4話 パイ生地層と男の子
なぜ勉強しなければいけないのか…
蝉が大合唱を始めた真夏日のこと。
2人の元気な男の子がはしゃぎながら店にやって来た。
「こ、こんにちわっ!!」
「おいっ!みろよ!本当に仮面付けてるんだな!噂通りだな!!」
「ちょっと!声がでかいよぅっ… すこし静かにぃ…」
1人は活発で懐っこい。白シャツに黒の短パン。膝に絆創膏を貼っていた。
もう1人は少し内気だが、しっかりとした男の子だ。襟の付いた半袖シャツに七分丈のGパン。本がちょうど入りそうなサイズの茶色のカバンを肩からぶら下げていた。
「こんにちわっ
今日のお天気に似合うような元気な子が来ましたね。いいことです。
ですが、そんなお若い方が何故この店に?」
「あ、あの、中学生の僕たちが来るのも、場違いだと思うんだけどさっ…あの ー 」
「店長は勉強すきなのかぁ?」
「ちょっと、かっちゃん!!そんな言い方失礼だよっ」
「いいんですよ。勉強ですか?
君たちは嫌いなのですか??」
「ふんっ!勉強なんて糞食らえだぁぁい!!」
「ちょっ!きたないよっ…」
「学校の授業なんてさ、将来本当に使うか分からない数学の公式だの歴史だの植物の仕組みだの。ぜってぇつかわねぇから!!」
「あははっそーかもしれませんね!」
「あぁ…店長さんまでぇ…」
「あぁん!?そーゆーお前は勉強必要あると思うのかよ!!」
「あるとは思うよう?」
「なんでだ?」
「そ、それわぁ…」
「ま、お前は塾、週3で行ってるもんな。それも3教科も。偉いっつうんだが、真面目っつうんだが。なんだかなぁ。」
「母さんが行けって言うからぁ…」
「また 母さんがぁぁ〜かよっ!! お前はそれしか言えないのか!!」
「まぁまぁ。いいことじゃないですか。勉強はした方がいいですよ?」
「けっ。大人はみんな言うんだ。勉強勉強勉強勉強って!!!
とーちゃんなんか、
勉強しないとロクな大人になれねぇーぞ?なーんて。んじゃ、とーちゃんはちゃんとした大人なのかよっ!!!!毎日酒飲んでさっ。
んな大人なんて大っ嫌いだ!!」
「あははっ」
「な、なに笑ってんだよ。」
「態度わるいってばぁ…」
「いいんですよっ。笑ってすみませんでした。
私も中学生の頃そんなことばかり考えてましたよ。
今考えると、反抗期ってやつだったんですよね。」
「なっ!そんなんじゃっ…」
「授業で習ったことなんて、将来使うこと、ほとんどないですよ。特に、中学や高校の授業なんて特に…
でもなんで勉強しないといけないのかは…
『生きる』ため。だと、私の先生は言ってました。そのための訓練ですかね。
人間は人から教わったりなど、学習しないといけないことが90%以上あるんだそうです。
因みに犬などの動物は80%。
生まれつきある、食欲などの生きるための生理的欲求は備わっています。しかし、これから先はどうでしょうか。
学習をしなかったらなにがおこるでしょうか。欲しいものがあったら、盗みを犯し、気に食わない人が居れば、殺すかもしれません。
それを悪いこととしらないからです。
それらはいけないことだと学習し、本能ではなく、理性がそうさせてるんです。
先生や親、友人、これから会う人からいいことを学ぶ。いい事だけではなく、悪いことも学び、していいことと悪いことを区別し、人と生きて社会性をみにつけていきます。
当たり前のようですが。その当たり前のことを当たり前にできる。それはとても素晴らしいことなのです。」
「君たちには嫌いな子とかいますか?」
「ああ。もちろんいるさ。生意気で意地悪なやつとか。」
「何故嫌いと思うのかは、
その人はココが悪い所と感じたからですよね?
嫌いな人は悪いお手本です。
世の中のニュースで流れる悪い大人たちも、君たちの悪いお手本です。悪い例が無いと人は実感しないのです。いくら口から言われてもね。
こんな人にはなりたく無いと、思えるのはいいことです。ちゃんと判断出来ていると言うことですから。是非、立派な人になってほしいですね
しかし、嫌いだからと言って無視したりするのは動物と一緒です。将来どんな人と仕事をするかわかりませんから、今のうちに耐性を身につけておくといいかもしれませんね。」
「ぼ、僕は…嫌いな人なんて居ないよ…苦手とかはあるけどさ。嫌いになれないんだ。」
「ふんっ。オレが居ない時に、いろいろ良く利用されてもか!?」
「だってぇ…人には悪い所があって、いい所がある。それは誰にでもあるんだって、お母さんが言ってたから。人のいい所とか見つけると、その人のこと嫌いになれないんだ。」
「…そうですね。完璧な人なんてこの世には居ないんですよ。もちろん私も。悪い所ばっかりですよ。
むしろ…自分のいい所なんて見つからないですね。難しいです。だから他人に見つけてもらうのです。
是非、自分の悪い所だけでなく、いい所も探してみるといいかもしれませんね。」
「自分のいいところ…」
「おれ…今度っからちゃんと課題出そうかな。あ、でも急にいい子になったら気味わるいか!!」
「いえ!!そんなことないですよ!
むしろ、感動するほどのことです。自分を変えるのは相当な勇気がいるんですよ。口に出すのは簡単です。行動に移すのはなかなか出来ないことですから。」
「お、おう!頑張るわ!」
「勉強なら僕、手伝うよ!」
「おう!さんきゅ!」
店長はそんな無邪気にハニカム2人をみて、私ももっと頑張ろうという気持ちになったのだった。
「アップルパイ食べますか?」
「ぼ、僕大好きなんですっ!」
「おれ食べたことねぇや。くってみてぇ!」
「はいっ!どうぞ。」
アップルパイを二つテーブルに置いた。
何層にもなっているパイ生地の上に、カラメル色になった角切りのリンゴがゴロゴロはいっていて、その上に格子状になっている生地が蓋をしていた。
表面は宝石が散りばめられたかのようにツヤツヤで、キラキラと反射していた。
「アップルパイはとっても美味しいですが、難しいので失敗もします。これくらい作れるようになるまで、一生懸命勉強したんですよ?例えるならパイ生地の層の数くらいです!!」
「そっかぁ!これも勉強だね!
僕たちがある教科を勉強するように、店長さんも毎日勉強してるんだ!!」
「はい。そのとおりです!」
「店長もお前も勉強勉強って…おれ頭いたくなりそうだぁ!!!」
お店の中に3人のたのしげな笑い声が響きました。
店長は美味しそうに食べる2人をみて、まるで父親のように微笑むのでした。
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