからです。
…あの。話きいてもらっていいですか…?
…
5年前の放火事件の事は…今だに夢に出てくるんです。
その度に、妻が。火の中から出してくれるんです…何度も…何度も…
目が覚めると治ったはずの ただれた火傷部分が涙でしみるんです。
初めの方は妻が怒った顔で、火から早く出なさい!生きなさい!っと手を引っ張ってくれたのですが。
最近は、よく頑張ったね。と手をとるだけなんです。…やはり僕は…」
「…詳しく検査して見ないとわかりませんが…あまり期待はしないでください…」
「はい…」
店長は手にある仮面を眺め続けた。
店は仕方なくしばらく空けることにした。店長は毎日毎日病室から、流れる雲を見ていた。
「結果が出ました…」
「…。」
「あなたはもう働けないでしょう」
その言葉で店長は目の前が真っ暗になった。
奥さんと店を開くのが夢だった彼にとって、店は彼の人生、宝物そのものだった。その言葉は未来が無くなるのと同じことだった。絶望を感じた。
「5年前の火事が原因ですね。屋根が落ち、頭にぶつかり、その衝撃で、血腫が出来ていましたね?。それが酷くなってます。手術して助かる確率は…20%ありません…。残念ですが…。
化膿を抑える方法はあります。それでも持って、2週間かと…」
「…そうですか… 。
あの、お願いがあります。命の最期まで働きたいんです。店を…また開きたいんです。」
「医者の私から言わせれば、ダメだと言わざるおえないでしょう…。寿命が縮まってしまう可能性がありますから。」
「それでもいいです!お願いです…!」
医者はしたを向いた。
それから店長は元気に復帰したように見せ、命の最後の最期まで働いた。
そんなある日の事だった。
シュークリームの生地を作っていると、急にそっと店のドアが開き、眩しい光とともに天使がおりて入って来ました。
店長はまぶしさに目を細めながらもジッとドアの向こうを見つめた。光がどんどん大きくなって、天使が近づいて来た。…奥さんだった。
店長は驚き、あまりにも美しかったので言葉を失った。
「シン。私のためにありがとう…。
あなたは十分頑張ったわ。そろそろ休みましょう。私と一緒に…。」
店長は天使に手を引かれ、ドアの外に消えて行った。
それから店はもう開くことはなかった。
噂では店長が亡くなったらしいと。いや、亡くなったと言うよりは深い眠りについたと言った方があっているだろう。
店長はカウンターでシュークリームの生地を作っている途中で、カウンターにうつ伏せになって眠ったように亡くなっていたらしい。
表情はとても…穏やかだったそうだ…
- 不思議なスイーツカフェ店があったそうな。
その店長が作るスイーツはただのスイーツではない。
お客さんが抱えてきた「闇」にそっと光を差し込んでくれるという、魔法のスイーツだそうな。
しかし今は閉店し、店跡があるだけらしい。でも
その店はたまに明かりが灯り、中で男性と女性が幸せそうにスイーツを作って店を開いているという。
そして、それを見たものは永遠に幸せになれるという噂だ。
最後まで『魔法のスイーツ店』を読んでいただきありがとうございます!
高校生の時に小説を隠れて書いていたのを友達にばれて読ませたところ、とてもいいということで、数年の月日が経ちこのサイトをその友達に勧めてもらい初投稿の作品は、この作品にしようと決めてました。
言葉足らずな所が多々あると思いますが優しい目で見守っててください笑
次回作もよろしくお願います。!
緋色唯でした!